性奴隷、正直興味あります。
俺はやるせない気持ちを抱えながらいきつけの酒場へと自然に足が行っていた。
酒だ。酒しかない。ほとばしるリビドーに酒は少しの慰めにしかならないだろうけれど飲まずにはいられない気分なのだ。
店に入ると益荒男たちがどんちゃん騒ぎしている。だいたいが冒険者ギルドとかの男たちだ。
「おぉ、コクトじゃねぇか」
白い泡のビールが入ったジョッキを持ちながら話しかけてくるのは、最近娘が反抗期に入って相手にしてくれないと嘆いていたうちのギルドのマスターだ。
こいつにはよく助けられている。
この世界に来て初めて会った人間がこいつだった。
へんな化け物に襲われ死に体になっていたこいつを助けたことで、その力を見そめられ冒険者になることを勧められた。
そこからはまぁ持ちつ持たれつな間柄だ。たまにビールを一緒に飲んだりしている。
娘には近づくな獣とよく言われたりもしている。
「ガッハッハハハ! オメーだけだよ!おま○こ激しすぎて遊郭街のブラックリストになるのは!」
腹から笑いやがる。
「はぁー、笑い事じゃねーって。俺としちゃ死活問題なの、しかつー」
ぐびぐびぐびと喉を鳴らしながら酒をあおる。
そして、空になった木製のジョッキをテーブルに叩きつける。
「ムラムラが止まんねぇ!!!」
「あー、なんだったら奴隷なんてどうなんだよ。オメーが望んでる性奴隷ってやつもあるぞ」
「…奴隷ねぇ、人身売買はなぁ」
日本での培ってきた倫理観っていうか、道徳っていうか、そんな概念が根強く残っていてそういうのはなんだか後ろめたい。
「んだぁ? 宗教みてーなことを言うじゃねぇか」
これは信仰というよりは自分の中でのちっぽけな良心だ。
「気がひけるっつーかさぁ」
「奴隷っつってもうちの国では比較的扱いはいい方だぜ? いや、他をそこまでは知らないが奴隷の命は法で守られているし、何より奴隷の意思は結構尊重される。奴隷を酷い目に遭わせようもんなら即檻の中行きだぜ。性奴隷になれば払いがいい。まぁそんなこともあって本望ではないだろうが望んでなっている奴は多い。常識の範囲内なら何してもいいってやつだ」
「そこまで知悉してるとなんかきもいわ」
ジト目でギルマスを見た。
「んだよ。奴隷娘ってのは男の夢じゃねぇか」
「ま、一理ある。が、あんたの妻にちくってもいい」
「あ!! それはねぇだろ!」
恐妻を持つギルマスにとってこの言葉は痛い。
「じゃ、酒奢ってくれ」
悔しそうな表情になるギルマス。
「ったく、仕方ねぇな! 今日だけだからな!」
その言葉を聞くと嬉々とした表情をしてしまう。
「聞いたか!? おめーら! 今日の酒はギルマスの奢りだ!!」
「!? っお前!?」
歓声がしきりに上がり、もう後戻りはできない雰囲気がこの場を漂う。
ごめんよ。ギルマス。楽しく正直に我儘にをモットーにこの世界では生きるってこの世界に来る前に決めたんだ。
だが謝らねえぜ。
こう言う時はあれだ。
俺はギルマスに肩を組んで「サンキュー!! 愛してんぜ友ー!!」と、景気づけに叫んだ。
「やめてくれ、お前が言うと妻が怖い」
その日は大いに酒盛りをした。
⭐︎
しかし、そうだな性奴隷か。
ギルマスに提案された翌日、俺はギルドの依頼をこなしながらそのことについて考える。
正直このままでは性欲が危うい。
この体の性欲はうさぎのフォルムを踏襲しているだけあって、ウサギ並みの性欲があの黒い雷のチート能力と付随している。
だからほんと、そろそろ辛い。
奴隷、さらに言えば性奴隷。たしかに倫理観には欠けるが、本心はどうだ。
性奴隷、正直興味あります。