番外編 リーナの一日
私の名前はリーナ。ホームノワールの教育係をしています。昨日、ホームに新しくヨーコとツキコっていう女の子達が来ました。彼女達は王宮から来たって、トールは言ったけど、エレメンテについて全然知らないようなんです。
前にライルのラートルに参加した時に、このエレメンテは異世界への扉が開きやすいと聞きました。まさか、この子達って異世界から来たのかしら?そう思って、トールとセシルに聞くと、あっさりそうだよ、と。そして、このエレメンテに移住することになるから、ファミリアについて、教えてほしいとお願いされました。
私にできるのかしら?少し不安ですが、話してみると二人ともとても話しやすくて、私は二人が大好きになりました。だから、頑張ろうと思います。
ということで、私の一日を全て記録します。この記録が、いつか役に立つかもしれないから。
朝6時 起床
朝はいつも、だいたいこの時間に起きます。教育係として、起きてきた小さい子達の世話をします。
ホームでは、だいたい5、6人が同じ部屋で寝ます。13歳以上になると、個室で寝ることもできるわよ。
今日は起きると、ヨーコとツキコとトールがもう起きて、小さい子達の世話をしてくれていました。
ツキコは慣れてないようだけど、ヨーコはとってもお世話が上手です。年齢を聞くと、ヨーコは私より年上でした。
ホームでは、子供達が起きてくる時間はみんなバラバラです。
ファミリアを作った初代セシリア王は、寝る子は育つっていうだろ!と言って、このルールを決めたそうです。
そして、今のセシリア王のセシルも、なかなか起きてきません。目は覚めてるけど、布団の中でゴロゴロする、この時間が良いのじゃーっとか言いながら、ぐうたらしてます。セシリア王になる人は、みんなそんな感じなのかしらね。
そんなことを考えていると、ヨーコから今日は何をするの?と質問されました。
なので、一般的なホームのルールを二人に教えようと思います。
各ホームには、50人くらいが一緒に生活しています。その中でも同じ年の子は、三、四人です。ノワールの場合は、私リーナとグリフ、ラーミアの3人が同じ年です。12歳になると、必ず教育係になります。
教育係は、毎日交代で子供達の世話をします。と言っても、他の子供達もちゃんと係があるので、やる事はただ見守ることだけです。
子供達には、年齢によってやらなくてはいけない事が決まっています。
0〜1歳
ゆりかごで母親達と過ごします。ホームから色々な年代の子供達がゆりかごの子供を見に来ます。生まれたばかりの子は、とっても可愛いから、いつも大人気です。
だいたい1歳頃に、相性を見て、各ホームに移動します。ホームノワールには、妖精種や精霊種の血が強い子が入ってくることが多いわ。変現する子もいるから、同じような子達が集まっていた方が安心なの。いろいろと教えることもあるしね。
1〜3歳
ホームやファミリアの中庭で思い切り遊びます。同じ年の子達と過ごすことで、色々なことを学びます。叩かれたら痛い、とか。力を入れて押したら、相手は転ぶ、とか。子供同士の叩き合いは、日常茶飯事です。こうした事から、基本的な力の入れ具合を学ぶのです。
3〜5歳
言葉を話せるようになった子に、文字や計算を教えます。そして、本が読めるようになった子はリブラに連れていきます。
そう言えば、トールは3歳で文字が読めるようになって、リブラに入り浸っていたなぁ。特にライルのラートル映像を繰り返し見てたから、ライルの口調ソックリになったわね。笑い方とか、特に似てると思うな。
5歳
食材係として、ファミリアの外に出る事ができます。外には農園があり、そこで食材のお世話と収穫をするのです。食材係が調達したもので、食事を作るから、食材係の責任は重大よ。
常に指導者がいるから、分からないことは教えてもらえます。
6〜7歳
戦闘訓練が始まります。エレメンテには、人を襲う獣が多くいるわ。ファミリアから少し離れた場所にも、たくさんの獣がいるから、もし遭遇した場合の対処の方法とか、討伐方法とかを訓練します。
8〜9歳
お金の仕組みを体験する採集体験があります。ファミリア内の同じ年の子が全員集まって、指導者同伴で、おカネを体験します。お金の仕組みって不思議よね?昔の人は、お金持ちになりたいって夢見てる人が多かったとリブロスで知ったけど、そんなにいいものなのかしら?食べられるものじゃないのにね。
10〜11歳
