55話 主人公、紋章システムの仕組みを知るー4
「大まかなか感じは理解できたか?タクミに分かるように、この紋章システムで出来ることを簡単にまとめてみるぞ。
一、本人が望んだ物を出してくれる。
ただし、本当に必要なものだけだ。食べきれないほどの食べ物とか、一人しか居ないのに巨大な住居などは、出してもらえない。精霊に必ず拒否されるぞ。
二、本人の望んだ情報を教えてくれる。
例えば、俺は古代神殿が大好きなんだが、それに関するリブロスや研究家のメモリアを、紹介してくれる。しかも、信頼できる順や興味深い順とか、ランキング形式で提供してくれるぞ。
三、困っている時に、便利な道具を提案してくれる。
例えば、さっきのホバー。移動する時に使う乗り物だが、エレメンテには、いろいろな乗り物があるんだ。その中でもこれはどうですか?と用途に合わせて、提案してくれるぞ。
四、危険な行為は、精霊に強制捕縛される。
強制捕縛の基準は国によって変わるがな。例えば、ガンガルシア王国だと、暴力行為では捕縛されない。だが、ガンガルシア王国以外では、暴力行為、人を傷付ける行為は精霊に強制捕縛される。成人していない子供に手を出す行為も、強制捕縛されるぞ。エレメンテでは、見た目じゃ年齢は分からないからな。セシリア王国の紋章がある子には、年齢を確認することが一般的だ。成人していない子供の紋章は、大人の紋章と少し形が違うからな。
五、精霊は本人にしか使えない。
精霊は、その人の分身だ。使用者の全てを記憶している。それこそ、使用者の健康管理なんかもしてくれるから、食べ過ぎで太ることも無いし、運動不足で病気になることも無い。最近、身体を動かしてないなって時は必ず、精霊が忠告してくれる。人はついつい、好きな事ばかり優先してしまうからな。精霊は、そこをカバーしてくれる存在なんだ。
基本的なものは、こんな感じだ。あとは、リオンとシオンと、生活していれば、覚えていくだろうよ。」
僕は、ものすごく感心していた。本当に便利なものだな。紋章システムを使えないって、かなり不便だ。
「あぁ、せめてスマホみたいな物が使えたらなぁ。」
僕は思わず、独り言を呟いていた。
「ん?スマホってなんだ?」
僕の独り言にジルが反応した。
「ジルは知らないか!何年もアースには、行ってないんでしょ?」とリオンが言う。
「アースでも紋章システムみたいものが開発されたんだよ。ものすっごく、簡単なことしか出来ないけどね。」とシオンが、ジルに説明する。
「ほほぅ。どういうものだ?」
ジルが食いついた。
さすが、紋章システム開発者の弟子。興味があるのかな?
「じつはさ。アースに行った時に、スマホをウサ吉に保管してもらったんだよね。ちょっと興味があったから。」
アースの物を勝手に持ってきても大丈夫なのか?
僕の心配もよそに、ジルがとても喜んでいる。
「よくやった!リオン!早く見せてくれよ。」
ちょっと待ってね、と言いながら、リオンがウサ吉に、スマホを出すようお願いしている。
リオンがジルに手渡したスマホは、2つ。
「一つは、アースで手に入れた本物。もう一つは、そのデータから、エレメンテの材料で作ったコピーだよ。」
「ほぅ。なるほどな。」
ジルが興味深そうに、触りまくっている。
「これで出来るのは、相手との音声による通話と文字による通信。あとは、ここ何年かで、情報の受信もできるようになったよ。精霊がいないからね。その機械を自分で操作するんだ。」
ジルがスマホを手に、何かをつぶやいている。
「ここで受信するのか。ふむふむ。なるほどな。でも、まてよ。これなら…。」
「「あーぁ、はじまったよ。」」
双子があきれたような声をあげる。
なに?何かあった?
僕が双子の顔を見ると、2人もこっちを見て、「しばらくジルとは話せないよ。」と言う。
「あれは、かなり集中しちゃったよ。」
「ジルの今の仕事は、空想家だからね。なんか、とんでもない新しいもの、思いついちゃったんじゃない?」
空想家?何その仕事?
「空想家ってのは、今はまだ無い技術や理論を発表する仕事なんだ。」
「仕事?それって仕事になるの?」
アースだったら、そんな仕事でお金を稼ぐことはできないと思うんだけど。
「エレメンテでは、創造的なことだったら、何でも仕事になるんだよ!」
「そうだな。ジルが正気に戻るまで、エレメンテの仕事について、教えてあげるよ。アースとは、かなり違うからね。」
ということで、今度は双子先生のお仕事講座が始まったのだった。




