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61話 主人公、古代神殿を知る

 


 サクラとモミジの失敗作、七色のリブロスは、あの映像で見た男の子と同じように、何個か繋いでブレスレットにしてもらった。


 手首に巻いた玉の飾り。

 うーん、数珠みたいだな。こういう装飾品はつけたことないから、少し恥ずかしい。

 けど、ずっと身に付けていたら、何か変化があるかもだしね。協力するって言っちゃったし。


 そんな僕の心の葛藤も無視して、

「親方!この試作機って、竜岩石の出力が上がれば使えるよね?じゃあさ。この石の力を高めるものを取り付けたらどうかな?」

「親方!結界の範囲を左手の紋章の辺りに固定したら、精霊を集める量は少なくて済むよね。この石の上限定で、自分の精霊を具現化するようにしたら?」

 と、サクラとモミジが、それぞれの意見をジルに提案している。


「おぅ!それは、面白い案だな。この試作機が使えるようになるかもな。なら、ここをこうして、こうした方が…。」


 ジルと弟子達が、話に夢中になってしまった。


 長くなりそうだな。

 そう思った僕は、リオンとシオンに話しかける。


「そういえば、さっき見た映像で、男の子が古代神殿に、ドラゴンにしか開けない仕掛けをしたって言ってたんだけど、どう思う?」


「へぇ!面白そうだね!ドラゴンのことって、謎だらけなんだよ。紋章システムが開発される前には、いたらしいんだけど。」


「そうだね。今では伝説でしか存在が確認されてないんだ。でも、様々なものから、ドラゴンがいた事は確かだ。」


「見た事ないのに、いるのは分かってるって変だよね?」

 僕の疑問に、双子がこう答える。


「「実際に見た人がいるからね!!」」


 えっ?いるの?


「「エルだよ!!」」


「詳しくは教えてくれないんだけど、ドラゴンは非常識だ!とか、ドラゴンは扱いづらい!とか。」


「ドラゴンの知り合いがいたみたいだよ。でも、ドラゴンって、寿命が長いせいか、時間の感覚がおかしいらしくって。100年とか200年は、普通にいなくなることがあるって、昔、エルが言ってたよ。」


「うん。でも今は、このエレメンテには、ドラゴンはいないって言ってたから、その知り合いのドラゴンがいなくなったってことだと思うんだ。」


 ドラゴンのことをエルが知ってるってことは、セシルさまもドラゴンと知り合いなのか?


 あの男の子は、一緒にいた誰かをセシル!って呼んでた。まさか?セシルさま本人のこと?


 僕のそんな疑問には気付かず、リオンが興味深い話をし始める。


「古代神殿って言えば、この近くにもあるんだよ。前にライルが、かなり古い神殿らしいって言ってた。」


「あっ!でもその神殿って特A級に分類されてるヤツだろ?」と、シオンが言う。


「特A級?」


「古代の遺跡には、危険度によってランクがあるんだよ。特A級は、危険度最大級!命の保証はないって言われてる。」


「エレメンテでは、何をするのも自己責任だからね。危ないって分かってる所に行って、ケガしたら、本人の責任なんだよ。ここには、パトカーも救急車もないからね。」


 警察は無いって言ってたから、パトカーがないのは分かるけど、救急車が無いってのは、大丈夫か?


「ケガしたら、どうするの?それこそ、緊急な病気とか?」


「本人の健康状態は、それぞれの精霊が管理してるからね。急な病気になることは無いよ。異常があれば、過去の莫大な事例から最適な治療法を、精霊が指示してくれる。」


「そこの古代神殿が、特A級になってるのは、変な仕掛けが多いからなんだ。例えば、入ったら出口が無くなる部屋とか、異次元空間に迷い込んだようになる回廊とかね。」


「そして、一番危険なのは、紋章システムが不安定になって使えなくなる場所があるってこと。」


「エレメンテの大人は、紋章システムに慣れ過ぎてしまって、使えない場所に行くと、どうしても思考が停止してしまうんだ。」


 やっぱり、人をダメにする道具なんだな!紋章を授かれなくて良かったかも!


「タクミの考えていることは、分かるぞ!でもタクミだって!

 車で山に遊びに行った時に、車が故障して動かなくなる。助けを呼ぼうにも、電波が圏外で連絡もできない。

 ってなったら、どうする?」


 たっ、確かにそれはすごく困る。

 日本国内に圏外のところってあるの?っていうくらいだからね。

(あっ、でも、人が住んでいない本当に山の中は圏外だって聞いたことがあるけど)


「紋章システムが使えないって、そんな感じなんだ?」


「スマホが使えないのより、1億倍くらい困るよ!」


「エレメンテでは、何かを持って歩く習慣はないからね。基本手ぶら!だって、紋章システムが出してくれるからね。」


「でも、神殿探検とか、未知のところに行く時くらいは何か持っていくでしょ?」


「未知の場所に行くのは、冒険者の仕事だよ!何かあったら、危ないじゃないか!」


「冒険者は危険を承知で、その仕事をしてるんだよ。」


 なるほどなぁ。

 じゃあ、朔夜もラシードもすごい人達なんだ。


「冒険者は、ただの命知らずだよ!紋章システムが使えなくて、連絡もできず、行方不明になるヤツだっているんだから!」


「そんなに危険な所なんだ?でも、あの映像の男の子が気になるし。一度行ってみたいんだけど。」と話していると、ジルの声が聞こえた。


「それなら、一度、古代神殿にいってみるか?」




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