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私のぶちのめす宣言を受けて、仮面男は驚いたように目を丸くする。
いやいや、そこで驚かれてるよりももぉっと驚いてもらおうじゃないか。
その横っ面張り倒してやんよ!
私はイメージを膨らませて魔力を放ち、男の四肢を鈍くさせる。
ちょうどいいことに、植物は一杯あるからね?
勿論、拘束できるなんて甘いことは考えちゃい無い。
なんせこの仮面男だってそれなりに魔力を有しているからこそ、巨大なゴーレムを出してきたんだしさ。
だからこそ、ほんのちょっとの隙でいい。
その植物を千切るだけの一秒でいいのだ。
倒すわけじゃない、捉えるわけじゃない。
「せえええぇええええええのおおおおおおおおおおぉオ!!」
力一杯!
拳に重力を乗っけて!
ゴーレムを蹴るようにして男の元に一直線。
勿論魔法で加速もつけて。
「ちょ、まっ……」
私の目的と行動が脳内で一致したのだろう、仮面男はあっさり植物を千切ったけどまさか私がまっすぐに拳を突き出してくるとは思っていなかったのか、咄嗟に手を前に出したようだが遅い遅い!
障壁を貼るよりも、転移をするよりも早く私は拳を出しているのだ。
避けられたら?
まあその可能性はあるだろうけど、残念、そこにも一応植物を生やしておいたよ!
びっくらこいてるけどそのまま驚いとけ!!
そして、勢いよく拳が当たる。
仮面に拳がぶつかってこちらも若干痛かったが、気にせず振り抜いてやった。
「やってやったぜー!!」
「アルマ姉様、お見事です!」
「くっ……き、貴様らァ……」
拳がジィンと痺れているところをみると、ギリギリのところで仮面男はうすーく防壁を張ったらしい。
なんだ、やるじゃん……でも仮面はぶっ壊してやったので引き分けか。
イザベラの喜ぶ声に思わず手を振りつつ、私は地面に横たわったままずるりと這うようにして距離を取る男のローブを踏み、移動できないようにしてやった。
酷い? いやいや、いきなりあれこれ文句をつけてきて人の妹を『聖女の器』扱いした挙げ句、こちらの返事が気に入らないからってゴーレムけしかけてくるよりもずっとマシですよー、やだなあ!
「思ったよりもお元気で。硬化と強化の魔法をかけた拳でそんなに元気でいられるとなかなかに自信なくすわあ」
モンスターを一撃で屠れる攻撃だったと自負しているよ!
まあ、逃げられてもここで倒しちゃっても敵対したんならその覚悟があっただろうし、後味は悪くなるかもしれないけど下手に手加減してこっちが負けちゃあ意味ないからね。
私はにっこりと笑ってしゃがみこみ、仮面男と視線を合わせてやった。
おそらく整った顔立ちをしていたんだろうが、私が殴ったせいで思いっきり半分腫れているから台無しだ。
悔しそうにしているところから、もう無駄な抵抗はしないだろう。
ざまあみろって笑ってやりたいところだが、さすがにそこまで下品な真似はしたくなかったので私はただ笑みを浮かべるだけに留めた。
「それじゃあ実力も示せたし、納得してご主人様に私たちが自分の足で向かうから待っていてくださいって伝言よろしくね? 伝書鳩さん!」
性格が悪い?
いやいや、ケースバイケースでしょ!




