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イザベラが色々納得できないまま、物事は進んでいる……と思う。
まあなんでそんな曖昧な言い方なんだって問われると、割となんていうか、現実みがないっていうか……精々イングリッドという生き証人(?)がいたから、大変だったんだなーとかそういう感想を抱いたってのが本音だ。
私は実際のところ転生者だし、王侯貴族でもないけどそこそこ地位を得ることができるくらい強い冒険者だし、なんていうか世界の存亡がどうたらとか言われてもピンとこない。
そもそもが私、あの国でも聖女としての素質すらなかったからね!!
だからまあぶっちゃけ、他人事なんだよなあ。
ただ、イザベラがいるから関わっているだけ……みたいな?
可愛い妹が困った目に遭うなら、そりゃ助けるでしょ、姉として。
理不尽なモノなら尚更ね!
なんたって、家族だからさ。
(まあ、イザベラからしたら暢気に旅を再開しちゃっていいのかってところなんだろうけど)
私から言わせれば、閉じこもって悩んでいたところで結論なんて簡単に出ないと思うんだよね。
それこそでっかい物事を決断するなら、どこにいたって同じじゃない?
「おっしゃ、オーガフィッシュ一本釣りぃぃぃいい!!」
「大きい……!!」
「おお、これはまた立派だねえ」
ホクホク顔の父さんと、目を丸くするイザベラに私は釣り上げたオーガフィッシュの上に乗ってドヤ顔をしてみせる。
いやあ、近年まれに見るいいサイズじゃないか。
このサイズならざっと四、五十人前ってとこかな。
(煮付け、刺身、ヅケ、照り焼きもいいな)
今夜はオーガフィッシュでパーティーだね!
いやあ作りがいがあるじゃないかー。
このオーガフィッシュ、肉食モンスターで大変凶暴だけど食べると美味しいのだ!!
基本的には淡水魚だけど海にもいるからどっちもイケるのか?
もしかしたらちょっと種が違うのかもしれない。
後不思議なのは魔力を宿しているからなのか、寄生虫とかもいないんで湖で採れても刺身でオッケーなので便利だと私は思っている。
一般的には危険だから近寄っちゃダメだけどね!!
「イザベラ、まずはアクアパッツァ作ろうか」
「アクアパッツァ? ですか?」
「そうそう、ここに来る前に買った貝と白ワインで作ろうねえ」
フォルカスも好きだし、父さんも興味あるみたいだし、野菜も一杯あるぞう。
イザベラは聞き慣れない料理名に首を傾げながら、私に言われるまま準備を始めてくれる。
その姿は、どこかの国でお姫様だった……なんて言われたら信じ……るな、気品あるし美人だし、立ち居振る舞い綺麗だし。
まあそれはともかく、今じゃあ火おこしだってお手の物。
(フォルカスが町での情報収集を終えて戻ってくるまでには何品か作れるでしょ)
悩んで悩んで、自分を犠牲にしてでも〝始まりの聖女〟を討ちたいとイザベラが本心から望むなら私だって手伝うよ。
でも中途半端な気持ちなら、もっとこの世界を見て、もっと自分を知って、それからでもいいと思ってるんだ。
「よーっし、それじゃあ掻っ捌くかね!」
「お姉様、なんだか悪役みたいですわ」
悪役上等、世界にとってそうだろうと私は妹にとっての正義の味方でいたいんだよ。




