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02 王太子妃候補の選考会



 リセットはベッドの中で目を覚ました。


「おはようございます」

「おはよう」


 リセットは変だと感じた。


 暗殺された王太子ザカリアスの葬儀中に巨大な魔法陣が現れ、自分は気を失ってしまったはずだった。


 屋敷に運ばれたとしても、召使いの反応があまりにも普通だ。


「今日は寝坊できません。しっかりと身支度をしなければ!」

「え?」


 リセットはわからないと感じた。


「どこかに出かけるの?」


 召使いは驚愕した。


「王宮です! 王太子妃候補の選考会です!」


 リセットは驚愕した。


「王太子妃候補の選考会?」

「お嬢様、寝ぼけている暇はありません。身支度をして朝食です!」


 リセットは混乱した。


(王太子妃候補? 王太子になったリヴァイス様には婚約者がいるわよね?)


 朝食に行くと、父親がいた。


「ついに王太子妃候補の選考会だな」


 リセットはわけがわからない。


「まあ、挨拶するだけだ。ただ、待ち時間が長そうではある」


 朝食の後、リセットは新聞の日付を確認した。


(信じられない!)


 約半年前の日付になっていた。


 ザカリアスの葬儀の最中、巨大な魔法陣が現れたことをリセットは思い出した。


(あの魔法陣のせいで過去に戻ってしまったの?)


 リセットは記憶の中にある選考会と同じドレスや宝飾品を身に着け、王宮へ向かった。


 王太子妃候補の選考会があるため、王宮には美しく着飾った女性達が大勢集まっていた。


 リセットが受付になっている場所へ行くと、挨拶する順番を教えられた。


 高位の女性から行うため、リセットの順番は午後。


(前と一緒だわ)


 やはり、自分は過去にいる。あるいは、何もかもが過去に戻ってしまったのだとリセットは思った。


 そして、午後。


 リセットが王太子ザカリアスに挨拶する順番が来た。


「王太子殿下にご挨拶申し上げます。リセット・エファールと申します。お会いできて光栄です」


 リセットは深々と一礼した。


 これで顔合わせは終わり。


 夜に行われる舞踏会での発表を待つだけ。


「待て」


 次の令嬢に場を譲ろうとしたリセットをザカリアスが呼び止めた。


「髪飾りを落としたな?」


 リセットは黙っていた。


「見せてやれ」


 ザカリアスの側にいた騎士がポケットからハンカチを取り出し、その中に包んだものを見せた。


「同じものではないかと」


(同じだわ)


 リセットの髪飾りだということだけではない。リセットが覚えている選考会でも同じだった。


 リセットは待ち時間が長かったせいで小花の髪飾りを一つ落としてしまった。そのことに気づかないまま挨拶すると、ザカリアスが小花の髪飾りを見せるよう騎士に指示した。


「……落としたことに気づいていませんでした。これは母の形見なのです。失くさずにすんで良かったです。王太子殿下に心からお礼申し上げます」


 リセットは以前と同じようにお礼を伝えた。


(やっぱり見つけてくれたのね)


 リセットは嬉しくなった。


 ザカリアスのおかげでまた助かった、その優しさをより強く感じることができたと感じた。


 一度目のようでいて、リセットにとっては二度目だからこその気持ちだった。


「騎士様にも感謝を。ありがとうございます」

「幸運でしたね」

「はい。大幸運です」


 リセットは一旦屋敷に戻ると、父親に報告した。


 無事挨拶をしたこと、母親の形見を落としてしまったが、王太子が落ちているのを見つけ、騎士から渡されたことを伝えた。

 

「これで王太子の目に留まったのであれば、母親の力だな」


 母親はリセットが幼い頃に病気で死んでしまっていた。


「そうですね。お母様のおかげかもしれません」


 親子で微笑み合う。それもまたリセットにとっては二度目のことだった。


 そして、夜。


 舞踏会が開催され、王太子妃候補の名前が発表された。


 リセットはまたしても王太子妃候補の一人に選ばれていた。


(今度こそ、後悔しないようにしたい)


 リセットは王太子妃候補に選ばれた理由を知りたかった。自分のことを好きなのかどうかも、王太子に直接聞いてみたかった。


(もう一度、頑張ってみるわ!)


 リセットは決意した。



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