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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
ようこそ、気ままなる世界へ

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 結局のところ、エミリアさんには会えなかったし、結界についても私たちが手を出すことはなかった。

 まあ、そんなもんだろう。


「イザベラ、大丈夫?」


「……はい。申し訳ありません」


「謝らなくていいよ」


 人は急には変われない。

 だけど、それを人に言われたって上手く飲み込めるとは限らない。


 指摘されたって反発しちゃうかもしれないし、落ち込んじゃうかもしれない。

 

(イザベラは真面目な子だから、落ち込む方かな)

 

 そんなことを考えながら、うなだれる可愛い妹の隣をゆっくり歩く。

 馬車と荷物はあの二人に任せておいて間違いないだろうし、ふと足を止めて周りに咲く野の花に目をやった。


「ねえ、イザベラ」


「え? は、はい、なんでしょうか!」


「祭壇の場所ってのは、こっから近いのかな」


「え、ええと……」


 私の問いに、どう答えようかとイザベラが視線を泳がせる。

 本当に真面目な子だなあ。

 思わず笑みが零れた。


「いいよいいよ、詳しくじゃなくて。単にこの辺でちょっとしたことをやったら、目に届くのかなって」


「それは……はい、窓がありますので」


「そっか。じゃあ、手伝って」


「え?」

 

「はい、私の手を握ってー」


 イザベラの手を取って、繋いだ手を前に突き出すようにする。

 目の前には柵があり、その先には渓谷が広がっている。

 山が近いというよりはもうここが殆ど山なんだよね。


「あ、あの、アルマ姉様?」


「ん? だいじょーぶだいじょーぶ!」


 ほんのちょっとだけ。

 普通じゃない魔法の使い方を、この子の前で見せてあげようと思った。


 王城での戦闘も、普通じゃなかったと言えばそうなんだけど……そこまでイレギュラーなことはしていないからそこは〝ジュエル級冒険者だから〟で色々極秘だっていうので押し通せたしね。


「私と繋いでいる手に、体の魔力を集めるイメージをしてごらん?」


「え? は、はい……」


 ほんのちょっとだけ、私と手を繋いでいるところからイザベラの中に私の魔力を押し込んで、それに反発する魔力を引きずり出してあげる。

 詠唱がなくても、魔力の巡りを感じさせるだけで人は魔法の威力が上がるんだよっていうのはこの世界ではあまり知られていないもののようだから、こっそりと。


 だけど『魔力を集めるイメージをしろ』だなんて急に言われて戸惑うイザベラは、その感覚にびっくりしたらしく、弾かれたように私を見上げていた。


 なんとなく悪戯が成功したみたいな気持ちになって笑えば、イザベラは目を丸くしながら目をキラキラさせて繋いだ手に視線を戻した。


 イザベラと私の魔力を混ぜるようにして、こっそり呼び出した水の精霊にお願いする。


「そぉーれっ!」


 魔力を媒介に呼び出された水はキラキラと太陽光を反射させて空中を舞った。

 結構遠慮なく魔力を使ったし、二人分な事もあってそれは結構な範囲だったと思う。


 私はそこに光の精霊にも重ねてお願いをした。

 太陽は私たちの背中側にあるけどそれだけじゃ足りない。

 

 飛び回る精霊が、とても綺麗だ。

 その光景をイザベラが見れないのはちょっぴり残念だけどそれはまたいつか。


「ああっ……」


 晴れた日に、渓谷にかかった大きな虹の姿に、イザベラが感嘆の声を上げた。

 どうだと言わんばかりの精霊達が飛び回って私の目には虹以外にもキラキラして見えるけど、それはまあ黙っておいた。


「うん、上手くいったねえ」


 この国にとって虹は吉兆。

 応援だったり、旅立ちだったり、そういう時に現れる虹は幸せを運んできているのだっていう言い伝えがある。


 まあ、私がやったのは光の原理だっけ? アレの応用なだけなんだけどさ……。


「イザベラの気持ちが、彼女に届くといいねえ」


 彼女だけじゃない。

 イザベラが捨ててきてしまったもの全部に、とまでは言わないけど。


(これからみんながそれぞれに最善な道を歩けたら、いいよねえ)


 キラキラ光る空を見上げて、私は満足だ。

 この綺麗な虹を作ったのは、まあ私だけども。

 でもイザベラの魔力を私が引きずり出して、ちょっとだけ助けてあげただけだ。


 こんなにキラキラして綺麗なのは、きっとイザベラの魔力だからだろうなあなんて思っていると横から衝撃があった。

 イザベラが抱きついてきたのだ。


「姉様、すごいです!!」


「お、おお?」


「魔法でこんなことができるだなんて……! わたくし、知りませんでした!!」


「そ、そっかあ……」


 ええー、なんだか王城でマルチェロくんの顎を蹴り上げた時よりもハイテンションなご様子に私はびっくりだよ、イザベラ……。

 うちの妹、おもしろくって可愛いなあ。


「エミリアさん、見てくださっているでしょうか。大聖女様も」


「見えてるといいねえ」


 虹の麓には宝物が埋まっているんだっけ。幸せだっけ。

 そんなことを思いながら、私はイザベラの手を取って走り出していた。


「姉様?」


「折角だからさ、フォルカスとディルムッド連れてきてみんなで見ようよ!」


「! そうですわね!!」


 ここまで連れてこなくたって見えるんだけど。

 なんでか、折角なんだからって思ったんだ。


 きっと私と可愛い妹の、合作を見せびらかしたかったんだと思う。

 そういうもんでしょ?


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― 新着の感想 ―
[一言] この後フォルカスさんといい雰囲気になったり(ただし進展はない)
[気になる点] 「結構遠慮なく魔力を使ったし、二人分な事もあってそれは結構な範囲だったと思う。」この一文だけで"結構"が2回も使われているので、ここは「結構遠慮なく魔力を使ったし、二人分な事もあってそ…
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