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第十三話 装備回収と冒険者ギルドへ


 今回は道すがらレベル上げに来ただけなので、城門まではいかない。

 あの城門を守るボスモンスターを倒してしまうと、雑魚モンスターであるスケルトンが湧かなくなってしまうからだ。いまだにこちらをにらみ続けているボスだったが、どうやらあの場所から動けないようで、戦闘中もずっとそのままだ。


 レティシアの流れ魔法がボスまで行きそうになった時は肝が冷えたが、どうやらボスのフィールドがあるらしく、遠距離からの攻撃はすべて見えない壁に阻まれていた。

 これは、近づきさえしなければ雑魚モンスターで永遠にレベル上げが可能ということなのだ。


「よし、こんなもんかな。相棒、レベルはいくつになった?」

「あんな強力な魔法を私が……」


 いまだに自分のしたことが信じられないようだ。

 レグナはそんなレティシアにやさしく声をかけてやる。


「相棒、大丈夫か?」

「あっ、大丈夫、大丈夫よレグナ。れ、レベル……位階よね? ――っ」


 確認したレティシアの顔が引きつる。

 うむ、いい反応だ。レグナは思う。


「で、いくつだ?」

「『280』……信じられない。今の王様が『200』くらいだったはず……」


 ちなみに使い魔のレベルは主であるものに依存する。

 レグナもかなりレベルが上がっており、魔力以外の能力値が凄まじい伸びを見せていた。


 ゲームではまず相手にすることがない数千という単位のレベル200越えのスケルトンを倒し続けたのだ。

 250くらいは超えるだろうとレグナは思う。

 しかし疑問がある。このダンジョンでレベル上げをすれば簡単にレベル上げができるという事実があるのに、なぜ普通の人たちはレベル上げをしないのだろう――そこまで思ってレグナは気づく。


 当たり前だが、この世界で死ぬと、死ぬだけなのだ。

 これは復活魔法がないことを意味する。

 そうなれば、あえて何のうまみもない(と思われている)ダンジョンを攻略する意味などない。


 灰色と呼ばれている初期能力値が低い才能を持つ、レティシアのような存在にはさぞかしキツイ世界なのだろう。

 だが、おそらくではあるが、この世界で初めてレティシアは『灰色』として80の壁を優に超えた。

 しかももうレベルは誰にも負けないほどに上がっている。


 その他の追随を許さぬ『灰色』の才能の実力は――適切な魔法を覚えることができれば、戦闘力だけで言えば最高峰となるだろう。

 これを機に『灰色』の地位が向上すれば、とレグナは思う。

 ゲーマーとしては有用な才能が埋もれているのを見るのは忍びないのだ。


「成果は上々だな」

「上々どころじゃないわ! これなら……」

「喜ぶのは後にしよう。次が湧く前にレアドロップだけ回収して帰ろうぜ?」

「そっ、そうね……」


 周囲の安全を確保したレグナとレティシアは周りを見渡す。そこでは次々とスケルトンたちが地面に溶けるようにして消えゆき、ドロップアイテムを残していた。


 スケルトン達の通常ドロップアイテムは何の変哲もない【骨粉】なのだが、『ロード』という名の付く上級モンスターはレアドロップで装備品を落とす。


 今回のレグナの目当てはその装備品だった。


 結果、回収できたのは『軍神の剣』と『天剣イシュタル』、『戦女神』と『軍神』の防具シリーズが一揃い。

 ゲームの時よりも出現率がかなり低くなっているようで、数千あったドロップアイテムがほとんど骨粉だったことに、少しだけレグナの顔が引きつった。


 だが、必要な強力な装備は手に入った。

 しかも軍神と戦女神シリーズがそろったのは僥倖だろう。


 覇王は男性、戦乙女は女性にしか身に着けることができないが、強力な付加魔法がかけられており、セットで装備することにより『自動完全修復』、『自動回復』、『状態異常無効』が発動するというぶっ壊れ性能だ。


