ダンジョンさんのお話①
俺の職業は、番人。
昔、騎士をやっていたこともあったようなきがするが、今はただただ、このダンジョンのそばで、誰も傷つかないように見守るのが・・・俺の仕事だ。
振り返ったら今日も存在している古代遺跡”。ギガント”見上げるほど大きくそびえたつこの遺跡の詳細な歴史は未だ分かっていない。分かっているのは、このダンジョンが飲み込んだ人間の内、誰も生還したことがないという、それこそ眉唾物の常識だけ。
俺は、その遺跡を見上げているのだけど、それが怒りのまま睨んでいるのか、それとも諦めた眼をしているのかは、もう・・・・判断がつかなくなってしまった。
仮に・・・ただ一つだけ言えることがあるとすれば、
このダンジョンに入ろうとする愚か者は、これ以上増やしてはならないということ。
だから、俺は今日もこの遺跡の番をしている。
―と、―
砂塵の向こうから二つの人影がこちらに近づいてくるのが見えた。
無意識のうちにもれたため息とともに俺は立ち上がった。
数カ月ぶりに見る人影。
どうやら、二人とも女性のようで、砂塵から見えるシルエットは、まだ大人になり切れていないような・・・。
だんだんと、そのシルエットの詳細があらわになってくる。
―ドクン、ドクン―
久々に見た人影だから・・・・なのだろうか・・・やけに心臓がうるさい。
一人はメイド服、を着て、もう一人は変な絵が描かれたTシャツを着ている悪魔。
俺の頭に湧き上がっているのは、呆れよりもむしろ・・・・。
この砂漠を超えることは、帝国の精兵でも難儀したはず・・・
だんだんと二人の会話が聞こえてきた。
「はえーーー。デッカイ、遺跡ですねーっ!!」
「・・・・わくわく。」
二人のわっぱのようにはしゃぐ声、、、。
「あれ?この遺跡・・・どうして?」
「とまれ。」
メイド服と、Tシャツというまるで、こちらのことをバカにしているような服装をしている二人・・・・だが・・・しかし・・・
「・・・・。」
呼吸が荒くなる。
止まらない汗。
なんだ・・・この二人の持つ異様なオーラは・・・・?
目に映る情報は、目の前にいるのは、ただの少女だと告げているのに・・・
剣の腕を磨く過程で磨いた瞳が告げる。
二人の持つオーラは、全くもって・・・底が見えない。
「ここは・・・立ち入り禁止だ。」
俺は、過去何度と言って、あまりにも体になじんでしまったこの文言を、緊張した声音で告げる。
「はえ!?そうなんですかー。どうしましょう・・・。私達、ここに入らないと、依頼をこなせませんっ!?」
「・・・よし・・・無視しよう。」
のんきな口調で、のんきなことを言う二人・・・だが・・・
「いや、それはちょっと・・・あのー、どうにかして入れさせていただくわけにはいかないでしょうか?」
「・・・・・。」
第六感ともいえる戦士の勘が、この二人とは戦ってはならないと警鐘を鳴らす。
一拍
「ここに入る条件を王から一つだけ頂いている。」
「どんな条件でしょう?」
それでも、この遺跡の餌食にさせるわけにはいかない・・・。
カチャリと剣を抜く。
「王国最強と呼ばれたクラーミリアム・・・・俺を倒せるのならば、入ることを許可しよう。」
俺を切れるものなど、もう王国には存在しないはずだ。
俺は、王国最強の男。
「えーっと、あなたを倒せばよいのですね?」
「・・・そうだ。」
―瞬間―
メイドの姿が、視界から消えた。