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その後、猿ぐつわをした女の子と顔を青くしちゃって今にも倒れそうなその両親らしい二人、それに同じように猿ぐつわされた王子が到着してこれで役者は揃ったらしい。
……いや、待って? 王子が猿ぐつわされてるって相当な絵面なんだけども。
可哀想とはこれっぽっちも思わない。
だけど、そんな状況人質になって交渉の場に連れてこられるとかくらいでしか見ないと思うんだけど……ここ、王子の母国で生まれ育った王城よね……?
(……まあ、いいか)
私が考えてもしょうがない!
さて、私の見たところ、だけども。
国王陛下は割と良識がありそうだけど、男爵が所々修正を入れてまともになっているっぽいかな。王妃様に関してはもう今にも倒れそう。ってことはあまり期待できないか。
公爵夫妻はイザベラちゃんに謝罪が第一声でなかった点で、私の中でギルティ確定。元々ギルティだったけど、加点されたのでもう許すところはない。
ぜってぇ、イザベラちゃんの自由をもぎ取ってみせっからな……!!
気になるのは、兄のマルチェロだけど……まあこの話し合いで様子を見るか。
エドウィンくんは落ち着いて、膝の上で握った拳を見つめている。
うん、カルライラ・ブートキャンプが完全に彼をまともにしたと思うと感慨深い……私は何もしていないけど。
彼の両親はどうやら良識的な人らしく、イザベラちゃんにさっき謝罪の言葉を述べてから座っていた。
きっとエドウィンくんは三男ってことでみんなから可愛い可愛いって甘やかされて育っちゃったんだろうなあ。
素直なところとか、カルライラ・ブートキャンプで更生できたところを考えると根は真っ直ぐだったと考えられるから、ご両親もいい人だと思うんだよ。
(それで、まあ)
猿ぐつわされた女の子。
あれが例のエミリア・ベルリナ子爵令嬢ってやつだな。ぶっちゃけ、ヒロイン。
私が漫画で読んだのは途中までだった。
内容が合わなくて途中で止めたんだけど、そこまでの内容はざっくり言えば平民上がりの貴族になっちゃった女の子のサクセスストーリー。
淑女となるべく学園に入って王子や貴族の令息と知り合い、興味を持たれて困っちゃ~う☆的な展開からラブロマンスへ。
そこで我らがイザベラちゃんが彼女の行動に苦言を呈し、最終的に私と出会うきっかけになった婚約破棄をされる、と……。
私は、その先を知らない。
(でも普通に考えたら、ヒロインは王子と結ばれてめでたしめでたし……であって、猿ぐつわって)
もっと穏やかに話し合いが始まると思ってたよ!!
なんとなく私は始まる前からげんなりして、今からでも遅くないからイザベラちゃんを連れて国外へ脱出しようか……なんて思っちゃったくらいだ。
全員が集まったことで国王が重々しく口を開く。
「みなよく集まってくれた。ここにいる者は、何故集められたかよくわかっていることと思う」
国王の言葉に、男爵が今回のいきさつを改めて私たちに説明する。
説明するというよりは確認だろうか。
知っていることなので私もイザベラちゃんも、口を挟むことはない。
時折、不満そうにくぐもった唸り声が聞こえるけど誰もそこにはツッコまなかった。
「さて、……残念ながら我が息子、アレクシオスに話を聞いても埒が明かぬ故当事者達に集まってもらった。委細、間違いないか。バルトラーナ公爵令息マルチェロ、並びにサンミチェッド侯爵令息エドウィンよ」
「間違いありません。我々は、ベルリナ子爵令嬢の言葉を鵜呑みにし、彼女の証言のみを元にイザベラ=ルティエ殿を一方的に断罪し、議会に裁判を求めるでなく、我々のみの勝手な判断で身分剥奪を言い渡し、カルライラ辺境領へと送りました」
国王の厳しい問いかけに、エドウィンくんがはっきりと答えた。
その言葉に、くぐもった唸り声が止んで信じられないような目がエドウィンくんに注がれているけれど、彼はそれに怯むことはない。
「僕は、過ちであったとその場で気がつけず、アレクシオス殿下を諫めるどころかそうすべきだと賛同したのです。罪を認め、裁きを待つ所存です」
「……さようか」
国王は少し驚いたようだけれど、頷いただけだった。
そしてちらりと視線を向ける。相変わらず、もう一人の当事者であるマルチェロくんはだんまりだ。
「マルチェロよ、お前は幼い頃から優秀で、両親に代わり領地の運営にも携わってきた。王妹が降嫁した際の持参金もあり、豊かとなった公爵家を食い潰した両親に代わりお前はよくやっていた」
ほほう、イザベラちゃんの両親はとんでもない金食い虫だったと。
そんでもってお兄さんは跡継ぎとして頑張っていたと。
まったくもって私たちには関係ない話だね?
「その手腕を買い、公爵家の後嗣として彼らより権限を与えるよう推挙したのは余である。お前ならば、アレクシオスを支え、時に諫め、導けると信じてのことだった。それなのに、何故此度のような愚行をお前は許したのだ」
イザベラちゃんが言っていた通り、きっとマルチェロくんはとても優秀だったんだろう。それこそ王様が認めるくらいには。
だけど、彼の視線は……切々と訴える国王じゃなくて、イザベラちゃんだけに向かっていて、私は気味の悪さを感じざるを得なかった。
「いいや、むしろお前が主導したとアレクシオスは言っておった。それは誠なのか? イザベラ=ルティエがここに来れば、そなたは全てを話すと約束したであろう!」
マルチェロくんは何を話すのだろう。
そう思った瞬間だった。
「あ、あたしは悪くないわっ! 全部、そう全部マルチェロが仕組んだのよ! あたしを貴婦人の中の貴婦人に、王妃になれるよう手助けしてくれるって。王子がどうしたらあたしを見初めてくれるのか、教えてくれたのはそこのマルチェロよ!!」
先ほどから首を振るようにして必死に訴える彼女の猿ぐつわが外されていた。
いやまあ、私の視界にも動く騎士は見えていたし、王様が彼女を使ってマルチェロくんを追い込もうとしているってのはわかるんだけどね……。
「どうなのだ、マルチェロ」




