第1話〜飛ばされた先で〜
どうも、VOSEです。
もう少しストック出してから出そうと思ったのですが、プロローグだけではと思い、プロローグの次の話を出すことにしました。
では、どうぞご覧ください。
「まずはここがどこなのか調べないと…」
異世界に飛ばされた寛平は、なぜか手元に置いてあった自分のバッグを持って移動しようとした。
すると、寛平は急に視線を感じた。まるでターゲットを狙いすますような視線だった。
寛平はそれを察知したためしゃがみ込み、その状態から走りこんだ。
それと同時に、一本の矢がひゅんと飛んできた。
(確実に狙ってきているな…手持ちにはナイフしかないけど…)
寛平はいろいろな考えを巡らせ、矢の手どころを探った。
(矢の飛んでくる本数から、放っているのは1人…それなら…)
寛平は矢を放っている者のほうへと、一気に詰め寄った。
矢を放っていた者は、距離が一気に詰められたことに戸惑い、構えた弓をおろしてしまった。
それを寛平は見逃さなかった。
寛平は敵を押し倒し、持っていたナイフを首元に押さえつけた。
「くっ…!」
矢を放っていたやつは押さえつけられて苦い顔をしていた。
「…お前は何者だ」
そういった寛平は、敵の姿をすぐに見たが、その姿にひどく驚いた。
「耳が…とがっているだと!?」
今までに見たことのない耳の形をしていたのだ。
さらに…
「離せ!この野蛮人!」
「お前…少女か!?」
寛平は敵が少女だと知り、ナイフをすぐに懐に戻した。
少女はナイフを戻したことに驚いたと同時に…
「お前…グラディウス王国のものじゃないのか!?」
寛平の恰好を見て叫んだ。
「グラディウス王国…?なんだそれは…」
寛平は聞きなれない言葉に戸惑うしかなかった。
「とりあえず…あなたは何者?」
「何者と言われてもなぁ…」
寛平は頭をかきながら少女の問いに答えようとしたその時だ。
急に再びしゃがみ始めた。
「っ!?お前、何をして…!」
「しっ!ちょいと静かにしろ…」
寛平は人差し指を立てて静かにするように言った。
すると…
「…ここに物音が聞こえなかったか?」
「さぁ…ウサギか何かじゃないのか?」
鎧を着た男2人がやってきた。
「そんなはずはねぇ…もしかするとエルフかもよ?」
「まじで!?」
「しかもそれが少女だったら…」
「それは最高だな!奴隷として売れば値は張れるぜ!」
「そうすりゃ人生謳歌できるもんだな!」
男2人はそう言って笑いながらその場から離れた…
「…あいつら女をなんだと思ってやがる…」
寛平は先ほどの男らに向けて、小さくつぶやいた。
その後、寛平は少女を見て大丈夫かと言おうとした時だった。
急に寛平の視界がぐにゃりと曲がり、倒れてしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
少女は寛平を介抱しようとしたとき、ある植物に血がついていることに気が付いた。
「これは…!?」
少女は急いで寛平を背中に担いでとある場所へと向かった。
(せっかく生きれたのに…やっぱ俺は…)
寛平は薄れゆく意識の中、早くも自分の人生が終わることを覚悟して、意識がなくなった…
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(…ここは…)
寛平は意識を取り戻し周りを見ると、石造りの部屋が広がっていた。ベッドの横にある机には寛平の荷物や服があった。
「…くっ…」
寛平はいまだに痛む体を起こして、部屋から抜けようとした時だ。
「あ!待って!まだ体を動かしちゃダメ!」
森の中で出会った少女が入ってきて、起きようとした寛平をもう一回寝させた。
「お前は…!」
「いいから寝てて!まだ毒が抜け切れてないから!」
少女はそう言って手に持っていたバケットの中からいろいろな果物を出した。果物はリンゴやオレンジなど、寛平が前世で見た果物が並んでいた。
