三年の制約
チャクラや覇気の類いは、やはりかっこいいです。
「うおっ!? え? え!?」
身体が熱い。全身からオーラが溢れているのが見える。なんだこれは、どうすればいいのだ。
「落ち着いて。息を全身に巡らせるイメージと同じだよ、溢れ出るマナを全身にゆっくり巡らせるんだ」
マナか、マナなのかこれが。いやすごいな、まじですごい。これの流れを制御しろってことね。すごいエネルギーを感じる、これなら息を巡らせるより簡単だ。全身にマナが巡っていくのがビンビンにわかる。
「うん、いい感じだね」
すごいな、めちゃくちゃかっこいい。見慣れた自分の身体を、まるで初めて見るかのように見つめた。これがマナか。
「どう?」
「……守られてる感じがする」
「そうだね。実際、全身に纏ったマナは鎧の役割を果たすよ」
「すごいな……。今俺が纏ってるマナは、お前のものなのか?」
「登真のだよ。僕が流したマナはただのきっかけだからね。」
「ほーん。てか、渚は普段マナを抑えてんの?」
「よく気づいたね。でも僕は意図的にマナを消しているわけじゃないよ。確かにマナを抑えることは可能だけど、どうしても少し漏れてしまうものなんだ。相当な手練れを除いてね」
「どういうことだ? 渚から全くマナを感じないぞ?」
「うん。いま僕はマナが全くないからね。ないものは感じられないよ」
は? 謎が深まる一方だ。ついさっき俺にマナを渡したばかりじゃないか。
「召喚魔法の術式に僕のマナを全て組み込んじゃったんだよ。さっき僕が登真に送ったマナは、残りカスみたいなものだよ」
「ほう、マナ切れってことか? どうやって回復するんだ?」
時間が経ってもなかなか回復しないもんなんだな、と思った。それにしても俺は渚の残りカスに感動していたのか、情けない。
「基本的に休めば回復するものだよ。ご飯食べたり、睡眠を取ったりね。でも僕の場合、特別で複雑な術式を組んだから、当分の間はマナが回復しないんだよね」
「ふーん。当分の間って、どんくらい?」
「三年かな」
「三年!?」
なにさらっと言っているんだ、三年って……。そこまで気が遠くなるほどの年数ではないけれど、それでも今から一緒に魔法を楽しんでいこうと思った矢先に、三年もおあずけくらうなんて想像すらしていなかった。なにより、俺のせいで三年を犠牲にさせてしまうなんて申し訳ない。
「すまん……」
「なに言ってるのー。僕が勝手にしたことなんだから謝らないでよ」
気にも留めていない様子だった。きっと、俺も逆の立場だったらそうしていただろう。謝罪よりも感謝するべきか。
「ありがとな。てかさ、特別な術式ってなんなの? なんで三年もマナが回復しねーの?」
「未来の自分のマナを前借りしたんだよ。知り合いに封印術に精通している人がいてね。その人に色々と教えてもらったんだ。登真を召喚するにあたって、現時点での僕のマナ量が足りなかったんだ。だから、未来の僕のマナを召喚術式に封印して組み込んだんだ。実はこれけっこう難しくてね。僕だからできたと言っても過言ではないよ」
渚はドヤ顔をしていた。まあ、本当に複雑だし、自慢したくもなるだろう。しかし、術式と言われてもピンとこない。魔法って奥が深いんだなあ、としみじみ思う。ん? 待てよ、渚が魔法つかえないとなると……
「もしいま魔物がでてきたらどうするんだ?」
「もちろん、登真が倒すんだよ」
渚はニッコリと笑った。勘弁してくれ、急に魔物と戦えと言われてもどうすればいいのか全くわからない。でも、もう明るくなっていて、平和なんて言葉が似合う天気だ。魔物の気配みたいなのはなにも感じないが……。
すさまじい魔法には、代償がつきものなのです。