 軍神の剣は攻撃力と魔法攻撃力が剣術スキルの熟練度に応じて変化する武器であり『自動完全修復』がついている。

 天剣イシュタルは『自動完全修復』はついているが、攻撃力と魔法攻撃力は熟練度依存ではなく、固定値だけ上がり、魔力の上限が凄まじく上がる。


「軍神の剣は俺が装備するとして、天剣イシュタルはレティシアが持っているといい」

「……レグナ、この剣なんだかすっごい力を感じるんだけど……大丈夫なの?」

「? そりゃ大丈夫に決まってるだろう。装備適正のレベルはとうに超えてるとはいえ、この世界でおそらく最高に近い剣だぞ?」

「いやそういうことじゃなくてね……まぁいいわ。それで、そっちの神々しい装備は何かしら?」

「これか、これは『軍神』と『戦女神』シリーズの防具でな、すっげー強い。とりあえずこれ装備しとけば並大抵の相手じゃなけりゃ殺されないと思うぞ。とりあえず持って帰るにも邪魔だし、装備して帰るぞ」

「えっ、ここで着けていくの……?」

「そりゃそうだろ……って、ああ。俺は見ないから安心してくれ。安全圏の階段で着替えようぜ」

「そうじゃないのだけれど……」


 何かが違ったのか、ぶつぶつと「女として意識されてないのかしら」とか呟くレティシア。

 レグナは思う。


(大丈夫! すっごい意識したうえで紳士的にふるまおうとしてるだけだから!)


 そんな訳の分からないことを考えていた。

 ちなみに、レティシアの装備は純白の布と金色の魔法金属が使用されている軽装のドレスアーマーで、純白に金色の紋章が入ったマントもついている。

 レグナの装備は黒と金色の重鎧ではあるものの、その装備自体の重さはとてつもないものではあるのだが、登録された装着者には羽のように軽く感じるものだ。こちらは黒に金色の紋章が入ったマントがついていた。


――――――――――


 階段に置いておいたエルダープラントやレッサープラントの魔核が入った袋を担ぎ、戦闘とドロップアイテムの舞い散る骨粉でボロボロになった元着ていた服は放置して、使い魔とその主人は帰路を行く。


 もう日が落ちてあたりはすっかり暗くなっていたが、エルダープラントを倒した旨を報告しようと冒険者ギルドまで赴く。

 一日中やっている冒険者ギルドでは多くの人が併設されている酒場で酒を飲んでおり、宴会騒ぎとなっていた。


 だが、レティシアとレグナがギルドに姿を現した途端、全員が全員その二人に視線が釘付けとなった。


 魂の位階――レベルが上がったことにより、凄まじい存在感を放つ二人。

 そして極めつけはその身にまとった装備だ。

 冒険者たちが感じたこともないような強力な力をその装備も放っており、まるでドラゴンに睨まれたかのように動けなかったのだ。

 だがそれでも注がれる視線はレティシアの方が多い。

 なぜ『灰色』が、そんな疑問よりも先にその女神をも凌ぐ美貌――きちんとした身なりに整えられたレティシアの外見は、存在感と相まって神々しさすら感じていた。


「ねぇレグナ……なんか、見られてない?」

「気にすんなよ相棒。強くなりゃこんなの当たり前だろ。……今のうちに慣れとけ」

「そうね……うん、頑張るわよ、私」


 いい加減な理論でまとめたレグナは、呆然とこちらを見つめる受付嬢の目の前のカウンターに、魔核の入った袋を置いた。


「エルダープラントとレッサープラントの魔核を持ってきた。買い取ってください。討伐依頼も出ていたようなので、そちらの処理もお願いできますか?」


 その『エルダープラント』という言葉に酒場の冒険者たちがざわつく。

 数秒してから、受付嬢はハッと我に返り、慌てて袋を受け取った。


「しょしょしょ、少々、少々お待ちいただけますでしょうか!? すぐに査定してまいります!!」


 リアル冒険者ギルドであたふたする受付嬢を見られたレグナは、うれしくてニヤつき顔が抑えられなかった。



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