第4話〜旅の始まり〜
どうも、VOSEです。
色々と時間をかけて、なんとか出せるまでいけたので出すことにしました。
特に話すことがほぼないので、本編どうぞ!
…数日後…
寛平はいまだ慣れないノーザンテースト国の朝日に目が覚めた。
「ぐあぁ…」
戦争下でいつ敵が来るかわからないような状態にずっといた寛平は、平和な朝にいつも違和感があった。
「あら、起きたの?」
フランが果物が入ったかごを持って中に入ってきた。キャミソールだけしか着ていなかったフランは、普通の男だったら目を引くような美しさとどことなく初々しい感じを漂わせていた。
ただ、寛平はそのフランの姿に何も反応せず、ベッドから起き上がった。
「なんとかな…そういえば、ここずっと果物くらいしか食ってないような気がするんだが…」
寛平は携帯口糧がなくなったので、仕方なくフランの夕食に付き合うことになったのだが、この前準備してくれた料理含め、ここまでずっと果物を使った料理しかなかったことに違和感を感じた。
もちろん、グラディウス王国による制裁の影響もあるが、異様に果物だけはある感じがしてならなかったのだ。
「果物はこの街では名産の一つよ」
「この街…てことは、ほかにも町があるわけだな?」
「一応ね…でも、他の町はグラディウス王国に占領されてて…」
寛平はその話を聞いて、この世界の勢力図がどうなっているのか、興味がわいてきた。
「そういえば、この世界のことはまだよくわかっていなかったな…ノーザンテースト国はいまどんな勢力なんだ?」
「ちょっと待ってて。今地図持ってくるから」
フランはそう言って、寛平がいる部屋に置いてある数多の本からある一冊を取り出した。
「…ええっと…今私たちがいるのはここね」
フランが差し出したのは、寛平が見たことがない世界地図で、ノーザンテースト国は見せてくれた大陸の北の方にあった。
「この大陸は意外と大きくて、ノーザンテースト国は北の方にあって…グラディウス王国は大陸のほぼ中央に位置しているわ。それで、今ノーザンテースト国とグラディウス王国の国境はこの赤線で…」
寛平はその赤線を見てみると、ノーザンテースト国を囲うように線があり、首都らしき赤点がつけられている場所のすぐそばまで赤線が迫っていた。
「この赤点は…首都だよな?これは…やばいな」
「そうよ。ノーザンテースト国はこの首都しかない状態よ」
「そうか…」
寛平はそれを、悲しい目でじっと見つめていた。
「…カンペイ?どうしたの?」
「…ん?あぁ…なんでもない…」
寛平は笑顔で返事をした直後だった。
「…フラン様、失礼します」
執事の女の人が中に入ってきた。
「どうしたの?メルン」
メルンと呼ばれたその執事は、金髪で意外と透明感のある褐色肌の女の子だった。
見た目はフランと同じほどだ。
「アレックス様がお呼びです。カンペイ様も、お呼ばれとなっておりますので、来てください」
「ん?俺もか?」
「はい」
寛平は頭をひねりながら、椅子から立ち上がった。
王室には、呼ばれたフランと寛平、寛平の隣には呼んだメルンの姿があった。
「…フランよ…」
「…はい…」
アレックスはいつもより厳かな雰囲気で、フランに話しかけた。
「…ここ最近の、『グラディウス王国』の蛮行をどう思う?」
「私は、『グラディウス王国』のやり方は間違っていると思われます」
アレックスの言葉に、フランはきっぱりと返事した。
それを聞いたアレックスは安堵したのか、ふっと息を漏らした。
「…フランには、早急に『グラディウス王国』へと向かってほしい」
「え!?」
アレックスの突然の命令に、フランは少し驚きつつも…
「…わかりました。その令、承ります」
そう言って、フランは踵を返して歩いていった。
「…それで、俺を呼んだのは?」
寛平は自分が呼ばれたことに、おおよその予想を立てながらも尋ねた。
「カンペイ殿には、そこにいるメルンとともにフランの警護を頼んでほしい。頼めるかい?」
「わかりました」
アレックスのその言葉に、寛平はすぐに返事をした。
アレックスはその言葉を聞いて頬を緩めた。
「すぐに出発できるように、支度をしてまいれ」
「はい!」
寛平はアレックスの言葉を聞いて、隣にいたメルンをちらっと見た。一つも目を合わせてくれなかった。その様子を見た寛平はふっとため息を吐きながら、再び目線をアレックスに向けたのだった…
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…寛平とメルンは支度を済ませ、移動用の馬車の前で待っていた。
