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仮面男は悔しそうに私を睨み付けていたかと思ったら、まるで空気に溶け出すように消えていった。
なんとなく魔力使ってるなとは思ったけれど、転移系を無詠唱で使えるとは……やるな、噛ませイヌっぽいキャラのくせに。
鳥っぽい仮面つけているのにイヌっぽいとはこれいかに。
いやまあ、盛大にディスって見たもののアイツが最初から私を侮らず全力で不意打ちしてきたら結構大変だったろうなと思うくらいには強そうなヤツではある。
そういう意味では今回はあの迂闊さっていうか短絡さ? そこに救われたんだけども。
「姉様! お怪我はございませんか!?」
「ないよー、ありがとね」
「一体このゴーレムはどうしたのですか?」
「うーんとね」
種明かしをすれば、簡単だ。
ゴーレムには核があり、そこを攻撃すれば止まる……というか、壊れる。
だからこそゴーレムの核は非常に強固な守りの中に存在する。
強いゴーレムになればなるほど、物理的にも、魔法的にもそこに攻撃を加えられないようにとなっているという寸法だ。
それをイザベラに説明しつつ私はゴーレムに登って自分の剣を回収した。
「基本的に方法は二つ。一つはまあ、物理的に核を貫くか、核を守る防壁を壊して攻撃する」
ディルムッドがお得意なヤツだ。
私の場合、いくら強化をかけてもあそこまで物理攻撃力が上がるわけじゃないので却下。
「で、次に魔法で攻撃する。このゴーレムの場合は表面に魔法耐性があるから、普通に攻撃してもまず外殻を壊すだけでもかなりな労力だから、そこらへんの見極めは経験かなあ」
フォルカスみたいに魔力オバケだったらいいだろうし、それこそ前世の化学知識みたいなものを応用するとかできればまあいけるかもしれない。
でも私は残念ながらそこまで勉強が得意ではなかったので、正直金属は熱して冷ましてしたら壊れやすいとかそのレベルの知識しか無いのだ! ごめんな!!
「まあ今回私が使ったのは、物理で傷をつけてその傷から魔力を用いて核を壊す作用をもたらしたってところ」
そうざっくり説明すればイザベラは目を丸くして、私が剣に絡まっていたツタに咲く花を手渡したところでクスクスと笑ってくれた。
うん、まあ、植物の力ってすごいよね。
私が前世で見たのもコンクリートを破って出てくる植物とか、空き家をびっしり覆っちゃう蔓植物とか……あの辺の生命力スゲーって思うもの。
そんな中でさらに上位精霊の力を借りた植物の力はきっとハンパないだろうなって思ってやったわけだけど。
「……それにしても、先ほどの男が言っていた〝主〟とやらは何者なのでしょうか」
「さてね。少なくとも私たちに対して敵対的とは思わないけど……ゴーレムをけしかけたのはあの男の独断でしょうし」
「……会って良いものなのでしょうか。それに、わたくしのことをあの男は〝聖女の器〟と呼んでいました」
きゅっと自分を抱きしめるようにするイザベラは、きっと色々と複雑な思いに違いない。
これまでの旅路で『聖女とは何か』を探すどころかなんだかそれが複雑怪奇に、少なくともあまり良くない話ばかり出てきちゃってるわけだしね。
それに口にしないだけで、私もイザベラもその〝主〟とやらはこのダンジョンの〝主〟なのかもしれないと思っている。
このダンジョンを作り出したものが、一番奥に配置するとしたら、それは誰なのか。
「行くっつったけど行きたくないなら、帰ろうか」
「えっ」
「私に取ったらイザベラの方が大事だよ。可愛い妹がしんどいなら出直したって許されるでしょ!」
簡単には帰れないかもしれないし、戻る道中で王子たちに会うかもと思うと気は進まないけれど。
それでもイザベラが苦しいなら、私にはそっちの方が問題だよね!




