2-18
私たちは結局妖精族たちにナイフの件と悪魔が関与しているらしきことがわかったことを報告した。
オリアクスが悪魔について保証してくれたけど、何故か妖精族たちは彼を即座に受け入れていたのでなんとも言えない気持ちになった。
(あれ、なんだ? 悪魔にビビってんのは人間族だけってか……?)
そう思ったのは私だけではなかったらしくみんな微妙な顔をしていたけれど、それに気がついたランバとエリューセラが説明してくれた。
悪魔族と妖精族で契約は成立しないこともないのだけれど、長命で自然と寄り添うことが多い妖精族たちはあまり悪魔との契約に興味がないらしい。
人間ともっと近い関係を築いている種族はまたちょっと違ってくるらしいけど……悪魔と契約するならもっと身近な精霊を頼るのが妖精族の主流なんだそうだ。
……正直良くわからないけど、まあ彼らがそれでお互い上手くやっているらしいのでいいんじゃないのかな、うん。
オリアクスが高位の悪魔であるということはわかっているので、妖精族としても警戒はしているようではあったけど……同時に、そういう存在がむやみやたらと暴れないというのは周知の事実であるらしい。
「忘れちまうのが人間族の良いところで、悪いところだな」
そうランバがおかしそうに笑ったけど、こっちは笑えないわあ!
どこの文献にもそんなこと載ってなかったと思うんだけどね。
まあ、どこかの妖精族が何らかのトラブルに巻き込まれているってのは確実なので、彼らには注意を払ってもらうとして……。
「姉様、わたくしたちに何かできることはないでしょうか」
「なにかって?」
「わたくしもこちらでランバ様とエリューセラ様に優しくしていただきましたし、お二人は姉様のご友人でもあるのでしょう? 姉様のご友人が危険な目に遭うなど、恐ろしいではありませんか」
「……イザベラ」
私の友人だから心配だなんて発言が出てきて、私は目を瞬かせる。
大勢のことに心を砕きつつ、姉である私を優先してくれているこの妹の健気さに全私が感動した!
とはいえ、今も高度な隠蔽魔法を使って森の中に潜んでいる彼らを守る方法なんて問われても、即座に答えなんて出てこないのが現実である。
それなら精霊を頼ってみようという話になって、私はエリューセラと共に木の精霊を呼び出した。
普通のドリアードを呼び出して隠蔽魔法を強めるつもりだったのだけれど、私たちの呼びかけに答えたのはなんと大精霊だった。
これには妖精たちも騒然としてしまい、私はびっくりするばかりだし、エリューセラなんて隣で腰を抜かしていた。
『珍しく喜びの悪魔の気配を感じて来てみれば……久しいですね』
「久しいの、ドリュアスよ。そなたが来てくれたなら話が早い、うちの娘に力を貸してはくれんかね?」
『……娘? あなたの? 喜びの悪魔よ、とうとう念願を叶えたのですか』
「うむ。この子が私の最愛の娘、アルマじゃ。そしてその隣にいる……ああ、そのフェアリーではないぞ、そちらの娘がアルマの妹でイザベラだ」
『あら、あら……酔狂な悪魔と思っておりましたけれど、本当に子を得るだなんて! 良いでしょう、面白いモノを見せてくれたお礼に力を貸しましょう』
えっ、面白いモノ扱いされたんですけども。
というか、オリアクスの顔が広すぎてびっくりである。
私も精霊が見える側の人間として、大精霊という存在については普通の人より詳しいと自負している。
これでも水の大精霊と契約を交わしているくらいなんだぜ!
じゃあなんでその力を借りないのかって話だけど、隠蔽魔法についてはこの村でもドリアードの力を借りている
自然そのものである彼らと契約を交わすというのは、心の一部を通い合わせるという荒行でもあって、それでも滅多にないあちらから『力を貸す』と言ってくれているこの状況に乗っからなくては〝青真珠〟の名が廃る!!
私が一歩前に踏み出したところで、ドリュアスと呼ばれた木の大精霊は美しく微笑んだ。
あちこちから人ならざる者のその圧倒的な美しさに息を呑む気配を感じるけれど、彼女(?)の視線は私とイザベラに向けられていた。
『貴女たち姉妹と契約をいたしましょう、準備はよろしいかしら?』