少女はその果物を手に取り、太ももに備えてあったナイフを取って果物を切り始めた。
「…なんで俺はここに…」
「あんたは私を助けてくれたでしょ?」
「それだけで救おうと思ったのか?とんだお人よしだ」
「…そんなのはどうでもいいでしょ」
少女は白い頬を赤く染めながら果物を切っていった。
「…はい、これ食べて。おなかすいてるでしょ?」
少女は切り終わって皿に並べた果物を、目をそらしながら渡した。
「…この中には毒なんぞ入ってないよな?」
「そんなわけないでしょ!?どこまで疑っている気!?」
「今まで戦場にいた身だからな…捕虜にされて毒殺なんてされたらいやだしな」
「せ、戦場!?それじゃ、やっぱりあんたはグラディウス王国の!?」
「どうしてそうなった…俺はそんな国なんぞ知らん」
寛平は表情を変えずに果物を食べた。
「結局食べるのね…」
「ナイフがその1つしかないだけでわかる。そのナイフは飛び道具のナイフだしな」
寛平はそう言って黙々と果物を食べた。
「…ねぇ?あなたは何という名前なの?」
少女は寛平に向かって言った。寛平はそう言われてふと少女の顔を見た。
透き通るような水色の瞳に薄い金色の髪が、日差しに照らされて幻想的だった。
寛平は一瞬その美しくてかわいらしい少女の笑顔の魅了された後、すぐに少女の質問に答えた。
「…俺は木之本寛平。大日本帝国陸軍…って言ってもわからんだろう」
「ダイニホンテイコクリクグン…?なにそれ…聞いたことない…」
「だろうな…簡単に言うと、俺は別の世界というものから来た」
「別の世界から…?それは興味深いな」
「といっても楽しいものじゃないさ…」
寛平は食べていた果物を置いて、食べかけの果物と皿をじっと見つめた。悲しげな瞳だった。
それを見た少女はこれ以上突っ込むのは駄目であると悟った。
「…それで、君は?君の名前まだ聞いてないが…」
「そういえば…私は…」
と、少女が言いかけたその時だ。
「…お嬢様!どこにおられるのです!?」
そんなおばあさんの声が聞こえてきた。
「もう…おばあちゃんったら…心配しすぎよ…」
少女はそう言って、部屋を出て行った。
少女が部屋を出て扉を閉めたと同時に、古びたメイド服を着た老婆が歩いてきた。
「お嬢様!そこにおられたのですか!」
「おばあちゃん…どうしたの?急に」
「いえ、急に部屋からいなくなったので、また一人で森にお出かけになられたのかと…」
「ダメなの?」
「それはそうですよ!あなたはこの国を守る王家の次期女王の身なんですから!」
老婆の忠告にいやというほど聞いてきたのか、少女は頬をポリポリとかいた後、老婆にやさしく言葉を投げかけた。
「私は大丈夫よ。そんじょそこらの野蛮人にやられるほど弱くはないわ」
「でも…」
「おばあちゃん、私は大丈夫だから…ね?」
「…わかりました。それよりどうしてその部屋から?」
老婆は何も使われていないゲストルームから出てきたことに疑問を持ち、少女に思わず質問をした。
「あ、あぁ…さっき森の中歩いていたら、傷ついている人がいて…」
「もしかして、『人間』ですか!?」
老婆はまさかというような顔で少女に問い詰めた。
「だって、傷ついていたから…」
「お嬢様がお優しいのは私でもわかっています。でも、ここに『人間』がいると分かれば、あなたのお父様が…」
「傷ついていたから助けたというわ。大丈夫よ」
「ならいいのですが…」
少女はちょうど頃合いだと察して、老婆にこういった。
「私は大丈夫だから、おばあちゃんは庭に行って掃除してくれる?」
「わかりました。では、失礼いたします」
老婆はそう言って、その場から離れた。
少女はほっと安堵して、部屋に再び入った。
「…ごめんなさい。さっきの話の…」
と少女が入ると、ベッドにいたはずの寛平の姿がなかった…
