2-19
その後はもう大変だった。
なにがって、イザベラには格好悪いところ見せられないでしょ!?
私は他の大精霊と契約した経験があるから気合いと根性で今回も乗り切ってみせたけど、イザベラはそうじゃない。
契約が終わった瞬間にイザベラが大精霊の力を使って森全体に隠蔽と感知をかけて倒れるのを私は咄嗟に抱き留めて事なきを得た。
オリアクスは「さすが私の娘たちだ!」とかなんとかすごく喜んでいたけどね、こっちはそれどころじゃないわ!!
まあそんなこんなで妖精族たちにはくれぐれも行動に気をつけるよう念を押して私たちは一旦精霊村に戻らざるを得なかったのである。
マァオさんも心配しているだろうしね!!
「……しっかしイザベラの適性がすごすぎて笑っちまうな」
「本当にね。あの子なら大精霊だけじゃなく、精霊王とも契約出来るんじゃない?」
「ふむ、それはあり得るかもしれん。ドリュアスは大精霊の中でも特に古参。今の精霊王に何かあれば、アレが次代を担うであろうし……」
「えっ、本当に?」
精霊ってそういう風に王様決めてるんだ!?
いやまあ、精霊王ってのが私たちの考える『王様』ってのとは違うことくらいは理解しているけど……彼らは彼らのコミュニティみたいなものが存在しているってことくらいしか正直わかっていないってのが現実だ。
なんせ、悪魔と精霊は似たような存在であるとオリアクスが言っていたように、基本的に彼らは彼らのルールに則って行動している。
たまに人間と関わるけれど、それはあくまで彼らにとって興味があったからってだけで……こちらが望んでいるかどうかとか全く関係なく、関与してくることもあるしね。
(ただまあ、悪魔と違って人間の感情とか世情に全く興味がないっていうのが救いと言えば救いか……?)
逆に言えば、助けたいとかそういう感情もないからあっさり切り捨てられちゃうってことでもあるけど。
精霊たちにとっては自然の摂理だけが全てで、滅びすらもそれが定めであるならば受け入れるってスタンスだもの。
「とりあえず情報を整頓しよう」
イザベラを寝かしつけた私たちは、マァオさんちのリビングで寛ぎながら考えをまとめることにした。
「まず第一に、娯楽小説が預言書であるという考えを持つ連中が存在するということ。それと今回の吸血蜘蛛を無差別に狩る者たちとの繋がりは不明だ」
「妖精族たちも不穏な気配を察しているということ、それにあのナイフに残る妖精族の残留思念のようなものから考えて、まあどっかで繋がってそうではあるが……これも確証はねえな」
「ふむ、あの人間を支配した悪魔については少々心当たりがあるのでそちらは私が請け負うとするが、直接ヤツを引きずり出してこの場で正直に吐かせるのがいいのか悩みどころであるのだが……しかし、娘のためとはいえもしそやつが契約に基づく行動をしているならば、悪魔族として契約に反した行動はさせられぬなあ」
「なんか言い方が物騒なんだけど」
「おや、そうかね? 気をつけるとしよう」
引きずり出すとか吐かせるとか、オリアクスが時々物騒なことを言うのがなんとも……悪魔族って怖い。
一方的に契約主を定めて力を押しつけてきた大精霊もだけど、やっぱりこう、価値観の違いを感じるわあ。
「まあ、悪魔についてはオリアクスが話を付けてくれるとして……だ、作者についてはどうする? 転生者だとして、目的は何だ?」
「……そもそも、本にしたってだけで作者が扇動したかどうかも不明だしな」
「結局その真意を探るには、作者を探すしかないのかなあ。だとすれば、当たるのは出版社?」
「そっちはさっきちょいと調べてみたが、自費出版らしい。だから大陸中に出回るってことはそれなりのパトロンがいるか、本人が金持ちか……とにかく、増刷はそんなにしてねえみたいで量が出回ってないからレア扱いされてるのも確かだ」
「ふうん」
ディルムッドが仕事してる!
働けば結構ちゃんとするのよねえ。
頭脳労働はフォルカスが担当って言うスタンスのディルムッドだけど、やっぱり頭はいいんだよなあ。
しかし、自費出版にしろパトロンがいるにしろ、とりあえずわかっているのはある程度の金持ちってことか。
それに関しては情報屋を当たる方が早いのかもしれない。
そう思ったところでフォルカスが難しい顔をしていることに気がついて、私は小首を傾げる。
「フォルカス?」
「……アルマ、少しいいか。ついてきてくれ」
「え? ええ、私はいいけど……」
二人に聞かれたくない話か?
そう思ってちらりとオリアクスとディルムッドを見たけれど、彼らは気にしていないのか、いやむしろ応援するかのように手を振って、ちょっと、空気読んでくれないかなあ!?
私たちはマァオさんに一声かけて、外に出る。
精霊村は元々夜間に外出する人も少ないからか、とても静かだ。
小さな精霊たちが遊ぶように飛び回り、その光がまるで蛍のようにキラキラしていて幻想的。
後でイザベラが起きたら、夜の散歩に誘ってあげてもいいかもしれない。
「アルマ」
「あ、うん」
「転生者で、その本について……知る者を、私も知っているかもしれない」
「え?」
フォルカスの唐突な発言に、私は思わず立ち止まって彼を見上げた。
彼は珍しく苦々しい表情を見せて、深い深いため息を吐き出した。
「私の、妹だ」
活動報告にも書かせていただきましたが、今後の更新について。
4月から色々と忙しくなるため、こちらの「悪役令嬢、拾いました!」については5の倍数日での更新に変更させていただくことといたしました。
楽しみにご覧いただいている方には大変申し訳ございませんが、ご理解いただけるとありがたいです。
これからもこの作品をよろしくお願いします!°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°