サバイバル体験があります。指導者同伴で、近くの森に行きます。そこで3日間、野外で生き残る体験をするの。水の確保、食材の確保、寝る場所の確保、ファミリアで学んだことを思い出して、それぞれが何とか乗り越えます。どうしてもダメな子は、指導者がファミリアに連れて帰るわ。でも、そんな子は滅多にいないけどね。
6〜12歳
食事係として、朝、昼、夜のご飯を作ります。食事係は、基本的に毎日交代だけど、特に料理が好きな子達は、毎日手伝ってくれるわ。指導者が来て、直接教えてくれる時もあるわよ。
6歳以上になると、必ず一人以上の子供の面倒を見ます。相性があるから、12歳の教育係が、どの子を見るか決めます。例えば、私はワトワト担当で、ワトワトは4歳のアカネ担当なの。ワトワトは、少し元気があり過ぎるから、私が担当しています。ワトワトの担当のアカネは、4歳だけどしっかりしてるから、逆にワトワトがアカネに怒られていることもあるわ。
担当関係にある子達は、特に仲良くなるから、下の子が上の子を呼ぶときに、兄や姉って呼び名を付けることもあるわね。ここだと、トールがセシルのことをセシルねえさまって呼んでるわ。でも、どちらかと言うと、セシルがトールのお世話になってるわよね。
衣類係として、自分の分と担当している子の衣類を製作します。服のデザインを考えることが好きな子に、いろいろデザインして貰って作ることもあるわ。指導者が教えてくれることもあるしね。
そういえば、先日来た、グランエアドの指導者のデザインは斬新だったな。私もデザインに興味があるの。まだ誰にも言ったことないけど、将来は、グランエアド王国でお店を開きたいと思っているのよ。
これ以外には、係じゃないけど、簡単な小屋の建て方なども指導者から学びます。同じ年のグリフは建築に興味があるみたい。何か巨大な物を建ててみたいって良く言ってるわ。
空いた時間を利用して、自分の学びたいことをだけを学びます。ラートルに参加したり、リブラに通ったり、一日中、絵を描いてる子もいるわよ。
同じホームの子に教えてもらうこともできるわ。そういえば、トールは人に教えることも上手いわね。前のマルクトール王のラートルも人気だったらしいの。トールは、どんな仕事をするようになるのかしら。なんでも出来るから、逆に心配だわ。なんでも出来る子って、どうしてもこれがしたいってものが、見つからないことも多いし。
13〜15歳
ホームの係が無くなり、ホームから出ていることが多くなります。将来の仕事を決めている子は、指導者が各国に連れていってくれます。
仕事が決まってない子は、ラートルに参加したり、リブラに入り浸りになります。
16歳
誕生日に成人の儀式を行います。どの国の国民になるか、または、紋章を捨てて国を出て行くか、宣言します。国を選んだ子は、紋章システムの制限が無くなり、晴れて、大人の仲間入りとなります
ファミリアで成人するまでは、こんな感じです。ヨーコとツキコも、早く慣れるといいな。
ヨーコに指導者ってどういう人のこと?と質問されたので、説明しておくわね。指導者っていうのは、いろいろなことを教えてくれる大人達のことです。指導者は、そのファミリア出身の人が多いの。成人してから経験した様々なことを教えに来てくれるのよ。それに、ファミリアは家族だからね。指導者としてだけじゃなくて、用がなくても帰って来てくれる人達も多いわ。
午前10時
だいたいの子は、この時間くらいまでには起きてきて、各自でご飯を食べます。朝は野菜たっぷり具沢山スープなどの簡単な食事が多いから、起きてきた子は自分で食べるわ。小さな子達は、上の子が食べさせるけどね。
午後0時
昼食は、食べたい子達が集まって食べます。リブラでリブロスに夢中になってる子だと、戻ってこない時もあるし、外に体験に行ってる子達も帰ってこないわ。前日までに食事がいるかどうかの連絡が必要よ。
午後3時
ホームのことは、同じ年のグリフに任せて、ヨーコとツキコにファミリアの施設を案内しました。ゆりかごやリブラなんかを案内したわ。特にヨーコは、学ぶことが好きみたいで、リブラにとても興味を持っていたわね。
午後7時
ホームの全員で食事をします。夜は全員で食べることが決まりなの。
午後10時
この時間には、全員就寝します。日中、たくさん身体を動かした子達は、ぐっすり寝てるわよ。
これが、ファミリアの一日です。
ヨーコとツキコのように、異世界から来る子の参考になればいいなと思います。
では、私も休むことにします。おやすみなさい。




