2-40
なんだかんだそれぞれ思うところはあるものの、折り合いはついたんじゃなかろうか?
少なくとも私とイザベラは問題ない。
ディルムッドからしてみれば面倒な話程度だけど、まあ一応母国だから心配にはなっているんじゃなかろうか。
いや? 故郷の家族を思って……ってごく一般的な感じで考えたけど、よく考えたらあのカルライラご一家だしな……あんまり心配していないかもしれない。
オリアクスは、うん、まあきっとなんも考えてない。
多分だけど、私が『この件に関わりたくない、ただイザベラたちと楽しく生きたい』とか言ったら全力でそれを叶えてくれそうな気がするけどね……新しい大陸作るとか。
スケールが違うわ……そういうんじゃないんだよ!
まあ、その辺の価値観に関する齟齬については今後、ちょっとずつその場その場で話し合っていけばいいか……。
(でも、問題はフォルカスよね)
王子として、兄として。
妹さんがどんな態度をとるか、それ次第では彼にとってはしんどい話になるのだと思う。
表向きは久しぶりの帰省と私という恋人を家族に紹介ってことになるけど、まずそこで妹さんの反発があるわけだし。
話を聞く限り相当なブラコンだって話だからなあ。
(そういえば強烈な妹さんの話題とアレッサンドロくんですっかり忘れてたけど、他の二人はどんなタイプなのかしら)
確か、まだ会ったことのないロレンツィオくんとアレッサンドロくんが双子。
長女が王太子でアリエッタ、そして末っ子がマリエッタだっけな?
フォルカスとアレッサンドロくん、そしてフェザレニアの女王様から察するに、美形であろうことは想像できる。
(まあ、目の保養程度に構えておけばいいか)
なんせ最大の目の保養は私の傍にいますし? 大抵の美形じゃ驚かないぜ!!
加えてなんだったらナイスミドルもいるしね。
恋人と友人も美形で私だけ平々凡々(アレッサンドロくん命名)ってどういうことだ!
「ところでオリアクスさあ」
「うむ、何かな?」
「私たちになんて呼ばれるのが理想なの? お父さん? 父さん? パパ? ダディ? オヤジ? お父様?」
「まあ、姉様ったら!」
私の提案に、イザベラが笑う。
そして問われたオリアクスは、顎に手を当てて真剣に悩んでいるようだ。
「ううむ……改めて問われるとなかなかに悩ましいものがあるねえ。二人はなんと呼ぶのが呼びやすいかな?」
「じゃあ私は父さんで」
「わたくしは、……お父様と」
「うんうん、いいねえ。この国から我々家族の新しい門出となるのか、素晴らしい」
どうせ今頃念話で黒竜帝に自慢しているんだろう。
にこやかなオリアクス……父さんに、私は苦笑する。
(世界がイザベラを悪役令嬢に戻そうとしてるってんなら徹底抗戦してやろうじゃない)
まあ、まだそうとは決まっていないんだけど。
さあて、次はフォルカスの可愛い妹とご対面、やったろうじゃないの!




