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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
二部 第二章 悪魔の講義

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2-15

 あんまりにも悩んでしまったので思わずイザベラを抱きしめて頭を撫でていたら、なんかとんでもない発言が聞こえた。

 オリアクスが、今、転生者とか言わなかった?


 思わず私はオリアクスを凝視してしまったけれど、それはなにも私だけではなく全員が彼に注目していた。

 そりゃそうか、突拍子もない話だもんね。私以外からしてみると。


(あー焦ったぁ……私が転生者だって気づいててカマかけてきたのかと思ったじゃない……)


 どうもオリアクスとしては至極当然という意見だったらしく、私たちの様子を見て逆に首を傾げている。

 私としてはかなりドキドキものだったんですけどね!?


「ふむ、もしやこちらの世界ではあまり知られていないことだったのかもしれなかったか。以前から転生者という者は存在するのだよ、そして彼らは我々悪魔族を頼ることもしばしばあったのだ」


「えええ?」


 私は眉を顰める。

 少なくとも〝転生者〟と呼ばれる存在がいるってことは、その人たちは前世の記憶なんかを思い出しているからこそ転生者なんだろう。

 で、悪魔たちの間で割と知られているという事実に加え、頼って(・・・)いたということは……つまり、契約していたってことだよね。


(どういうこと?)


 余計にワケがわかんないんだけども。

 私が首を傾げていると、オリアクスも言葉が足りないと思ったのだろう。


 コホンと一つ咳払いをしてから、私たちに向かってはっきりと言った。


「転生者には様々な者がいる。同じ世界、違う世界、人間、動物、彼らは前世の知識を用いて一旗揚げようとする者もいれば、今の環境に満足してそれらを語らず終わる者もいる。己の手が届く範囲をその知識で導こうとした者もいたね」


「……話が壮大になりすぎて、正直俺としちゃ意味がわからんぜ」


「本当に、そうですわね……」


 ディルムッドとイザベラが困惑したように言ったが、疑っているというよりは理解できなくて本当にただ困っているといった様子だ。

 いやその気持ち、私もわかるわー。

 転生者が他にもいるだろうとは思っていたし、なんならマルチェロくんがそうだったに違いないから可能性はちゃんと理解していたつもりだけど……。


「ふむ、よくはわからないのだが、私が知る限りの範囲で得た情報に寄ると、転生者たちの記憶というのは随分とまばら(・・・)でね」


「……まばら?」


「さよう。前世と現在の両方に強い不満(・・)を持っている者ほど、ある特定の知識に対し鮮明に思い出しているようだ。そして他者とは違う自分を特別だと思い込んだり、我々悪魔との交渉も普通の人間よりも上手くできると思っている」


「……」


「特に意味もなく、なにかのきっかけを得て思い出した者に限って考えるに、あまり明確な記憶というよりは……ぼんやりと『こうだったと思う』といったような内容で、それを使ってどうこうしようとはしていないようだった」


 ふうん。

 確かに私は前世に不満があったのかと問われると、そうでもないように思う。

 料理の作り方だけじゃなく、前世の家族とか友達、好きだった漫画や映画のことは思い出した直後はハッキリ思い出せていた。


 だけどアルマとして生活している上で、それらの記憶は……どんどん、ぼやけたものになっていることは、事実だ。


(前世は前世、今は今って受け入れているから? じゃあマルチェロくんは?)


 前世に不満があって、それを叶えようとしたってことかな。

 正直、オリアクスから得た情報が唐突すぎてゆっくり考える余裕はないけれど……まあでも、娯楽小説を書いたのが転生者ってのはアタリなんじゃなかろうか。


 あの漫画なのか、それとも原作の方なのかはわからないけれど、少なくとも私よりも詳しい人物であることは違いない。

 そうなると、その転生者である作者の目的がなんなのかってことになっていくんだけど……。


「だとしても、結局何もわからずじまい、か」

 

「そうだよねえ……」


「ふむ、あまり力になれなくて申し訳ないが……ところで、お客さんが外に来ているようだが、どうするかね?」


 オリアクスがのんびりと私たちに問うた瞬間、森がざわめいた。

 妖精族たちも気づいたらしく、隠蔽の魔法を強めているのを感じて私たちは立ち上がる。


「行ってみる?」


「それがいいんじゃねーの、手っ取り早く捕まえて、情報を聞き出した方がいいだろ」


「そうだな、手をこまねくよりはマシだろう」


「ほうほう! 若者たちは行動力があってなによりだ!」


 ぱちぱちと楽しげに拍手をするオリアクスは、私と視線が合うとぱちりとウィンクをした。

 キザったらしいんだが、これが嫌味じゃないからすごいんだよなあ!


「僭越ながら私も君たちを援護するとしよう。なあに、契約の代償など求めんよ、これは無償の奉仕というやつだ。なにせ君たちは愛娘の友人なのだろう? それにイザベラ嬢は私にとっても娘であるわけだし」


「え、えっ?」


 戸惑うイザベラをよそにオリアクスはとても楽しそうだ。

 にこにこしているその姿だけを見たら、誰も悪魔だとはわかんないんだよなあ。


 見た目はジェントルマンなんだけど、実体ってのはまた別なんだろうか?

 今更だけど、気になるう。


「娘たちに対して無礼であるようならば、この辺り一帯を消し炭にしてでも守るつもりであるから大船に乗ったつもりでいてくれたまえ」


「余計不安になるから大人しくしててくれる!?」


 コレで親切のつもりだって言うんだから悪魔怖い!

 自分の大事なもの以外はどうでもいいっていうこの価値観!


 思念体みたいなものだから、こう、倫理観が違いすぎて……ええ、うん。


「……気持ちだけは受け取っとくから。それに言っておくけど、そこのディルムッドは私よりも強い先輩だし、フォルカスはやっぱり私よりも強くて、ええと……一応仮にも私の恋人候補だから、信頼して任せてちょうだい!」


「アルマ……!!」


「な、なんだって? 恋人候補!?」


 あからさまに落ち込んだオリアクスをフォローしなくてはと思ったところでフォルカスに対して『友人』なんて言ったら拗れそうだと思ってのことだった。

 でもよく考えたら、こっちの方がめんどくさかった。


「とにかく! 話は! 捕まえてから!!」


 捕り物している間に私は言い訳を考えるから!

 ディルムッド、頑張ってね!

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― 新着の感想 ―
[一言] オトウサンのこれからの反応が気になりますねぇw
[一言] 候補って言う方が微妙じゃないかなぁw フォルカス、恋人って部分だけ耳に入れたんじゃあるまいな…
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