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「しっかしよくわかんないことになってるね。ディルが戻ってこないのってそういうことなのかしら」
「……本当によくわからない事態ですね。ディル様は大丈夫でしょうか?」
一旦エドウィン君たちと別れた私たちは宿に戻ってラフな格好で果物を食べつつ、起った出来事を話し合っていたわけですよ。
とりあえずゴブレットの件は後でも調べられるだろうし、アンドラスと連絡を取りたいけど王子たちも商人ギルドに用があるってんだから鉢合わせたらまた面倒じゃない?
そもそも王国がどんなことになっているのか、エドウィン君を随行させる時に私たちに会うだろうからざっくり説明しておけってディルムッドから言われてたらしいんだけどさあ。
王子がここにいる事情はわかったけど、それ以外がなんにもわからないってのが困るんですけど?
エドウィン君だって当事者というには離れていて、そこんとこの事情がわからないまま流れでこの町に来させられてむしろ巻き込まれてるって感じよ。
せめて手紙でもいいから持たせてやれよ、ディルムッド。
(……いや、書ける状況じゃなかったのかな。面倒くさがりだからってのもあるだろうけど)
どっちもありうるから困ったもんだよね。
ライリー様が彼を呼び戻したってことはそれなりにあれこれあるってことだろうし、エドウィン君に状況説明を任せてここに来ていないってことはまだ王国でやることが残っているってことなのは間違いない。
「……王と王妃の原因不明な病、確かに不安な話ではあるけどそれだけで商人たちが撤退するとは思えないのよね」
緩やかに、静かな変化があるってことはそれなりの理由が存在するってことだ。
その理由が『王と王妃が倒れた』だけとは到底思えない。
「うーん、これは一回情報を仕入れてからアンドラスと会う方がよさげだね」
「情報を仕入れる、ですか?」
「うん。アンドラスの方が老獪なのはしょうがないとしても、だからといってこっちが無知なままでいい理由にはならないでしょ? アンドラスは私たちに依頼をした、けどそれはこのゴブレットだけの話じゃなくて……裏があるはず」
それも聖女についての話で、だ。
だからこそ、何も知らないまま全部教えてもらおうなんて甘えた考えを以て臨むようじゃおそらく手のひらでいいようにされるオチを迎えるんだろう。
冒険者ギルドにいいように扱われているアランのようにね!
まあ、あれは善意だろうけど。
「父さんが私たちの後ろにいるから、アンドラスも悪いようにはしないだろうけどさ。でも私たちもいい大人なんだからある程度は自分でも行動起こしとくべきだと思うのよね」
「……はい、そうですね!」
「ま、アンドラスを出し抜こうとかそういうんじゃなくて、王国側の状況を知っておかないとあの王子の行動もわかんないし、そっちの方が比重が大きいかも」
イザベラにつきまとわれちゃたまんないじゃない!?
さすがにぶっ飛ばしたら色んな所から怒られるだろうしさ。
もうちょっとこの町でのんびり……じゃなかった、楽しく遺跡探索するつもりなんだから、厄介ごとを回避するための必要行動ってヤツよ!
「それじゃあ少し休んだら、今日の夜は外に食べに行こうか!」
「はい!」
うんうん、イザベラも旅をする中で色々と学んでいるからね。
情報収集するのには町の酒場や食事場で、店員さんたちとお話しするのが手っ取り早いんだよね。
商人たちの町、その台所で彼らの胃袋を掴んでる人たちよ?
裏情報なら情報屋だけど、世間の流れを知るにはそういう人たちからってね!
うーん、何食べよう!!
書籍版「悪役令嬢、拾いました!」2巻が12/15発売決定!
これもみなさまの応援のおかげです、ありがとうございます。
書影が出ましたらまた活動報告などでお知らせしたいと思います。




