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73話 主人公、開発に協力するー2

 


「紋章システムに詳しくない者もいるからな。紋章システムについて、簡単に説明するぞ。


 紋章システムで重要なのは、紋章の刻印と使用者個人の精霊の誕生だ。個人精霊のことは、タクミに分かりやすいように、パートナー精霊と呼ぶことにしようか。


 で、まずは紋章の刻印についてだが。

 使用者の手に紋章を刻印すると、使用者と紋章システムが繋がった状態になる。紋章の刻印によって、紋章システムがその個人を認識できるようになったということだ。この繋がって個人を認識する、という手順が無いと、紋章システムが使えないんだ。


 次にパートナー精霊についてだが、このパートナー精霊が居ない紋章システムは、ひどく不便だ。事細かに指示をしないと出てこないっていう欠点があるからな。紋章システムの使用には必ず、仲介する存在が必要なんだよ。


 以上が重要な2点だが、ここまでは理解できたか?」


 ジルが集まっている全員を見回す。


「ふむ。逆に言うと、紋章システムを使えるようにするためには、紋章システムの認識とパートナー精霊さえクリアすれば良いということですね?」

 キノカが、ジルの話を的確に理解し、簡潔に説明する。


 僕はキノカの頭の回転の速さに驚いていた。

 が、それ以上に他のメンバーの態度に驚く。キノカ以外は、ジルの話をまるで聞いていないのだ。


 こんなんで大丈夫なのかな?

 僕の心配をよそに、ジルは話を続ける。


「さすがキノカだな。その通りだ。俺達が今から開発するのは、人工的に作り出したパートナー精霊と紋章システムに認識させる何か、ということになる。」


「人工精霊、つまり、パートナー精霊の機能を持った何者かが必要。姿形はジョセフィーヌが制作、そこに生命を吹き込むのが、この私の役目、ということですね?」


「そうだ。かなり昔に、ある未完成家が、人工精霊の理論を発表してた。様々な理由で完成しなかったが、あの理論は凄いものだと思う。そしてここに、タクミの協力で得たデータがある。キノカなら、完成できると思ったんだがな。どうだ?」

 ジルはそう言うと、空中に表示したタクミのデータをキノカに送るようにドグーに指示する。


「分かりました。やってみましょう。この近くに研究室を出したので、そこにしばらく籠ります。少し時間をください。」


「おぅ!じゃあ、そっちはよろしく頼むな。ジョセフィーヌも造形の方は問題ないな?」


「私の仕事は常に完璧ですわ。私もしばらく籠ります。完成を楽しみにしていなさい!」

 ジョセフィーヌはそう言うと、オーッホッホッと、高笑いする。


 やっぱり、ジョセフィーヌが一番キャラ濃い!


「じゃあ次は、紋章システムにどう認識させるか、という問題だが、これはタクミがドラゴンだということで、解決している。」


 このジルの発言に、マサチカが反応する。

「解決してるなら、オレ達は必要ないねー。帰ろうかな?はっ!エアリーのチケット!それは、絶対欲しいんだよなー。」と、独り言のような無責任な発言をしている。


 このマサチカって人は、エアリーのチケットにしか興味が無いのか?

 大丈夫なのか?この人?


 そんなマサチカに、シオンが近づいて行く。


 えっ?なに?マサチカの態度が気に食わないとか?シオンって、そんなに熱いキャラだった?

 そう思っていると、シオンがマサチカの眼鏡を取る。


 そして、「お前!ゼロだろ?」と話しかける。


 ゼロ?


 眼鏡を取られたマサチカは、動じない。

「だからナニ?あんた誰?」と、マサチカが興味無さそうに言う。


「懐かしいなぁ。大きくなったなぁ。あっ?リアルで会うのは初めてだったか?キャリオンで対戦したのが、最後だったっけ?」


「初めて会う?キャリオン?対戦?」

 マサチカは少し考え込む。

 そして。


「あっ!もしかして師匠?師匠だよね!なんで、師匠がここに?ドラゴンの保護者やってるって、どういうこと?」と、興奮気味に話し出す。


 師匠?なんでマサチカは、シオンのことを師匠って呼んでるんだ?


 それを見ていたリオンが、何かに気付いて、僕に教えてくれる。

「あのマサチカって子、有名なゲーマーだよ。ゼロって名前で活動してる。」


「ゲーマー?エレメンテにも、そんな仕事があるんだね?」


「えっ?ゲーマーは仕事じゃないよ。ただの趣味。たしかゼロは一年のほとんどをゲームに費やして、自分の仕事はほとんどしないって聞いたことがある。でも、結界研究家のマサチカもその道では、有名だよ。毎年、一回しか発表しないけど、そのどれもが優れた理論なんだ。ゼロとマサチカが同一人物だったなんて…。」


「そんな人とシオンが知り合いなの?」


「シオンは一時期、ゲーム開発者に頼まれてテスターやってたんだよ。」


「テスター?」


「開発されたゲームをテストして、あれこれ意見言う人だよ。シオンは特に対戦ゲームが得意だったからね。きっと、その時にゼロと知り合ったんだよ。」と、リオンが言う。


「師匠!またオレと対戦してよ!」と、マサチカが熱心にシオンにお願いしている。


「いいけど。お前がこの仕事を終わらせたらな。」


「えっ?ホント?じゃあ、サクッと終わらせるからさ!絶対だよ!」


 シオンのこの一言のおかげで、マサチカが素直に仕事をこなすようになったのだった。



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