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目覚めたらうさ耳ついてて、あれがついてなかった。



 目が覚めた。


「あり?」


 寝覚めは悪くなく、意識ははっきりとしている。ただ現状が明瞭でない。自分は刺され、重症だったはず。生きていれば、結構な鈍痛の中起き上がるのだろうけれど、体はすこぶる快調だ。


 というか、ここはどこだ。


 天蓋付きのベッドの上、周りは華美な装飾品ばかり。


 見た感じ、お姫様って感じの部屋だ。


「どこだよ、ここ」


「?」


 自分の声に違和感を感じた。少しハスキーながらも芯がある女性の声の感じがする。

 

 俺の声じゃない?


「あーー」


 やっぱり俺の声じゃ無い。


 ん? 待て待て待て待て?  


 手を見てみると、浅黒い肌。胸を見てみればナイス巨乳。ちんを見てみれば、そこにあるはずのものがなかった。


「はぁーーー!!!???」


 慌ててベッドから出るとその身長の高さに驚く。高い、明らかに高い。

 

 いつも見る視線より絶対に高い。


 辺りを見回した。


 すると良さげな姿見鏡があったので恐る恐る自身の状況を確認する。

  

 そこには俺じゃ無い全くの別人がいた。しかも裸だ。


 足は長く、腰はすらりと伸び胸部はでかい。顔は小さく、さらにその上には立派な黒いうさ耳が付いていた。

 

「ほ、本物か?」


 触ってみると、自身の耳が触られている感覚がある。しかもぴょこぴょこ動かせるではないか。


「はぁ? 何がなんだかガチでわからん」


 ただただ混乱する頭に、自身の体に欲情しそうで怖かった。






            ⭐︎




 

 

 とりあえず、混乱する頭を落ち着かせ、腰をベッドに下ろした。

 完全に体が女になっている。しかもただの人間じゃ無い。

 うさぎの耳みたいなのがついている。


「ん? なんだこれ?」


 ベッドのそばにあった円形のテーブルの上に一枚の紙があった。


 それを手に取ってみると文が書いてあった。


 けれどそれは日本語では無い。なのに読める。見たことのないはずの文字なのに、なぜか読める。


「私たちの可愛い可愛いお姫様、...深い深い眠りにつかせてごめんなさい。ただ貴方に生きていて欲しい。私たちも可愛い可愛いお姫様にまた会えるような夢を見れるよう頑張ります...。おやすみなさい。」


 と、達筆な文字で書かれていた。


 おそらく俺に当てた置き手紙なのだろうが、この身体の記憶が一切ない。


 あるとすれば、これまで俺が生きてきた惨めな三十八年間の記憶だけ。

 

 とにかく、動かなくては。静かに考えていたって何かが分かりそうなんてことはないし、俺はベッドのシーツを体に巻いてこの部屋を後にした。


 そこで変な光景を見た。


 出た部屋はなかなか綺麗な状態だったが、その外はまるで何十年もの間、人の手が結構な期間入っていないように荒廃としている。


 館っぽいのだが、先の部屋と部屋の外では印象が違いすぎる。まるえあの部屋だけ時間が止まったような。


 この館内に誰か居ないのかと人を探しては見たが、誰一人としていず忘れられた館のような感じだ。



 外はどうやら日がまだ出ているのか、ガラス窓から光を指していて館内を薄暗く照らす。 

  

 とにかくここがどこなのか、外にで見ることにした。


 階段をおりて、重厚そうな扉を開くと土と草の香りを含んだ風がこちらに舞い込み、銀髪を揺らす。


 目の前には短い草が風に揺らぐ、草原が目の前に広がっている。


 一言で、この風景を言い表すのならばそれは長閑だろう。


「はぁ?」


 ただ、そんな長閑な風景に異物が一つだけ紛れていた。


 それは赤い両翼を悠然と広げて、強い存在感を放ち青い空に似つかわない。


 よくファンタジー物で見かけるドラゴンそのものだった。

 そいつはなぜかこちらに気がついたのか、こちらを見据えてはこちらに飛んできた。


「はぁ!? ちょ、まっt」

 

 存外、その飛行スピードは速く一瞬で距離を詰められてしまった。


 その姿を目前で確認したとき、まさにそれは紛うことなくドラゴンだった。硬そうな鱗、頭にはおどろおどろしい双角。

 そんな恐ろしいドラゴンの体がぶれたと思ったその刹那、もの凄い衝撃が俺の腹部を襲った。


 尻尾だ。その巨大な尻尾が俺を殺そうと振るわれ、吹き飛ぶ。


「ッが...!!」


 とんだ先に木があり、その木が倒壊するほどの吹き飛びだった。


 いてぇ、めちゃくちゃ痛ぇ。けれど、明らかにこんなのあの不審者に刺されたときよりも強力な一撃だろうに、思いのほか体は無事だった。


 立ち上がると、ドラゴンは低空飛行で此方に追撃を繰り出そうとしてきた。


 やらないと、やられる。


 生存本能と、この体の記憶が刺激されたのか俺は自分の口からまるで知らない単語が自然と出ていた。


「黒、雷、靱!!」


 足に、黒い雷みたいなのが纏わり付いてはバチバチと爆ぜる音がする。

 

 その足を、まさに神速で振り回して思いっきりドラゴンをぶち蹴ると、轟音とともにドラゴンの胴体は消滅し、一帯の草原は焼け野原になった。


 ぼちょりと、不穏なオノマトペを出しながらドラゴンの首がその地面に落ちてくる。


 一連の光景に開いた口が塞がらない。


「へぁ?」


 ほんっとに訳が分からない。


 ドラゴンみたいなのが居て。変な技も使えて。うさ耳がぴょこぴょこする。  


 多分異世界。多分チート。多分TSって奴だ。


 

 

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