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まあ、誰が何してこようがとりあえずやることは変わらない。
「イザベラ、おばあさまのお墓参りに行こっか」
「え?」
「父さんのことも報告しなくちゃねえ」
「おお、イザベラの祖母君か。うんうん、父親になったからにはやはり挨拶しなくては! 安心していただけるように」
「え? え?」
かき氷を食みながらの言葉にイザベラが困惑する姿を見て、そっと笑う。
また突拍子もないことを言い出した……そんな風に思っているに違いない。
なんにでもそうだけど、やると決めても腰が重いことってあるじゃない?
今がまさにそうだ、少なくとも私はそう。
結局、封じるにしてもあの国に行かなくちゃいけない。
そのためには理由がほしい。
世界を救うような大義じゃなくていい、もうちょっと肩の力を抜いて、それでも『行った方がいいよね』って思えるような、そんな理由だ。
そういう意味ではイザベラに父親ができたってのはいい口実じゃないだろうかと思うんだよね!
(まあ……決別をしたとはいえ、お墓参りとかは定期的に行きたいものだと思うし)
イザベラは敬虔な信徒だからおばあさんのお墓参りを本当は欠かさずしたいんじゃないかなと思っていたのも事実。
袂を分かつというような雰囲気であの国を後にしたけど、戻っちゃいけないことなんてないのだ。
だってイザベラはもう平民で、冒険者なのだ。
何にも縛られない自由を生きる冒険者になったのだ。
「行くなら綺麗なお花を持って行きたいねえ」
「水晶花なんて良いんじゃないか? 今の季節は美しく咲いているだろう」
「ええーそれってフェザレニアの万年雪に囲まれたところで咲くんじゃないっけ?」
「そうだな。黒竜帝に願えばもらえるじゃろ」
父さんなりにお墓参りに対して気をつかってくれているのはわかるが、それってとても高額取引されている花なんだよなあ! 綺麗だけども。
「え、いえ、あの、も、戻るのですか? ということは、もう封じる……?」
「ん? いやいやまだそういうわけじゃないよ」
びっくりするだけじゃなく、顔色を悪くし始めたイザベラを見て私は慌てて手を振った。
心配しなくていいんだってわかってほしくて、ポンポンと頭を撫でる。
そうしたら嬉しそうに目を細めるイザベラが、とっても可愛い。
うん、妹にして良かったなあ……そうしみじみ思うよね!!
私としてはこの日々を手放したくないし、ここのところ毎日のように思い詰めた表情をしているイザベラをそろそろ解放してあげたいなって思うのだ。
情報が集まってから行動するのが最適解なんだろうけど、ジッとしているのが苦痛になることってあるじゃない?
それなら問題ない程度で少しずつ動けばいいって思うのよ。
ある程度のことは最終的になんとかすればいいんだからさ。
「まあ、途中寄り道するにしてもお墓参りに行くってことでいいんじゃないかな」
寄り道ついでに例の教団員とっ捕まえて色々聞き出したりとかさ。
美味しい魔獣狩ってみるついでにね!
GWも更新します!°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°