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「…やっぱり、俺がいるべきところじゃなかったな…」
寛平は自分の荷物を持って、森の中を走っていた。先ほどの少女はやさしさで自分を助けてくれたが、国の事情が自分を受け付けないと察し、これ以上少女に迷惑をかけないために抜け出したのである。
「しかし、本当に別の世界に来てしまったんだな…どうにか身を潜められる場所を探さないと…」
寛平は日が落ちかけていたので、急いで自分を受け付けてくれる町を探していた。
しばらくして走っていると…
「…ん?あそこ明るいな…」
森の中で炎で明るく照らされているのが見えた。
寛平は気になってその場所へと向かった。
そこで目にしたのは…
「た、助けてくれ!おれはただの商人だ!」
一人おびえている男と、意識がなくなる前にみた男と同じ甲冑を着た人たちが、おびえている男を囲むように立っていた。男のそばには背負子と、商品と思しき荷物があった。
「お前は『エルフ』だな?」
周りにいる男たちとは明らかに違う甲冑を着た男が、商人に威圧感満載で男に問いかけた。
「だ、だから何ですか!?」
「…荷物を開けろ」
「はっ!」
周りを囲んでいる兵士の隊長らしき男は、周りにいる部下に落ちている荷物を開けるように命令した。
「や、やめろ!それはただの荷物だ!だから開けるな!」
「ただの荷物だったら開けても問題はないな?」
「くっ…!」
隊長格の男にそういわれた男は、何も言い返せずそのままうなだれた。
兵士が荷物を腰につけていた剣で開けると、中から食料がごろごろと出てきた。
「おぉ~…確かに重要な荷物だな?」
「そ、それはお前らの荷物じゃねぇ!ノーザンテースト国で待っている奴らのものだ!」
「でも、俺らもおなか減ってるんだ…いいよなぁ?」
「誰が侵略者にあげるか!」
「侵略?うれしいねぇ?そんなこと言ってくれるなんてね?」
「お前らはどうかしている!いろんな国を不当な理由で侵略しやがって!」
「不当な理由?君らがそんなこと言っているだけだろう?」
男の不気味な言葉に、商人だけでなく盗み聞きしている寛平までもがぞわっと震えた。
「さてと…最後に君に一つ聞きたいことがある…『ノーザンテースト国』の道はここだけかい?」
男はそう言って商人の顎をくいっと挙げた。
「お前らみたいな野蛮なやつに言うか!」
「そうか…やれ」
男は部下に命令をすると、持っていた剣を抜いた。
「ま、待ってくれ!うわぁぁぁぁぁ!」
聞いているだけだった寛平は断末魔を聞くしかなかった。そんな自分を恨むしかなかった寛平は、引き続き耳を立てた。
「さてと…エルフ最後の国…ノーザンテースト国攻略に向けて、我々はいったん引くぞ」
男の一声で、兵士たちは退いた。
「…っ…」
寛平は草むらから出て、頭と体が離れている商人を見た。
(…俺も…前の世界では…同じようなことをしていた…周りの奴らとは違うと思っても…結局…)
寛平は前世のことを思い出しながら、商人の体を持ち上げ、道端に穴を掘り、そこに遺体を埋めた。そして、墓石に使えそうな岩を立て、手に持っていた彫刻刀で『名モ知ラヌ男、ココニ眠ル』と彫った。その墓石の下に花を添え、合掌した寛平は、商人が殺された現場に戻った。
(なんかあいつらのものはないのか…)
寛平は先ほどの兵士のものはないかと探していると…
(…紙…?)
幾層にもなって重なって丸められている紙の束があった。その紙を広げて中を見た。
(…これは…さっきの行ってたノーザンテースト国の…?)
寛平はさっきの少女の笑顔を思い返した後、その紙を持って、来た道を引き返したのだった…
いかがでしたでしょうか?
感想等お待ちしておりますので、これからもよろしくお願いします。
では、次回お会いしましょう。