「…メルンといったよな?」
寛平は隣にいるメルンに話しかけた。
「…何か?」
「…その服装は常に着ているのか?」
寛平がそう言ったのは、フランの服装がゴスロリ調の黒と白の服で、スカートの丈が膝上までという格好だったからだ。
「メイドなので」
「メイド…?」
「フラン様やアレックス様に使えている者でございます」
「なるほど…使用人ってことか」
寛平がそうやって話している間も、メルンは寛平の目を合わせようともしなかった。
寛平はそれを見て再び通用口に目を移した。
しばらくして…
「お待たせ、二人とも」
豪華なドレス…というわけではなく、この前寛平を助けた時のような、狩人スタイルの服装だった。スカートも太ももが見えるような短いものだった。
「さて、行くわよ。『グラディウス王国』へ」
フランはそう言って、用意された馬車に乗った。
「カンペイ様は馬車の後ろに乗ってくれますか?」
メルンは寛平に冷たい言葉で言った後、馬車のオープンになっているところを指さした。寛平はその言葉にふうと息を吐くと…
「わかった」
一言つぶやくように後ろに乗った。
「…その下には武器がいくつかあるので、緊急時にはそこからお願いいたします」
「了解」
と、寛平は言われたところに座った時だった。
「あれ?カンペイさん中に入らないのですか?」
フランが窓から顔を出して心配そうに話しかけてきた。
「大丈夫ですよ、お嬢様。カンペイ様が自主的に乗ってくださいましたので」
メルンはフランに、とびっきりの笑顔で返事をした。
「それならいいのだけれど…」
フランは心配そうにしながら中に入った。
寛平はそのやり取りをした後、箱の上で座りながら目をつぶった。
そしてすぐに、馬車が城を出発した。
それを、アレックスがほっとした様子でその馬車の様子を眺めていた。
「…行ったか…フランよ…」
とその時。
「…アレックス殿下。今何をしておられるのでしょうか?」
一人の男がアレックスがいる部屋に入ってきた。
黒髪に青白い顔、黒いマントを羽織っている男は、どことなく不気味な表情を見せていた。
「…ミラテスか…城下をながめていたところだ」
「そうですか…そういえば、そろそろ王の権利をお嬢さんに譲るそうじゃないですか…」
「そうだが?」
アレックスは目線を窓からミラテスという男の方を見ると、アレックスの家臣と思われる人たちがミラテスの後ろについていた。
「…君は、『グラディウス王国』の遣使でここに来ただろう?なぜ、家臣を引き連れているのだい?」
「そうですねぇ…『ノーザンテースト国』をわが『グラディウス王国』の一部にしようかと思いましてね?皆さんに説得をしたら、乗ってくれたのですよ」
そういうミラテスが説得したと思われる家臣の目のハイライトは消えていた。
「そうか…」
アレックスはそういうと、腰につけていた剣を抜いた。
「君は…この国を滅ぼそうとしていたのだな…?」
「ククク…お前に勝ち目はないんだよ」
ミラテスはそういうと、右手を挙げた。それに合わせて、後ろにいた家臣や兵士が一斉にアレックスを攻撃した。
「ふっ…」
アレックスは不敵な笑みを浮かべて、家臣に攻撃をしたのだった…
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…馬車は、まるで人眼を避けるようにこそこそと移動していた。
まるで獣道のような、かろうじて馬車で進めるような道をひたすら走っていた。
「…今、西に向かっているな…」
寛平は目を瞑り、つぶやくように小さくそう言った。
木漏れ日が心地よかったが、寛平はその状態でも緊張を解かなかった。
しばらくして、きれいな水場に出た。
そこで馬車が止まったので、寛平は目を覚まし、馬車から降りた。
「…どうした?」
「あ、カンペイさん!今日はここで泊まろうと思って!」
「なるほど…確かにここなら大丈夫そうだな…」
寛平はそういうと、馬車の近くの木に座って空を見上げた。
「…カンペイさん?」
「…どうした?」
「…なんで空を見上げているの…?」
「そうだな…きれいでいいなぁって…俺が生きていた時代とは全然違うや…」
「カンペイさん…」
寛平の悲しそうな眼を見たフランは、思わず寛平の過去を聞こうとした。
しかし…
「お嬢様、お茶の準備ができました」
メルンがフランにお茶の準備ができたと話しかけてきた。
「う、うん…」
