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「とにかく、我々は辺境伯様のところへ向かう途中だったんだ。くそ、役に立たない連中め……おい、冒険者!」


「アルマって名前があるんだけど?」


 なんだこのボウヤ、生意気だな。

 孤児院にいた頃にいたやんちゃなちび助達を思い出す。元気にしてるかなあ。


「うるさい。たかが自由民ごときが将来王太子殿下の側仕えにしてもらえる僕と対等な口を利こうとするな!」


「エドウィン、助けてくださった方に失礼ですよ!」


「お前は罪人だろう! 黙ってろ!!」


 自由民。

 それは冒険者を指し示している。


 この世界で、冒険者だけは土地に縛られない。毎月頭に役所に対して冒険者ギルドを通じて納税すれば、どこの土地で暮らそうがフリーダム!

 ちなみに納税していないと冒険者ギルド経由でバレて罰金の上、資格剥奪だからみんな大人しく守っている。

 納税額は冒険者のランクによって違う。


 自由を愛する冒険者達よって吟遊詩人の歌にもある通りの生活なんだけど、まあ貴族の人とかはバカにするのよね……。

 結局は日銭を稼いで将来のことなんて考えちゃいない根無し草ってね。


 言いたい人には言わせとく、それでいいけど庇ってくれた美少女にまで噛みついているのはいただけない。 


「はいはい、で? なに」


「僕らを辺境伯様のところまで護衛しろ!」


「護衛ねえ……ふうん」


 私としても辺境伯が治める町に行くつもりだったから、連れて行くのはやぶさかでもないって言うか……でも人に頼むのに居丈高ってのはどうなのってハナシよねえ。

 基本的に子供には優しくってのが私のモットーだけど、漫画の設定だと大体十五歳くらいだっけ?

 なら社会の厳しさを教えてあげるのも、オトナの優しさってもんでしょう!


「依頼ってことでいいのかしら?」


「そうだ。……今は持ち合わせがないが、辺境伯様にお願いして依頼をしてもらえるよう取り計らってやる」


「エドウィン!」


「気安く僕の名前を呼ぶんじゃない!」


「……へえ?」


 私はボウヤの言葉ににんまりと笑ってみせた。

 二人が私の顔を見て、怪訝そうな顔をしたけれどそれも織り込み済み。


 冒険者は自由民。

 そう蔑まれるのは大半の冒険者のランクにある。

 納税額が示すように、ランクは稼ぎに比例している。そう、ランクが高ければそれだけ大口の仕事や、信頼があるってこと。


 そして私のランクはと言えば。


「ボウヤのお願いで辺境伯が動いてくれるかしらね?」


「ど、どういう意味だ……僕はサンミチェッド侯爵家の三男だぞ、軽んじられるはずがないだろう!!」


 小太りのボウヤが高らかにそう言うけれど、へえ、侯爵家の三男なんだ。

 つまり跡継ぎレベルで大事な子ってわけじゃなさそうだから、王太子の側近になれるのは大事だよねえ、わかるわかる。


 でも、だからってそういう態度はよくないとおねーさん思うわけですよ。

 まあこっちもオトナですのでいちいちむっとしたりはしないし、子供だからって馬鹿にはしないよ。

 冒険者は客商売でもあるんだから、そういうところはきちんとした方がいいってね。


(……ま、それをわかってないヤツらが結構な数いるから、冒険者は粗雑でバカばっかだって思われがちでもあるんだけど……)


 しかし変なところでこの子達は襲われたなと私は思う。

 王都から辺境区への移動は馬車だけど、ここは旅人がよく利用するような表の道じゃない。いくら罪人を護送しているとしても、碌な護衛もなしに侯爵家の子供まで乗せて行かせるような道じゃないのは確かだ。


(……ちょっときな臭いかな。巻き込まれるのは面倒だけど)


 かといって、他に人が通りがかる気配もなければ壊れた馬車に子供二人を残していくってのも……いや、世間一般で言えば学校卒業してるんだからもう一応大人の仲間入りかな?

 どうにもこの子達が世間知らずっぽいから子供扱いしちゃいそうだ。


「まあ、見捨てるのも寝覚めが悪そうだしね。いいよ、町までまずは連れて行ってあげる」


「ありがとうございます」


 私の言葉にすかさず美少女がお礼を言って頭を下げてくれた。

 小太りボウヤの方は当たり前だと言わんばかりにふんぞり返っているけど、ほっとしているのが見えてちょっとだけおかしかった。


「とはいえ、私も徒歩旅だからそこは我慢して歩いてもらわないといけないよ」


「な、なに……!? 貴様、馬車などを持っていないのか!」


「気ままな一人旅だからねえー」


 馬車移動するほど荷物もないし、馬とかは可愛いけど森の中とか進みづらいし私は徒歩派なんだよね!

 カラカラ笑ってそう説明してあげると、小太りボウヤはショックを受けたようだった。


「まあいい運動になると思って。途中モンスターや野盗が出ても私が対処してあげるからさ!」


「最悪だ……」


 膝から崩れ落ちそうになる小太りボウヤ……なんだっけ、ああ、そうだエドウィンくん。

 そんなに遠くないところに村があることは黙っておいた。

 張り切って行ったところで馬が買えるかもわからないしね、ショックで暴言吐いたり絶望されたらこっちが困るもんで。


 でも美少女は私が思っていたよりもずっと気丈らしい。

 漫画の中で断罪されていた時は、悔しいって顔を歪めていたけど……吹っ切れてんのかな?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そして私のランクはと言えば。 ランク書いてなくね?
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