表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
ようこそ、気ままなる世界へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/160

41

「結局カルライラ辺境伯様や、エドウィンに会えずじまいでしたわね……」


「そうだねえ、戻ってこなかったけど……まああの二人なら大丈夫だって」


 ゴトゴトとゆっくりめに走る馬車の中で、イザベラがため息を吐いた。

 そう、私たちはあれからカルライラの自宅に戻って、事の顛末(てんまつ)をヴァン様とヴァネッサ様に伝えてから一週間ほどかけて家財を処分し、旅に出たのだ。


 残念ながら、ライリー様とエドウィンくんは私たちが出立するまでの間に帰ってくることはなく、彼らを待たずに出発することを決めた。

 一応理由としては、王様がイザベラのことを諦めていない、もしくは貴族達を宥めることに協力を要請してくることを見越してのことだ。


 これについてはヴァン様もヴァネッサ様も賛成してくれたし、イザベラは残念そうではあったけれど納得してくれた。


「まあしょうがねえだろうな、辺境伯様っつってもあの人も王家の血が流れてるから、色々と周囲がうるさいんだろうよ」


「ディル様」


 そんな私たちの馬車に併走する馬が二頭――ディルムッドとフォルカスだ。


 なんでこいつらが一緒かといえば、まあそりゃ色々あるんだけども……彼らもとりあえずこの王国にいるのはちょっぴり都合が悪いっていうか。


「王家の血が流れてるからってんなら、アンタも残って事後処理とやらをお手伝いしたらいいんじゃないですかぁ、オウジサマ」


「勘弁してくれ、俺は認知されてなかったんだから論外だ。あの場でもそう言ったろう?」


「ついでに絶縁宣言とかよくやるよ、ホント」


「代わりに報酬はお前に譲ったんだ、それでチャラにしろ」


「そりゃ助かったけどさあ」


 そう、実はディルムッドの複雑な事情とやらをぶっちゃけると、王様の息子なのだ。

 勿論、母親は王妃様じゃない。

 それどころか長女である隣国へ嫁いだ王女様よりもほんの少し(・・・・・)年上である。


 お相手はライリー様の遠縁に当たる少女で、王城で侍女をしている際に手を出されてしまったというわけだ。

 だが王妃様の第一子妊娠よりも先に、戯れで手を出した侍女が懐妊と来れば、外聞も悪けりゃなんたって王族の縁戚にある辺境伯の親戚筋。

 後継者争いが面倒くさいことになるのが目に見えている。

 全部王様が悪いんだけども。


 で、困った王様は認知しないと宣言して莫大な金銭と共にライリー様に押しつけた。

 それがディルムッドなのだ。


「まあでもあれだよね。王様も相当焦ってたんだろうね……イザベラがアレクシオス殿下を見限るのは仕方ないとしても、今更ディルムッドを王子として認めるからそっちに嫁がないかとか提案すると思わなかった」


「あれは俺も驚いた」


「わたくしは事情を知りませんでしたから、お二方よりももっと驚きましたのよ?」

 

 ちょっぴりふくれっ面をしてみせるイザベラに私たちはあんまりにも可愛くて笑ってしまう。

 確かにあの時のイザベラったら目を丸くして驚いていたものね!

 いやまあ、驚いていたのはアレクシオス殿下もだったんだけどさ。

 

 ちなみにディルムッドは王様に向かって『ジュエル級冒険者になったのは王様(アンタ)に認めてもらいたかったわけじゃなく、父親だからって権力を笠にいいようにされないためと親父(カルライラ辺境伯)の役に立つためだ』ってどきっぱりと言った姿はかっこ良かった。言わないけど。

 その後、誰を後釜に推されても結婚する気はないし、貴族であり続けるのはお断りだとイザベラの言葉が続いて王様、撃沈だったのよねー。


(まあ、それでもゴネるもんだから私への報酬は〝イザベラの自由〟でごり押ししたんだけど……)


 報酬はほしいだけくれてやるって宣言はあの場にいた全員が聞いていたから言い逃れは出来ない状況だったので、王様も王妃様も泣く泣く認めざるを得なかったのよね。

 アレクシオス殿下だけは状況がわかっていないのか、いやわかっているからこそなのか、イザベラに縋ってよりを戻してくれとか寝言言ってたけど。


 まあそんな感じで頼みの綱(?)のディルムッドに断られイザベラにも拒否された結果、アレクシオス王子の処遇はそこで確定した。

 

 廃嫡したいところだけれど第二王女の輿入れを反故にすることはできないらしく、このまま彼は王太子となる。

 ただし、予定よりも早く立太子礼を執り行い新たなる婚約者達と婚姻を結び、世継ぎをもうけた後、すべてを子に引き継がせて退位するっていうね。


(わー、えげつな……世継ぎをもうけるためだけのお飾りの王太子か……。まあ、自業自得だね)


 真実の愛とやらは結局彼を救わなかったわけだ!


 次に黒幕であったマルチェロくん。

 彼は悪魔に一方的な契約破棄を受けたことで一命は取り留めたものの、魔力障害と全身に機能障害を抱えたため今後は一生療養生活が必要であるため、療養院に幽閉。

 まあ、魂がズタボロになったんだろうと推測はしているけれど直接見たわけじゃないし、治す手助けをしてあげたいとも思わない。


 妹への恋心と両親への鬱屈から起こした行動そのものは悪質であると考えられたけれど、悪化の一途を辿っていた公爵家の財政を立て直し、領民達の暮らしを豊かにしたことは評価に値するということで死罪は免れたけど……一生不自由な体で幽閉されるってのは温情なのかどうか正直わかんないね。


(……でも、まあ。死罪よりは、イザベラにとってマシなのかもしれないか)


 少なくとも、彼女にとっては思い出のある肉親であることには違いないのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 王様の蒔いた種(比喩ではない)がもう一つ騒動引き起こしてたよ……最低だな! 周囲の高官の皆さん、マジ頑張れ。この一家には国の舵取り任せちゃダメだ
[気になる点] そういえば聖女様(笑)の処遇は? [一言] 4人中3人が身分的な事情を抱えてそう?
[一言] 蛙の子は蛙〜〜〜〜〜!!!!!なんかもう起こるべくして起こった一件だった感がすごい… ディルムッドとフォルカスはどうするんだろうって思ったら、しれっと追いついていて草
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