そして、ここから
王国を出て、私たちはフォルカスの故郷を目指し山を越えて機械都市を目指していた。
別に急ぐ必要もないだろうと言うことで寄り道ありきの旅だ。
だってイザベラ、王国から出たことないっていうからやっぱり色々見せてあげたいじゃない?
機械都市だって面白いしさあ!
機械って言いながら大体は魔道具なんだけど、機械と魔法の融合を目指して……とかちょっと変わった学者とかもたくさんいて本当に面白いんだよ。
フォルカスは騒々しくて好きじゃないっていうけど、私は割と好きだなあ。
まあ、巻き込まれなければだけど。
そういうのはディルムッドにお願いしたいよね。
「どっかで防寒具買わなきゃねえ」
「フェザレニアに入る手前で十分だ」
「でもイザベラに良い物買ってあげたい」
「……あまり高価な物を買うと彼女が困ってしまうぞ」
私とフォルカスの関係は、まあ……友人以上恋人未満ってところだろうか。
番云々について誤解をしているフォルカスは、無闇に距離を詰めてこない。
そうじゃないんだけど、まあ私も黒竜帝に確認を取ってからちゃんと応えたいなって思っているのでこれはズルじゃないと自分に言い聞かせつつ、今はこの距離を楽しんでる。
途中それなりに栄えている町なんかを経由して、食料や衣類を買い足したりしているんだけどその中でイザベラが何冊か本を買ってきた。
馬車の中は退屈だから、娯楽は確かにあってもいいよねって思ったんだけどあまりにも熱心に読んでいるから聞いてみたんだ。
「そんなに面白いの?」
「そうですね、面白いですわ。流行の恋愛小説なんですって」
「へえ」
恋愛小説か、そんなに好みのジャンルじゃないけど……イザベラがそんなに面白いっていうなら読んでみようかな?
「どんな話なの?」
「なんというか……似ているのですわ」
「似てる?」
何がだろう。私が首を傾げると、手綱を握る私の隣で読んでいたイザベラがパタンと本を閉じてクスクス笑った。
「この物語、平民出身の少女が王侯貴族に見初められ、意地悪をされたりする中で諦めずに行動して王子に見初められ、愛を育むのですわ」
「それは……」
似ているというか、まさしくそのものでは。
私はなんとも言えない表情になってしまったのだろう、イザベラがおかしそうに笑った。
「その王子に恋する令嬢のことを悪役令嬢と記されておりますの。彼女はあれやこれやと主人公に意地悪をし、時にねじ伏せ、身分をあげつらい、そして王子にも嫌われてしまいます」
「……」
「まるで、わたくしのようですわ」
そっとそれまで楽しげに笑っていたイザベラは、悲しげに目を伏せた。
物語として客観的にそれを見せられた時、彼女が必要に迫られてしていたことは第三者の目にそう映っていたかもしれないと思うとやるせないのだろう。
だけど、彼女の努力を知っている人は知っている。
それをイザベラも理解しているからこの小説を、娯楽として楽しめているのだろうと思う。
「じゃあ、いいじゃん」
「え?」
でも、あんまりにもしょげた顔をしているイザベラをどうにかしてあげたくて、私はなるべくあっけらかんと言ってやった。
「イザベラが悪役令嬢だったんなら、もうお役御免じゃない」
「そう、ですわね……?」
「私が拾ったんだから、それでいいんだよ」
「まあ!」
私の言葉に、目を丸くしてイザベラが笑った。
そうだよ、〝イザベラ=ルティエ〟は捨てられたんだから、私が〝イザベラ〟を拾ったの。
そうもう一度声に出して伝えれば、イザベラはおかしそうに声を上げて笑った。
「そうですわね。わたくし、アルマ姉様に拾っていただいたんですわ」
「そ。だからもう悪役令嬢はオシマイ。イザベラに次に用意された役目はもっと重要よ?」
「アルマ姉様の妹、ですわね?」
「そうよーわかってるじゃない!」
二人でクスクス笑い合っていると、馬で併走していたディルムッドとフォルカスが微笑ましいものを見る目でこちらを見ていた。
いいだろう!
そういうつもりでにやりと笑ってやったら、二人が笑うのが見えた。
悪役令嬢、拾ってみるもんだよね!
これにて「悪役令嬢、拾いました!」第一部完結となります。
第二部以降も構成は考えてありますが、少し間を開けて(他の連載等あるので)再開したいと思いますのでブックマークは外さずにいてくだされば幸いです!




