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まあなんだかんだ、アレッサンドロくんは今ひとつ私たちに馴染めないままフェザレニアの王城へと私たちは足を踏み入れていた。
表向き、王子であるフォルカスの帰参って形で、私たちは旅の仲間として同行したってことになっている。
まあ、嘘じゃないし……むしろその通りだし?
ただ、イザベラが他国の公爵家出身だとか、私がフォルカスの番だってのが公にされていないってだけでね!
女王様がご存じならそれで十分だろうから、特に問題ないんでしょ。多分。
(まずは女王様に謁見からだっけ、フォルカスの弟妹たちへの挨拶は黒竜帝に会ってから。はてさて、どうなることやら)
謁見を前に着替えを差し出されたのを断って、私は豪華な部屋のソファに座る。
フォルカスは大臣さん? だったかな、ちょっと偉そうな人に呼ばれてアレッサンドロくんとディルムッドと一緒に出て行ったっきりなかなか戻ってこない。
まあ、フォルカスも心配していたけど、彼が戻ったことで王位を望むのではないか……なんて考える貴族たちがいるらしいんだよね。
大臣さんが味方か敵かは知らないけど、フォルカスにその気持ちは微塵もないからなあ。
そもそも竜種の先祖返りってことはどの程度の人たちに知らせているんだろうか?
事情を知っているなら、そんなこと考えないだろうけど……でもまあ、王族が竜の血を引いているっていうのをプラスに捉えるか、マイナスに捉えるかで変わるからなあ。
(それなら無難に王族だけの秘密ってことにするのがいいんだろうなあ)
厄介だねえ、偉い人たちって!
私もフォルカスの番だって知られるようになったらそれに巻き込まれるのかしら?
だとしたら、偉い人たちとはなるべく関わり合いがないように過ごしたいって相談しておこうかなあ。
「姉様、大丈夫ですか?」
「え? ああ、うん。ごめんね、心配かけちゃった?」
「はい、先ほどからため息ばかり吐かれておられるので……」
そんなにため息を吐いていただろうか?
イザベラが心配そうにしているから、そうなんだろうなあ。
反省反省!
私は心配そうにするイザベラの頭を撫でて気持ちを切り替えることにした。
面倒くさいって思ってばかりじゃいけないね!
まずは女王様にご挨拶して、黒竜帝との面会。
それから例のブラコン妹と対峙するっていうイベント盛りだくさんなんだからね!!
「ふむ、あやつも我々が来るのを楽しみにしてくれているようだ」
気合いを淹れ直した私に向かって、オリアクスが微笑んだ。
聞くまでもないけど、あやつって黒竜帝のことだよね……?
ああ、うん、茶飲み友達だもんね……その事実は女王様に告げるべきなのか否か。
いや、そもそもオリアクスのことを『父親です』って紹介すんのかどうか、まずはそっからだったな! 私!!
(……黒竜帝に会ったら、はっきりする。でも、はっきりしなくても、オリアクスは私を『娘』としてこう、確信を持っているわけでしょ? ただ私だけがって状態であって……いやまて、これは良いチャンスでは!)
私だってオリアクスを父として敬うのはともかく、肉親(?)として認めていないわけではないのだ。
この際、フォルカスにとっての障害になるかどうかっていうのの最難関と思われていた黒竜帝が反対しないのであれば特別問題ないとわかったんだし、今更どの面下げて『お父さん(はぁと)』って言えるかボケぇ! って思っていたこの状況を覆す良いチャンスなのでは!?
流石に甘ったるい声を出しながら『パパ』とか呼んでやる趣味はないので、これからはなんて呼ぼうかなあ、どう呼んだら驚くだろうか。
「……? 姉様、今度は楽しそうですね?」
「うん、いいこと思いついたんだ!」
「よくわかりませんが、アルマ姉様が楽しげでなによりですわ」
「ありがとう、イザベラ」
見てなさいオリアクス!
せいぜい、驚いてから喜べばいいよ!!
アルマさんはちょいちょい目的を見失いがちである()




