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コメディー

カウンターモスキート 【1000文字】

作者: 山目 広介

 猛暑が去り、過ごしやすくなってきた。

 だが平和になったわけではない。

 新たな敵がまた舞い戻ってきた。

 猛暑だった頃は奴らも影に身を潜ませていた。

 しかし過ごしやすくなったことでまた攻めてきたのだ。

 奴らは求めている、我らの血を。

 甲高(かんだか)い音を響かせ、狙ってくる。

 身体を浮かせるためだろうか、やや下の方が音が強い。

 捕まえようとしても、ふらりと躱す。

 やっとの思いで捕まえたら、また別の奴があの厭らしい音を耳元で鳴らしながら迫ってくる。


 音がするのは、まだ飛んでいるということでもある。

 遠ざかればいいが突如音が消えるときはどこかに停まったことを意味する。

 それが自分の体なら吸われるかも知れない。

 動くとしたらその時だ。


 それでも体に奴らが止まったとしたら我慢して吸われるというのも一つの手だ。

 人の血液は固まるからだ。そのままだとやつらが固まる。

 奴らはそれを防ぐための体液を流し込む。

 これが痒みの元だ。

 先に流し込まれる体液をその後吸うことで人体に残る分が減少し、痒みが抑えられるという。

 これは吸われずに体液だけ流し込まれた時より、と但し書きが付く。

 そして我らの血を吸った奴らは体が重くなり、今まで躱した我が手によって掌のシミと化す。

 だが痒いものは痒い。


 つまり全面戦争だ。




 まずは侵入経路の一つである玄関。

 蚊取り線香を仕掛ける。

 次に庭。

 繁殖に必要な水溜りがある。家主が猫の飲み水用に常備している。

 迷惑だ。よく分からないが有効だとされる十円玉を入れておく。

 そして窓。

 猫用として常に開けている。

 迷惑だ。蚊が寄ってこないとする商品を吊るしておく。

 ラストは部屋の中だ。

 蚊取り用のスプレーを噴霧。

 だから薬剤噴霧した直後に部屋に入ろうとするんじゃない。「なー」と言ってもダメだ。しばらくしたらだぞ。わかったな。お前らにも原因があるんだぞ。


 こうして準備が整った。




 しかし私の準備は甘かった。

 歯を磨いてる時には、洗面所で足を何か所も刺された。

 さらに神経の密集した掌紋や足紋と言った場所、犬や猫で言う所の肉球部分、あの部分だ、痒い!

 また風呂で頭を洗っていると耳障りなあの嫌な音を目が塞がっている中、私の意識に流し込まれる。

 これで腕や背中もやられた。

 手が届かない背中は孫の手を使って掻くしかない。

 薬も一人じゃ付けられない。




 部屋でもそうだ。次から次へと。


 ふと気付くと部屋の戸が開いていた。


 床には私の足にじゃれつくネコがいた。







 「敵はおぬしか!?」




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