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76話 主人公、パートナーができる

 



「タクミ!おなか空いた!」

「ダメだよ。さっきあげたばかりだよね?」

「でも、おなか空いた!」


「タクミ。ドラ子がおなか空いたって言ってるんだから、ご飯あげなよ。かわいそうじゃん!」とリオンが言う。

「そうだよ。ドラ太郎のお世話はタクミの義務だよ。」とシオンが言う。


 ドラ子とドラ太郎ってナニ?

 そんな名前を勝手に付けないでほしい。


 僕はいま、ジルのチームの開発の成果と共に暮らしている。ところが、これがとんでもなく問題児だった。



 テッショウとの素材集めから帰ってきて数日たったある日、それは完成した。


 キノカは、ある特殊な鉱石を核とすることで人工精霊を誕生させることができるという理論を構築。


 マサチカも、斬新な結界をひらめく。金色の竜岩石よりもっと高出力の物体を結界で覆い、その結界を定時で緩めることにより、ドラゴンの力を認識させるという今までに無いものだ。


 その2人の理論を元に、ジルがタクミ専用装置の開発に着手する。広域型紋章システムの改良版というよりは、もう別物だ。

 ジルはジョセフィーヌが作成したフィギュアに特殊な鉱石を定着させて、フィギュアを憑代とした人工精霊を誕生させたのだ。


 ジョセフィーヌが制作したフィギュアは、ドラゴンの幼体。丸いフォルムが可愛い。エレメンテ(いち)というだけあって、かなりリアルだ。これを想像で作りあげるジョセフィーヌ。


 ただの変な人じゃなかったんだ!


 誕生したドラゴンの幼体は、右目が青、左目が金色だ。その目が核になっている。青い核は、テッショウが回収してきた特別な鉱石。金色の核は、特殊加工した七色のリブロスを元に、僕が新しく制作したものだ。


「上手く誕生することができたな。こいつはタクミの分身だ。タクミと同じように大食いだからな。」


「えっ?そんなに食べるの?」


「こいつのご飯はドラゴンの力だよ。タクミが金色のリブロスに込めた力を食べさせてくれ。分け与えるって感じでいいぞ。それによって、こいつは常にドラゴンの力を貯めて、その力で活動している。充電だと思って、忘れるなよ。動かなくなるぞ。


 あとはこいつに名前を付けてやれ。こいつは誕生したその時から、タクミのことを記憶していく。俺のドグーのように、タクミの好みを覚えて、普通のパートナー精霊みたいになる。が、今はまだこいつも子供だ。きっちり育てることが必要だ。」


「分かったよ。ありがとう、ジル。チームのみんなも。」


「おぅ!あと数日は調整に時間がかかるからな。それまでは、まだ紋章システムは使うなよ。」


 ジルはこう言うと、チームのみんなに感謝して、エアリーのチケットを渡す。


「これで、チームは解散だ。ありがとな。一般人用の広域型紋章システムは、国外活動装置という名前で国の独占指定がついた。こちらも公開は出来ないが、独占指定がついたものを開発した記録は実績になるからな。」


「自分、独占指定は初めてッス!嬉しいッス!」

 テッショウが、とても喜んでいる。


「独占指定って何?」

 僕はシオンにコッソリ聞く。


「特殊な発明品は国の所有として、紋章システムで出せなくなるんだ。たぶん、国外活動できるってことは、国外が荒らされる可能性があるからね。それを防ぐ目的と材料が特殊過ぎるからだろうね。金色のリブロスって、タクミにしか作れないでしょ?大量生産しろって言われたら困るよね?」


「そっ、それはたしかに困る。」


「そういう開発品は、国が認めた人しか使えないようになるんだよ。普通は、偶然できた一点物とかが指定されることが多いんだけどね。」


 ジルはチームのみんなをもう一度見る。

 そして、「本当に感謝する。国外活動装置が完成したことも、俺はとても嬉しい。俺の夢は、これを使って暗黒大陸に行くことだ。必ず最古の神殿を見つけるぞ。」と宣言する。


 こうしてチームは解散した。




 みんなが帰って行って寂しく思ったが、それ以上に大変な生活が待っていた。新しく誕生した僕の分身だという、ドラゴンの幼体。まだ名前は考えてないから、リオンとシオンが勝手に名前を付けて呼んでいる。


 こいつがとんでもなく大食らいなのだ。ドラゴンの力を与えてもすぐに、「もっと!」とせがむ。


 早く名前を付けてあげたいが、名前って重要だよね。僕は子供がいないけど、生まれた子供に名前を付けてあげるってこんな感じなのかな?


「タクミ!ご飯!ご飯!」

「分かったよ。はい、ご飯。」

 そう言って、僕はドラゴンの力を与える。


「そういえば、ジルがドラ子を今晩預かりたいって言ってたよ。機能をひとつ追加したいって。」

 リオンが、ジルの言葉を伝えてくれる。


「じゃあ、ドラ太郎は僕が連れて行くよ。ジルにちょうど用事があったんだ。」と、シオンが言うので、お願いすることにした。




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