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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
三部 第二章 『悪役令嬢』

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3-16

「よろしかったんですの」


「うん? どうしたの?」


 結局あの後どんちゃん騒ぎ……にはまあ、ならない程度に飲めや歌えやとマルセル君がはしゃいでみせて私たちは楽しく食事をし、そして解散した。

 後日、カイゼル君の拠点としている借家に行く約束もしてね!


 なんでも彼はここが故郷で、でも各地を見て回りたい気持ちがあるから店は構えずに幼馴染のマルセル君と共に行商の旅をメインでやっているらしい。

 ただまあ、だからといって仕入れたモノが毎回全部売り切れるってわけでもないので最初は実家にある自分の部屋を倉庫代わりにしていたらしいんだけど、ご両親に叱られて家を借りたんだってさ!


 いやあ、なんだか身につまされる話じゃないか……。

 私も前世、社会人になったばっかりの頃……一人暮らしを始めたばかりの頃は荷物を持っていけないからって自宅の部屋に置いてったのよね。

 で、一人暮らしの家に荷物が増えると一旦置いておいて! ってな感じに溜め込んで最終的に母親から『買い取り業者に持って行くぞコラァ!!』って言われて慌てたっけ……。


 異世界でもそういうのあるんだなあって思ったね!


「カイゼル様のことですわ!」


「え? ああ……カイゼル君たち? ご馳走したことかな?」


「そうではありません!」


 イザベラがなんだかプリプリしてる。

 あらやだ可愛い。


 なんて考えている場合じゃなかった。可愛い妹の機嫌を損ねたままではいけないね。


 ホテルの部屋に戻ってみると、まだオリアクスの姿はない。

 隠れて驚かそうとかそういう気配もないので、まだ仕事をしているのかもしれない。

 なんの仕事かは知らないけども。


「ええとねえ。ちゃんと話をするから、まずは座ろうか」


「……はい」


 ふかふかの絨毯の上にはいくつものクッションがあって、私は巨大なクッションの一つに腰掛けてイザベラにもそれを促した。

 立ったまま話すのもなんだしね!

 ご飯を食べてきたばかりで喉が渇いたとかもないので、私はイザベラが座ったのを見てから口を開いた。


「イザベラが不満なのは、カイゼル君を容易に信頼しすぎのように見えたから……かな?」


「そこまでは申しません。ですが、一介の行商人に対して行うには随分と初めから優遇しすぎであるように思ったのです」


「うん、そうだねえ」


 具体的には金持ちであると公言したり、金貨の袋を見せたり、決して安くはない食事代(個室料金含む)を払ってみせたり……とかかな!

 確かに普通に見たら初対面の商人相手に大盤振る舞いしているように思えるだろう。

 いくら私が稼いでいるんだとしてもね。

 そして、情報がほしいのだとしても。


 だからこそ、イザベラは私の行動に対して不思議に思っているし、お金に余裕があるからってぼったくられてるんじゃないかって心配になった……ってところだろうか。


 しっかり者だなあ、うちの妹!


「まずね、私はそもそもあの店の商人の中でカイゼル君狙いだったんだよ」


「えっ?」


「ある程度の商人たちが集まる店、その中で行商人を選び他国の状況を聞くってのが目的だったからまあ、それは正直誰でも良かったっていうか、商業ギルドでなんとなく話を聞くんでも十分だったんだよね」


 なんせ遠く離れた王国の話題だもの、ある程度は余計な嘘や噂が尾鰭になってついているだろうってことは織り込み済みだ。

 その上で商人たちが撤退している理由についてちょっとでも知ることができれば、あの王子様相手にはそれで十分って所だ。


「では、何故……」


「うーん、それはねえ」


 私は首をぐるりと回して伸びを一つ。

 あ、今ゴキッて言ったわ、凝ってるなあ。

 運動不足ってことはないと思うんだけどなあ。

 

「カイゼル君じゃなくて、マルセル君を見て決めたの」


「マルセル様?」


「なんとなく……ね」


 確証はない。ぶっちゃけ、勘だ。

 でもきっとこの勘は合っている、そう私は思う。


 ただこれを説明するのって難しいんだよなあ!

 ディルムッドに言わせれば野生の勘ってやつだし、フォルカスに言わせれば経験から生ずるモノって話だし……。


 冒険者の勘ってやつだよ、と笑えばイザベラは「すごい!」と目を輝かせてきたもんだから、なんとなく罪悪感が芽生えたのだった。

 いや、嘘は何一つないんだけども。


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