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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
三部 第四章 聖女と悪魔

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「わたしは当代の聖女として、その時を生きた人間として、彼女の……〝始まりの聖女〟は危険な存在だと人々に訴えました。そしてそれに賛同してくれた者たちと共に戦いましたが、そうした理由で我々はただ追いやられていくばかりだったのです」


 その結果、己の魂と引き換えに悪魔の力を借りようと決断した……ということらしい。


 ただ、正直どっちが正しいのかなんて私にはわからない。

 たしかに瘴気は危険なもので、それを聖女たちが浄化したり防いでくれていたのだということはここまでで理解できている。


 同時に、それが人間が多数存在し、助け合いの心を忘れて妬みなどのネガティブな感情が勝った結果だってことも理解した。

 それそのものは当然のことだろうなと思うし、聖女って存在が世界中に増えたってなんならある意味それはこの世界における進化の一つなんだろうとも思う。


 進歩しているようで変っていない子供たちを見て、〝始まりの聖女〟が嘆いたのかもしれないこともわかる。

 だから世界をリセットしようは……ちょっとまあ、ぶっ飛びすぎて理解できないけど。


 私は〝始まりの聖女〟を知らない。

 ただ、何か良くないことに巻き込まれているってことだけはハッキリしている。


 私ではなく、イザベラ(・・・・)が。


「エアンドゥラスとの契約を持って、わたしはこの命をかけて〝始まりの聖女〟を封じました。ただし、その封印は決して完全なものとは言えなかったのです」


「……どう、して」


 イザベラが呻くように言ったその声に、イングリッドは辛そうな表情を見せた。

 傍らの仮面野郎は、動く様子はなかった。


「すでに強い力を有していた彼女は、瘴気の大元まで辿り着いていました。わたしは彼女と同じ方法と、悪魔の力を借りて封じたのです。……悪魔に魂を捧げ、転化しきれなかった瘴気に身を焼かれながら」


 それでも、〝始まりの聖女〟は強かった。

 強かったと言うよりは、それまで彼女が食らった瘴気の分だけ強くなっていたのだろう。

 封じることはできても、完全とは行かず……むしろ同じように不完全な封印を施された瘴気の塊からは禍々しさが放たれる。


「わたしは死にました。ですから、その後のことはこの者に話を聞いて知りました」


 イングリッドが視線を落とす。

 仮面男は、跪いたまま顔を上げない。


「当時、わたしに最後まで付き従い、見届けてくれた神官戦士です。貴女がたに無礼を働いたことは幾重にも詫びますが、それも忠心ゆえと許してやってください――彼女たちに、その後のことを語って差し上げて」


「……お望みとあらば」


 顔を上げた仮面男は、ひたりと私たちを見据えている。

 仮面の向こうから覗くその目は、酷く昏いものを宿しているようでどこかゾッとしてしまった。


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