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74話 主人公、開発に協力するー3

 


「まったく。マサチカは優秀だがな、ムラがあるから心配だったんだ。マサチカなら、エアリーのチケットに絶対食いつくと思ってな。それを用意したんだ。あとは、どうやって仕事をさせるかって悩んでいたが、簡単に解決したな!」

 ジルはそう言って、シオンに感謝している。


「ゼロ!ちゃんと仕事しなよ!終わったら、お前の気がすむまで、対戦してやるから。」

「師匠!オレ、すぐ終わらすから!いま開発してるゲームで対戦だ!約束だよ!」


 マサチカが素直にシオンに従っている。

 これで、一安心ってことかな。


「じゃあ、紋章システムの認識についての、俺の開発案を説明するぞ。」と、ジルが話を戻す。


「紋章システムがその個人だと認識できれば、紋章システムを使えるようになる。で、タクミはドラゴンだ。ドラゴンはこの世界に今は1人しかいない。と、いうことは、ドラゴン特有の波動や力などをタクミが常に発生させていれば、紋章システムは認識できるんじゃないかって思ったんだな。これは、広域型紋章システム試作機に使った竜岩石とリオンに見せてもらったスマホがヒントになった。」


「あっ、そういうこと!有線じゃなくて、無線にするってことか!」

 何かに気付いたシオンが、そう言う。


「タクミなら、分かると思うけど。パソコンをネットに繋ぐとき、昔は、パソコンに直接ケーブル繋げてただろ?でも、今のパソコンはそんなことしない。接続設定するだけで、無線で繋がる。ジルは、それを紋章システムでやろうとしてるんだ。」


「その例えは面白いな。アースにはそんな技術があるのか。たしかに、この世界の紋章システムは有線だと言えるな。でもその有線でしか使えない紋章システムを、無線で使えるようにしようっていうのが、今回開発するモノだ。」


「んー。でもコレ。タクミがドラゴンだから使える裏ワザ的なヤツだね。ドラゴンだという証を常に発生させる、ねぇ。かなりの出力がいるな。ということは、力を留める用と認識用の相反する要素が必要だ。そんなことできるか?ジルはコレをオレに開発させる気だな。」


「そうだ。力を留める結界と認識させる結界。斬新な発想ができるお前なら、何か閃くだろ?」


「簡単に言ってくれるねー。仕方ない。ちょっと真面目に考えてみるかな。ジル!タクミのドラゴンのデータをちょうだい!僕もどこかで、引きこもる!」


「じゃあ、僕達のログハウスの部屋が一つ空いてるから、そこでどう?まだ何もない空間だから、好きにカスタマイズすればいいし。」と、シオンが言う。


「やったー。師匠の家!サクッと終わらせるから、対戦!対戦!っと。」


「アクネには、マサチカが考えた結界を固定する紋様を彫ってもらいたいと考えている。」


「分かった。ワタシも、斬新な発想をするマサチカに興味があった。マサチカの要望が厳しくても、それに応えてみせると約束する。」

 寡黙そうなアクネが、そう語る。


「テッショウには、必要な素材を集めてもらう。厳しい要求があるかもしれないが、お前なら絶対できる。そう思って、優秀な回収屋のお前にお願いした。頼むぞ!」


 ジルの言葉に、テッショウが喜んでいる。


「ただの回収屋の自分のことを、そんなに高く評価してくれるなんて!ジルのためなら、何でもするッス!」


「おぅ!頼むな!」


 こうして、開発会議は終了した。


 キノカとマサチカ、ジョセフィーヌは自分の理論や作品が完成するまで、部屋から出てこないだろう。


 部屋には、アクネとテッショウ、サクラとモミジ、そしてリオンと僕が残っている。シオンはマサチカに付き添って、ログハウスに戻ってしまった。


 そんな僕達に、ジルが声をかける。


「タクミ専用装置は、キノカとマサチカの成果待ちだからな。その間に、一般人用の広域紋章システムを完成させるか!」


「親方!こっちの改良は私達に任せてほしいんだ!」

「アクネとテッショウがいるなら、必ず完成できると思うから!お願い!」

 サクラとモミジが、ジルに熱心にお願いしている。


「おぅ!そのつもりだったぞ!アクネとテッショウは優秀だからな。協力して、完成させてみろ!」


「「ありがとう!親方!」」

 2人はとても嬉しそうだ。


 やっぱり、ジルってすごいな。

 弟子を信頼して、全て任せるって、なかなか出来ないよ。


「タクミに貰った金色のリブロスは、今までの竜岩石とは比べものにならないくらいの性能だよ!」

「今までのペンダント型から腕時計型に変えて、左手の紋章付近だけ、一定に保つ結界を発生させて…。」

 サクラとモミジは、空間に設計図らしいものを表示させて、みんなに説明している。


「それなら、こういうのはどうだ?」

 それを見たアクネが即座に提案している。


「この形状なら、こういう面白い素材があるッス!」

 テッショウもすぐに加わる。


 いいな。こういう感じ。

 こういう雰囲気で仕事できるってうらやましい、と素直に思う。


 そんな感じの良い雰囲気の中で、開発はどんどん進んでいった。



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