3-18
本日12/15、書籍版『悪役令嬢、拾いました!』の2巻が発売です!
オリアクス登場で書き込みもいっぱいさせていただきました。
これもみなさまの応援のおかげです。ありがとうございます!!
そして翌日、私たちは早速冒険者ギルドに再度足を運び、ダンジョン探索の許可をもぎと……いやいや、快く応じてもらったわけですよ。
まあ未踏破のダンジョンってことで多少難しい顔をされたけど、ダンジョン攻略なんて失敗が前提の代物。
失敗がいくつあったってかまやしないんだから、無駄に勇み足して死亡例が増えるよりも実力者が真剣に取り組んでダンジョン探索の基礎を作った方が町にとっても益になるっていう話と実例を交えて話したのが大きいんだろうけどね!
勿論、父さんからの紹介状も使ったんだから嫌だって言える材料がないわけよ。
(まあ、本当は地元の冒険者に任せたかったんだろうね)
そっちの腹は見え見えだっつーの。
おそらく簡単なダンジョンだと見越した上で、この間の【砂漠の荒鷲】にあわよくば探索成功で箔をつけさせて更に攻略させたかったんだろうけど……。
今のところ彼らのレベルでは難しそうだって上層部でも判断したんだろう。
放っておく方が危険だと判断したけど、面白くないってとこだろうか?
まあ、そんなこと私の知ったこっちゃないけどねー!!
「さあて、じゃあ次はカイゼル君のとこに……ってアランじゃない、なんの用?」
ギルドを出たところで仁王立ちのアランが現れた。
先日ぶりの再会だってのに、既にお怒りなんだけど……やだなあ、短気は損気って言うじゃんね。
私は喧嘩を買う理由もなければ敵対する理由もないし、にっこり笑って手をひらりと降ってあげたけど、アランはにこやかになるどころか眉間に皺を増やす始末。
イザベラがその様子にムッとした様子を見せたけど、何も言わずに私の服の裾を掴んだ。
あら可愛い。
「お前ら、ギルド長と何話してたんだ」
「別にいーじゃない、私たちの勝手でしょ? ね、イザベラ」
「そうですわ。きちんと手続きを踏んだ上での面会ですから、第三者に苦情を言われる筋合いはございません」
「……ッ、よそもんが俺たちの町で好き勝手に動いてんじゃねえよ!」
イザベラの言葉にアランが大きく腕を振りかぶる。
でもそれはすぐに彼の後ろにいた二人によって止められた。
「アラン、よせ!」
「ア、アラン! アルマさんたちはぼくたちの命の恩人で……っ」
「うるせえ!」
おや、アランの仲間は私に一応の恩義を感じているようだ。
全く賑やかだけど、よそ者だのなんだの……。
「冒険者やってけんのかな?」
「あア!?」
「おっと」
思わず口から出ちゃった。
今更だけど手のひらで口を押さえてみるけど出ちゃった言葉は戻らない。
口が滑るとはまさにこのことだけど、気をつけなくっちゃね!
「ごめんごめん。でも、いつまでも地元にいるつもり? よその冒険者が旅をしてこないとでも? 自分たちよりも実力が劣る冒険者しか世界にはいないとでも思ってる? そんなわけないよねえ!」
ちょっと意地悪かなと思いつつも私はアランを真っ直ぐに見据えて矢継ぎ早に質問を投げかけてやった。
地元愛は結構、故郷があると旅をした時に戻りたいとか希望が持てて、心の支えになるってよく聞く話だ。
でもアランのこれは違うでしょ?
地元の勇って祭り上げられた結果、自分がいなけりゃ成り立たないくらいに驕っちゃったんじゃないの。
ダンジョンでの行動、敗北、そして私たちのサポートを受けての生還。
それを身を以て知ってるくせに、『好き勝手するな』とはまあ!
(私が無法者でルールを守らず町を困らせる存在ならともかく)
こっちゃルールを守ってきちんと暮らす冒険者ですけど!?
ちょっとくらい言い返したってバチは当たんないでしょ、まったくもう。
「そんなに言うならギルド長に文句言ってくればいいじゃない、私じゃなくてさ。面会したいって言ったのは私だけど、許可して会ったのはあっちなの。わかる?」
「……くそ、てめえなんざこの町で活動したってなんの役にも立ちゃしねえ、俺たちの方が……!!」
「あんたさあ、何目指してんの?」
「……あ?」
「私は自由を愛する冒険者。この町に思うところはないよ、特にはね。ま、果物が美味しい町でうちの父親の友人もいるし、依頼があれば優先順位高めでやってもいいかなーってくらい」
「……」
「地元で最高の冒険者になりたいだけなら、私とは目的そのものが違うんだから噛みついたってしょうがないでしょ? 話がそれだけならもう行くね、ギルド長によろしくう」
すれ違いざまに肩をポンッと叩いてやったけど、アランは何も言わなかった。
少し進んだところで肩ごしに振り返ると、残りの二人が私たちに向かって頭を下げている姿が見えて、なんとなく微笑ましくなる。
「姉様」
「イザベラも考えときなよ、どんな冒険者になりたいのか」
自由を愛する冒険者。
私は旅をして、好き勝手に生きていく。そこに生じる義務も責任も、全部私が請け負う。
それが自由だ。
でもイザベラの人生はまた別物だから。
私と一緒に過ごす時間の中で、決めたらいい。
聖女じゃなくなって、あれもこれも目新しくて楽しく生きているイザベラにも、いつかは目標ができるのだろう。
「考えますわ。きちんと……答えを、いつか。わたくしなりの、答えを」
「うん。焦らなくていいからさ」
「はい!」




