2-23
「……というわけで、わたくしは聖女について知りたいと思ったのです」
「なるほど」
オリアクスは静かに話を聞き終えて少し考えるように顎に手をやり、それから私をチラリと見た。
うん? なんだその思わせぶりな視線。
私は聖女とは関係ないんだけども。
「ふうむ……話すのは別に構わんのだがねえ」
「何か問題があるの?」
「いいや。人間族にとっては都合が悪い部分が数多あるのでなあ。逆に真実を知る者というのは、それなりのリスクを負わねばならなくもなるだろう? 私としても可愛い娘たちにそのような面倒を背負ってほしくはないし……いっそこの件で関与してきそうな団体を軒並み潰していくか考えているところだ」
「やめて物騒!」
オリアクスならやりかねないから怖いんだけど!?
えっ、冗談だよね!?
思わず全力で止めればオリアクスが若干つまらなそうな顔をした。
この悪魔め……。
「まあ、オリアクス……父さん、が、そう言うなら無理して聞くことはないんじゃない? 黒竜帝が知る話と、同じならだけど」
「ふうむ。概ねあやつが知ることと同じとは思うが。ところで今『父さん』と呼んでくれたかな!?」
「やっぱなし! まだもうちょい待って!!」
「うふふ、姉様ったら」
勢いで呼んでみたけど改めて父親だと認識すると恥ずかしいものがあるな、これ。
大喜びするオリアクスを見れば、まあ……うん、悪くないんだけども。
その横で楽しそうに目を細めて笑うイザベラだってとても可愛いし。
あれ? 案外私たち、良い家族に見えたりしちゃうのかしら。
(そんでもって、ここにフォルカスが加わって……うん、違和感ないな。逆に違和感なさすぎて怖いな)
しかもしれっとディルムッドがイザベラの横にいるような姿まで想像出来るから具体的すぎて、なんだ今とまったく変わらないんだがどうした。
(しかし、オリアクスに『真実を知る重み』を言われるとそれだけですごい……面倒ごとの予感がする)
とはいえ、可愛い妹の疑問について解明する手伝いをするって約束もしたしなあ。
どことなくションボリとしているイザベラを見ている私の視線で気づいたらしいオリアクスも、イザベラに視線を向けて考えている様子だ。
「ふうむ。では細かい所を省けば、まあ良いかな。要は何故、『聖女』という存在があの国では多く、他国では聞かぬのかという話であったか」
「は、はい」
突如として話す姿勢を見せたオリアクスに、イザベラが慌てて姿勢を正す。
いや、多分そこまで真っ直ぐになる必要はないと思うんだけど。
オリアクスもションボリするイザベラが可哀想だっただけだろうから。
……やっぱり後でオリアクスの皿、ソーセージ減らすのは止めよう。
(なんだかんだ、父親として頑張ろうとしているわけだし。ちょっと世間ズレしているのは種族の違いっていう根本的なところだし。その辺を除けば、割とオリアクス自身はいい父親なんじゃないかなあと)
「そもそも、聖女は一人であった。それもこの世界が混沌とした時期に招かれた異世界の人間であると聞いた。直接は私も会ったことがない、神代の頃の話だそうだが……まあ、誇張表現はいくらもあろうが、人間族の伝説よりはもう少し信憑性の高い話であると思うよ」
「のっけからぶっ込みすぎだわあ!」
どこが! 省いた! 説明だ!!
感心したところでそれを台無しにしていくところがなんとなく親近感を覚え……いやいや今はそんなことを考えている場合じゃなかった。
うん。
ソーセージ、やっぱり一本減らそう!!




