E級
仕事やらなにやら忙しくて更新が遅れてしまいました……。
「お待たせ致しました登真様。こちらE級冒険者証になります」
受付嬢の一言がむなしく響いた。異世界だろうと、現実は厳しいみたいだ。冒険者証にもはっきりとE級と書いてあり、どうやら聞き間違いではなさそうだった。
「E級……。俺、そんな弱いんですか?」
「冒険者制度をご存知ないですか? 実力などを考慮せず、初めて登録された方はE級からとなります。先ほどのマナガエルによるマナ測定は、マナが一定量を超えているかどうかを測るための、簡易的なものです。稀にこの規則を無視して、初めからA級となるケースもございますが。お隣の渚さんのように」
いえい、と隣でピースをしている渚が憎たらしい。受付嬢は少し微笑みながら説明を続ける。
「クエストをこなし、実績を積み上げることで等級は上がっていきます。等級が上がれば受注できるクエストや報酬も増えます。もちろん危険性も上がりますけどね。ほかにご質問はございますか?」
だいたい分かったし、細かいことは後で渚に聞けばいいや。そんなことより……。
「あの、お名前を、教えてください」
「お名前? 私のでしょうか?」
不思議そうに首を傾げる仕草が可愛らしい。もはや暴力的だ。なんだか恥ずかしくなってきたので無言でうなづいた。
「アリアと申します。よろしくお願い致します登真様」
ゆっくりとした綺麗なお辞儀に見惚れてしまう。所作が美しい人は魅力的だ。……アリアさん、か。勇気を出して名前を聞いてよかった。
「はい。よろしくお願いしますアリアさん」
少しドキドキする。人の名前を呼ぶのってこんなに緊張することだっただろうか。
「では、このままクエストを受注されるのであれば、あちらのクエストボードからお好きなものを選び、手続きをしていただく流れになります。どの受付でも手続きは可能です。ご覧のとおり酒場もありますので、もし良ければご利用ください」
やっぱりギルドと酒場はセットなんだな、と思いつつクエストボードへと向かう。でっかい木の板で作られたクエストボード。そこに張り出されたクエストが書かれた茶色味がかかった用紙や、まだ新しい白い用紙の組み合わせに風情を感じる。これを眺めているだけで楽しい。それにしても渚はさっきからずいぶんと大人しいな。
「珍しく静かだな、どうした?」
「親友の恋路を邪魔したらいけないと思って」
「……かわいいよな、アリアさん」
「綺麗な人だよね。登真好きだろうなって思ってたんだ。実際惹かれてたみたいだし」
「めっちゃ惹かれたわ。……そうだ、アリアさんって、なんで両手を包帯でぐるぐる巻きにしてるの?」
俺は気になっていたが聞けなかったことを渚に質問してみることにした。アリアさんと知り合いのようだったし、なんか知っているかなと思ったが、どうやら詳しいことは知らないらしい。
「でも、マナを圧縮してるって言ってたよ。それ以上のことは雰囲気的に踏み込めないと思ったから聞かなかったけどね。まあ、生きていく上で必要最低限のマナは使用しているみたいだね。ペンとか書類を浮かしてたりしてたでしょ?」
なにか言いたくない訳があるってことか。会ったばかりの俺が、簡単に立ち入るべきところではないな。それにしてもマナの圧縮か。響きがかっこいい。
「とりあえずクエスト行こうよ。……これなんかいいんじゃない?」
そう言って指差した依頼書には『凶暴化した熊の討伐 D級上位』と記されていた。軽く言ってくれるが、そこそこ厳しいんじゃないのか?
「いや、上位ってD級のなかでも難しいほうってことだろ? それに俺、E級って言われたばかりなのだが?」
「大丈夫大丈夫。元々人間離れした身体能力をもってるんだから熊なんて余裕だよ。そこにマナを乗っけたらワンパンだよ!」
「なにを根拠に言っているんだ」
自分が戦わないからって適当になっていないか? もしくは俺のことを過信しすぎだろう。お前と違ってチートじゃないんだよ俺は。
「えっとね、登真はマナがすごく安定しているんだよ。もう少しマナの扱いに慣れるまで時間かかるかなって思ってたんだけど、既に自分のものにできている。これはすごいことだよ」
思わず自分の身体を眺める。よくわからんがすごいのか。やはり褒められると嬉しいものだな。
「特に何も教えてないのによくできるね。自分でなにか意識しているの?」
「意識というか……。筋肉と同じようなものだと思っているだけだな」
なにそれ、と渚は声を出して笑っているが、ほかに説明のしようがない。筋肉もマナも自分の力となるのだから同じだろう。
「筋肉魔法ってことかな? さすが筋肉バカだね」
「まあな」
「褒めてないよ? まあそういうわけで行きますか!」
持病もちだとか、片目を失ってるだとか、そういう設定のキャラってかっこいいですよね。




