武具屋
武器というものは、いつだって私の中ニ心を悪戯にくすぐるのだ。
「剣とか使いてえなー、どう思う?」
「やめといたほうがいいと思うよ」
「なぜ」
「使い慣れていない武器を使うより、自分の拳で戦ったほうが強いからだよ」
俺の小さな希望が一瞬にして崩れ去った。もう少し夢を持たせてほしいものだ。それに、剣の使い方を練習して上達していけばいいじゃないか。
「ほら、ここが武具屋だよ」
店に入ると煌びやかな鎧や剣がズラっと並んでいた。斧や弓矢など、厨二心がくすぐられるものを眺めて、かっこいいと声が洩れる。
「いらっしゃい」
「こんにちはー。ちょっとお邪魔するよ」
「おう、好きなだけ見ていけ」
頭にタオルを巻いた髭面のマッチョなおっさん。いかにも武具屋のおっさんって感じだ。ピンクのエプロンがとても似合っていない。そのおっさんと渚は親しそうに話している。それにしてもいい筋肉だ。
「店内の物は好きに手に取っていいってさ」
「ありがたい。それにしてもあの強面のおっさんと仲良いんだな」
「うん。ていうかあの人、僕たちと同い年だよ」
うそだろ……。どうみても四十は超えてるだろ。
「あと奥さんめっちゃ美人だよ」
「まじか」
「しかもスタイル抜群」
「まじかよ」
うらやまけしからん。いやまて、今はそんなことを話していないで武器を選ばなくては。さっき一蹴されたばかりだが、どうしても剣に目がいってしまう。俺は適当な剣を持ち、その刃を見つめた。
「綺麗だな」
「綺麗だね。使い慣れていないとその綺麗な刃で自分を傷つけてしまうかもね」
「わかったわかった。見てるだけだって」
煽るように茶々をいれてくる渚は少し楽しそうだ。俺は全く楽しくない。まあ確かに、剣や斧を使いこなせる自信はあまりない。そうすると俺に必要なのは防具か?
「じゃあ、あっちの鎧なんかは?」
「んー、鎧は動きにくいからいらないんじゃない?魔法が使えない人とか、苦手な人が装備するものだからね。冒険者で鎧を着る人は極めて少ないよ」
「ふーん。お飾りみたいなものか」
そうだね、と渚は相槌をうったが、一つ疑問が生まれる。じゃあ俺はなにを買えばいいんだ?
「登真にはね、これがいいと思うんだ」
まるで俺の心を読んだかのように、渚は四つの青いリングをもってきた。見た目はただのリングだが、マナを帯びているのを感じる。
「 これはどう使うんだ?」
「ただ指にはめればいいだけだよ。それをつけて殴れば、マナが集中して相手にぶつかりやすくなる。プラス、その四連リングに元々込められているマナが一緒にぶつかる。簡単に言うと攻撃力アップだね」
ほーん。バフ効果のアイテムか、俺うってつけのアイテムってわけだ。見た目もかっこいいし、早速つけさせてもらおう。親指以外の指にリングをつけてみると、不思議とすんなり馴染んだ。
「かっこいいな、サイズもぴったりだし」
「使用者に合わせて自動にサイズが変化するようにできているんだよ。左手にもつけちゃおっか」
便利なリングだ。渚がもうワンセット持ってきてくれた四連リングを左手にも装備した。これはこれで厨二心が燃えてくる。
「うん、似合ってる似合ってる。……ユナちゃーん、これ買ってくよー」
「まいどー」
ユナって名前なのか、おっさん。ギャップ萌えだな。レジに進み会計を済ました渚は、ユナさんに俺の紹介をはじめた。
「僕の友達の登真だよ、これからお世話になるから仲良くしてね」
「武具屋のユナだ。よろしく」
ユナさんは手を差し出してきたので、握手を交わして挨拶をする
「登真っす。よろしくお願いしますユナさん」
「渚の友達だろ? 敬語はやめてくれ。あと、さん付けより、ちゃんのほうがいい」
ちゃん付けは本人の希望だったのか……。ピンクのエプロンといい、かわいいものが好きなのかもな。
「わかった、よろしくユナちゃん」
「おう。装備品のことで困ったらいつでもきてくれ。よろしく」
強面のユナちゃんと少し話して店を出た。しかしなかなか良いものを買ってもらってしまった。俺は四連リングに見惚れながら街を歩いた。早くこの効果を試してみたい。
剣 斧 槍 弓 なに使いたいですか?




