ライカ
ツンデレ大好きです。
「に、人間ごとぎが、ああッ」
「バカね。人は強いのよ」
「貴様らなんぞ、レビオロ様の、ア、足元にも、及ばぬわ」
「ほんとバカね。なーんか最近様子がおかしいと思ってたら、レビオロが動いていたのね」
「……様をつけろ、女」
「あんたこそ、様をつけなさい。それに、私は女じゃなくて、ライカよ。ライカ様と呼びなさい」
「くたばれ、クソ女」
「はいはい。いま楽にしてあげるわ。そっちでレビオロを待ってなさい」
少し言葉を交わしたのちに魔族の首を刎ねた彼女は、刀を鞘に収め、少し怒ったような顔で渚に文句を言い始めた。
「それで? どういうこと? 久しぶりに会ったと思ったら魔法が使えないって、ふざけてるの?」
「まあまあ。まず登真のことを紹介させてよ。僕の昔からの友達だよ」
「なにが、まあまあよ。……ライカよ、よろしく」
渚に色々と文句を言いたそうだった彼女は、それを我慢して先に挨拶をしてくれた。
「登真です。助けにきてくれて、本当にありがとうございました。正直、もう死んだと思いました。ライカさんのおかげです。このご恩は、一生忘れません」
俺は深々と頭を下げた。もしライカさんがいなかったら、俺たちは死んでいた。とても頭が上がらない。
「堅苦しいわねえ。呼び捨てでいいわ、顔をあげなさい」
「呼び捨てだなんて、そんな……」
顔をあげると、ライカさんは握手を求めるように、手を差し出してくれていた。恩を売るような態度は一切なく、ライカさんにとって、人を助けるのは当たり前のことのように見えた。俺に気を遣わせないようにしているのか、それとも自然体でこうなのか分からないが、とても優しい人だということは分かった。
「敬語もやめなさい。そもそも、私があいつを逃しちゃったのが原因よ。だからそんなに気にしないでいいわ」
「そう、ですか。でも、命の恩人に対して、急に馴れ馴れしくするのも、申し訳ないというか……」
「あー、もう! じれったいわね! 私だって渚に命を救われたこともあるわ。戦場なんてそんなもんよ。それに、渚の友達なら、私も仲良くしたいと思ってるのよ。分かったなら敬語はやめなさい。これは、あなたの命の恩人からの命令よ」
本当に俺なんかがタメ口を使っていいのか不安だが、ここまで言ってくれているのだから勇気を出そう。俺は少し緊張しながら、改めて感謝の言葉を伝えた。
「……わかった。ありがとう、ライカ、さん」
「ライカでいいわ。私も登真って呼ぶから。これも命令よ。……ところで、いつまで私にこうさせているつもり?」
ライカと呼ぶのはまだ違和感が残るが、恩人の命令に従おう。仲良くしたいとまで言ってくれたのだから、気を遣いすぎるのは逆に失礼になる。俺は、さっきからずっと差し出してくれていた手を、ようやく握ることができた。
「ごめん。よろしく、ライカ」
「ん」
ライカはなんだか満足そうな顔をしていた。俺はそれが嬉しかった。ライカとは仲良くなれそうな気がするし、そうなりたいと思った。命を助けてもらったからなのか、会ったばかりなのに心を許すことができた。そんな友達は、もうできないと思っていたが、人生何が起こるか分からないものだ。まあ、異世界に来た時点で、何が起こるか分からなすぎるけどな。
「よし! じゃあ、帰ろうか」
ギルドでゆっくり話そうよ、そう言って歩き出した渚の隣に、またすこし文句を言っているライカが並んだ。この二人の背中は、俺にはまだ遠い。魔族を目の前にして、自分の弱さを実感した。そしてライカが現れて、上には上がいることを知った。しかし、落ち込んでいる暇はない。ライカに助けてもらったように、俺も誰かを守れるぐらい強くなりたい。幸い、目指すべき人がこんな近くにいるんだ。こんなに恵まれた環境は、なかなかないと思う。
いつか必ず、この背中に追いつこう。そして、二人の隣りを、胸を張って歩けるようになろう。そんな大きな誓いを立て、俺たちはギルドへの帰路についた。
ツンデレ最高です。