フランは寛平の様子を見ながら、馬車の方へと戻っていった。
「…きれいな空だ…」
寛平はそう言いながら、再び瞼を落としたのだった…
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…日が落ち、辺りが暗くなったころ…
「…ふうっ…これでお腹は満たされたかしら…」
フランとメルンは焚き火をして、数少ない食料を口に入れ終わっていた。
一方の寛平は、ずっと木にもたれかかっていた。
焚き火をする際の木を切ったり運んだりするのはやっていたが、それ以外はずっともたれかかっては空を見上げていた。
「…カンペイさん、大丈夫かな…」
「あの方は大丈夫です。お嬢様、就寝のお時間です」
心配しているフランを連れ帰るかのように、メルンは淡々と話した。
「…ちょっと話してくる」
「あ、お嬢様!」
フランはすっと立ち上がり、寛平の元へ寄った。
「…カンペイさん」
「ん?何だ?」
寛平はずっと空を見上げたまま返事した。
「…何で空を見てるの?」
「さっき言ったろ…綺麗だから」
「…本当にそれだけなの?」
「それだけだ…」
生返事しかしない寛平に対して、フランはむうっと頰を膨らませた。
「…ねぇ…ちょっと、森の中に入らない?」
「何でだ?」
「いいから!ね!」
フランは唐突に寛平の腕を掴むと、そのまま寛平を引き連れて森の中に入った。
「お嬢様!?」
メルンもその後に続いて森の中に入った。
「お、おい!お前、どこまで行くんだよ!」
寛平は声を荒げるも、フランは聞く耳を持たず、森の中を走った。
しばらくして、森のとある所で、フランは足を止めた。
「はぁ…はぁ…どうしたんだ?フラン」
「ここなら…色々話せるかなって…」
「話せるって…」
「…私はね…」
フランは神妙な面持ちのまま俯いて、話をした。
「…昔小さい頃…ある『人間』に会ったことがあって…その人とはよく仲良くしてもらってたの…私が泣いていたら励ましてくれて…いじめられたら怒ってくれて…その人はもう…いなくなったけれど…その人に…カンペイさんは似ているの…」
「…俺はそんな大層な男じゃねぇよ」
「それでも…私を助けてくれた時…あの時、同じ『人間』なのに怒ってくれた…あの人と同じ目をしてたんだ…そしたら…懐かしくなって…嬉しくて…」
「…そうか…」
寛平はずっと繋いだ手を振り解いた。
「きゃぁっ!」
「ったく…昔話もそのくらいにしてくれよ…ずっと掴まれてたんだからな?」
「…ごめんなさい…」
「謝るな…昔話してくれたんだ。俺からも、空を見上げてた理由でも話そうか…」
寛平は優しく微笑むと、フランは少し驚いた表情をみせ、すぐに笑顔になった。
「…俺がいたのは…国と国が戦争し合う世界…空には飛行機が飛んでは爆弾を落とし、陸では銃や戦車で互いを殺し合い、海では船で砲撃しあう…それによって多くの人命が失われてる世界だ…」
「え…」
寛平から放たれる、自分の知らない壮絶な世界に、フランは言葉を失った。
「…俺は…家族を敵によって殺された…無差別に街に爆弾を落とされた結果、巻き込まれた…俺は戦地にいたから、その事を知ったのはしばらく後…だから、命を守る事に、なんとかしてやりたいと思ってた…ただ…人の命が失われていくことに、変わりはなかった…戦争をして、敵軍を殺して…まるで生き地獄みたいだったよ…」
「…カンペイさん…」
「…人の命がわからない奴の下で働くことに、嫌気が刺していたんだが…それに反して、俺は仲間を守る為に、敵軍と戦って多くの人命を失わせていた…償っても償いきれないほどのな…そんな戦争中なんかは…空なんて見上げたら、飛行機が飛んでいた…この世界は…何も飛んでいない、まるで平和の象徴のような世界…と思ってたんだけどな」
寛平はそう言って、フランの方を見た。
「…今の俺は、フランやメルンさんを守る為に尽力を尽くす。せっかくこの世界で初めてこうやって巡りあわせてくれたんだ。君のために、そして、メルンさんのために、まだわからんが、これから会う仲間の為に、戦わせてもらうよ」
「…カンペイさん…無理しなくていいよ?」
「無理じゃないさ…まぁ、そもそもメルンさんが俺を毛嫌いしてるだろうから、メルンさんに関してはこれからどうしようかと思ってるけど…」
寛平はそういうと、ふとある方向へと目線を向けた。
「…そこにいるんだろ?メルンさん」
寛平がそう言うと、寛平が見ている方向からメルンが現れた。
「…バレましたか…」
「メルン…!」
