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王太子妃候補に選ばれた伯爵令嬢はやり直したい  作者: 美雪


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19 必然の出会い



 王太子妃候補用の講義と茶会が終わった後、リセットは王宮図書館へ行った。


 一般書の旅行書コーナーを見ていると、


「何を探しているのかな?」


 リヴァイスに声をかけられた。


「本を探しています」


 リセットはあえて前と同じように答えた。


「図書館だからそうだろうね」


 リヴァイスは笑みを浮かべながらそう言った。


「申し訳ありません。第二王子殿下にお声をかけていただけるとは思わなくて、動揺してしまいました」

「声をかけるに決まっているよ。リセット」


 リヴァイスはそう言うと、優しく微笑んだ。


「僕の候補にしたいと言ったのを覚えているかな?」

「そのようなことを言われた記憶はなんとなくあります」

「でも、王太子妃候補になってしまったね」

「そうですね」

「辞退しなくていい」


 リヴァイスは言った。


「王宮で勉強するには丁度良いからね」

「そうですね」

「別のことは覚えているかな?」

「別のことですか?」

「髪飾りのことだ」


 記憶があるかどうかの確認だとリセットは思った。


「形見の品のことでしたら、御助言通りにしました。しっかりと覚えているので大丈夫です!」


 リセットがそう言うと、リヴァイスは嬉しそうに頷いた。


「一緒に行こう。役立つ本を勧めてあげるよ」


 リヴァイスはリセットの手を取ると、奥の方へと向かった。


「どこへ行くのでしょうか?」

「二人だけで過ごせる場所かな」


 リセットは恥ずかしくなった。


(なんだか、デートに誘われたみたい)


 リヴァイスが向かっているのは軍事関係の本があるコーナーの方だった。


「こちらですか?」

「リセットは僕の目に留まった特別な女性だからね」


 リヴァイスは軍事関係の本があるコーナーを通り過ぎ、魔法関係の本があるコーナーまで来た。


「ここだよ」


 リヴァイスは魔導士。


 ぴったりの場所だとリセットは思った。


「より正確に言うと、あそこだけどね」


 本棚の間に地味な見た目のドアがあった。


 リヴァイスが手をかざすと、鍵が開く音がした。


「中に」


 リヴァイスが入り、その後にリセットが続く。


 リヴァイスが手をゆっくりと回すと、部屋の中が明るくなった。


「小部屋ですね?」


 何もない。空き部屋のように見えた。窓もない。


「こっちへ」


 リヴァイスに手を引かれたリセットは部屋の中央に立った。


「一緒に行こう」


 リヴァイスがリセットを抱きしめると、足元に魔法陣が浮かび上がった。


 次の瞬間、周囲の景色が歪んだ。


 リセットはめまいを感じてふらついたが、リヴァイスがしっかりと支えてくれた。


「大丈夫?」

「少しめまいが」

「ごめんね。慣れるまでは少しかかるかもしれない。でも、ここなら二人だけで話ができる」


 着いた場所は玄関のようなホール。


「特別な場所ですか?」

「禁書庫だ」


 凄い場所に来てしまったようだとリセットは思った。


「他にも魔法に関係した部屋がある。ここは僕が仕事をする場所の一つだ」

「それで王宮図書館に行った時、会うことができたのですね」

「最初に会った時も、禁書庫へ向かう途中だった。でも、言えないからね。軍関係の本を読みに来たことにして誤魔化した」

「そうでしたか」

「リセットには魔力がある。ここで魔法を練習しよう。盾魔法の取得を目指して欲しい」


 罠魔法対策だとすぐにリセットはわかった。


「聞いていませんでしたけれど、王太子殿下はまた罠魔法で死んだのですか?」

「話が早くて助かる。リセットが一緒にいないと、兄上は一人になってしまう運命らしい」


 現時点において、ザカリアスが助かったのはリセットが同行した時しかない。


 そこでリセットに魔法の特訓をしておき、盾魔法を使わせる選択肢を準備しておくことをリヴァイスが説明した。


「あくまでも準備であって、本当に同行するかどうかは別だ。それまでの状況が大きく変わるかもしれない。兄上に同行するとしても、罠魔法を防げるだけの技量になっていなければ許可しない。安心して欲しい」

「切り札にできるよう準備しておく感じですね」

「そうだ。兄上は平気で僕を置いていってしまうからね」


 リセットが留守番だった時、ザカリアスはリヴァイスを置いて行ってしまったのがわかりやすかった。


「なぜはぐれてしまうのでしょうね?」

「僕もそれを不思議に思った。騎士達に対する妨害工作のせいだった」


 リヴァイスがそれに気づいて対処している間に、ザカリアスは一人で行ってしまった。


「基本的に兄上は後ろを見ない。勝手について来いと思っているからね」

「わかります。ずっと前を見ていました。限界だと思って声をかけたら、ようやくちらっと見てくれた感じでした」


 リセットも大変だったのを思い出した。


「騎士見習いの服のおかげで動きやすかったのはよかったですけれど」

「あの服装は駄目だ」


リヴァイスは真顔で言った。


「貴族の女性が足を見せる機会なんて早々ない。注目される」

「あっ!」


 騎士のズボンは細い。足の形がわかりやすい。


「気づくのが遅かった。兄上も騎士達もリセットの足を見ていたに違いない。僕の心がいかに穏やかじゃなかったか、リセットにはわからないだろうね?」

「私もたった今知って恥ずかしくなりました。でも、やり直しによって全部忘れていますよね?」

「そうだね。でも、同じ過ちは繰り返さない。婚約者の特権を失うわけはいかないからね!」

「今は婚約者ではないですけれど?」

「元婚約者か」

「まあ、記憶的にはそうですね」

「時間の問題だよ。婚約者になるから待ってて」


 リセットは苦笑した。


「その部分は変更なしのようですね」

「取りあえず、旅行書よりも魔法書の方が役立つ。魔法は護身術にもなるからね」

「そうですね。頑張ります!」


 リセットはリヴァイスの指導の下、魔法の勉強を開始した。



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