「お嬢様を追いかけてきたのですが…おかげでカンペイ様の事も知ることが出来ました…数々のご無礼、お詫び申し上げます」
「謝ることはない。君は多分、『人間』が嫌いなんだろ?あらゆる手を使って侵略する『人間』が…」
「…ええ、そうですよ」
メルンはまるで怒りをあらわすかのような鋭い眼光で寛平を見た。
寛平はそれを見て、何も言わず、ため息を吐いた。
「…さてと、戻るとしよう…と言いたいところだけど」
寛平はそう言うと、来た道と思われる場所の方を見た。
そこには、延々と立ち上る煙が見えていたのだ。
「あれって…私たちの馬車がある…!」
「こいつはやべぇな…」
寛平やフラン、メルン達はすぐに馬車の元へ行くと、グラディウス王国の兵が馬車を燃やし、辺りを見回していた。
「探せ!ノーザンテースト国王女を探し出せ!」
兵の隊長らしき男が大声を上げ、フランを探すように命令していた。
寛平とフラン、メルンは草陰に隠れて、その様子を目の当たりにしていた。
「くそっ…ここは危ない…」
「えぇ、ここは退散した方がよろしいかと…」
「同感だ…フランはどうだ?」
寛平はふと、フランの方を見た。
フランはカタカタと体を震わせていた。
「…フラン?」
「…あ」
寛平がフランの肩を叩くと、フランは震わせていた体を大きく震わせ、寛平を見た。
その顔は絶望と悲しみにひしがれているようだった。
「…どうした?」
「…わ、わ、わた…わたし…の…」
フランは言葉を震わせて言っているため、何を言いたいのか分からないでいたが、すぐにメルンがなにを言いたいのか察してくれた。
「…もしかして…あの弓があそこに!?」
「あの弓?」
「…お嬢様の母の形見の弓なんです。どんな時も必ず、肌身離さず持ち歩いていました…その弓が、あの馬車に…」
「それはやばいな…」
寛平は少し悩んだ後、メルンにこう言った。
「…弓は俺が取り返す。メルンとフランはここから早く逃げろ」
「え…?」
「大丈夫だ…俺がちゃんと取り返す…絶対にな」
「…か、カンペイさん…」
フランは寛平の言葉を聞いて、体の震えを少し抑えるようになった。
メルンは未だに寛平に反抗意識を持ちつつも、寛平にこう伝えた。
「…ここから北東の方に、小さな港町があります。そこは私達ノーザンテースト国が元々持っていた町で、今はグラディウス王国のものですが、警備は手薄です。その町のたった一つしかない宿屋に行きますので、カンペイ様は弓を奪還した後、その宿屋に来てください」
「わかった」
メルンは寛平の言葉を聞いた後、その場から離れた。
寛平はふと、馬車の方を見ると、あの黒の箱を漁っている兵士を見つけた。
寛平はその兵士の裏へ回った。
「…全く…なんなんだよ、これ…鉄のガラクタじゃねぇか…」
兵士は銃を手に持ちながら、その銃を後ろへと放っていた。
その銃は、寛平が前の世界で使っていた銃であった。
なぜそれがあるのかわからなかったが、寛平にとっては好都合だった。
寛平はそろりそろりと近くに落ちていた『九四式拳銃』を拾い、すぐに隠れた。
「…弾は6発…行けるな」
寛平は持った『九四式拳銃』をカシャッと音を鳴らせてリロードした。
そして、口笛で兵士を呼び、振り向かせ…
「…すまんな」
と、寛平は一言、そう言うと…
パン!
と銃を撃った。
兵士は頭を撃たれ、即死した。
「敵襲だ!」
仲間を撃たれたことに気がついたグラディウス王国兵士は、撃たれた仲間の元へ行き、互いの背中を守る陣形を取った。
それでも寛平は移動しながら銃を放った。
パン!
「うっ…」
ドサッ
「な、なんなんだ!?どこから襲ってるんだ!?」
「隊長!敵の姿が見えません!」
パン!
「うっ…」
ドサッ
「隊長!また1人…」
パン!ドサッ
「また1人やられました!」
「一体全体どうなってるんだ!」
パン!ドサッ
「っ!?あと…俺だけ…」
パン!
「っ…」
…ドサッ…
その場にいた兵、全員が倒れ、寛平が草むらから出てきた。
「…すまない…」
寛平は一言、そう言うと、燃え盛る馬車に入り、明日に立てかけてあった弓を手に取った。無事に弓を回収した寛平は、次に黒の箱にあった『一〇〇式機関短銃』と『九十九式小銃』を肩に背負ってその場から去った。
その後、応援部隊が来た頃には、燃え切った馬車と、頭から血を流している兵士の死体が転がり落ちていた…
いかがでしたでしょうか?
まだオリジナルには慣れていないので、なんとも言えませんが…もしよければ、今後も読んでいただけると有り難いです。
では、次回お会いしましょう!