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37話 主人公、異世界の歴史を学ぶー3

 


「最後に残ったのは民主主義国家ですが。民主主義国家が世界統一できたか、それは皆さんが良く知っていますよね。」


「できなかった!だって、いまのエレメンテにはそういう国はひとつもないよ!」

 中学生くらいの男の子が答える。


「そうですね。今のエレメンテには、7つの王国がありますが、どれも民主主義国家ではありません。」


「ドゥイガーン王国が滅亡した後、民主主義国家が主導となり、話し合いで世界統一しようと目指したことがありました。が、結論から言うと、上手くいかなかった。エレメンテには、多様な種族がいます。その種族の代表者が一同に集まって、話し合いで物事を決めるということをしてみたのですが、意見がまとまらず、この試みは長く続きませんでした。話し合いで決めるのは、時間がかかりますからね。力で短期に決着をつけようとする種族も多かったのです。


 また、経済力で世界統一しようとした国もありました。経済とは、お金という仕組みがある世界で使われていた言葉です。知ってますか?」


 ライルは8歳くらいの男の子に質問する。


「少し前に、ファミリアでお金体験の訓練をしたよ。」


「あぁ、君くらいの年の子が参加する訓練だね。君より年下の子はまだ参加したことないからね。少し説明してくれるかい?」


「食物採集の対価として、お金っていうものが貰えるんだ。お金は、いろいろなものと交換できる。僕は食事当番を代わってほしいって他の子に頼んだんだ。少ないお金で代わってくれる子もいたし、たくさんのお金じゃないと代わってくれないって子もいた。それに、ある一定の時間の採集で、みんな同じお金しか貰えないんだよ。10個集めた子も、1個しか集められない子と同じお金。そんなの変だよね。」


「エレメンテには、初代王が紋章システムを開発するまで、このお金という仕組みがありました。その頃は、お金で何でも手に入れることができたのです。」


「紋章システムみたいなものなの?」

 さっきの男の子より、小さな女の子が聞く。


「似ていますが、全く別物です。紋章システムは、国民なら誰でも使えますよね。お金という仕組みは、お金がないと、何も手に入らないのです。

 このお金の仕組みには、良いところもありますが、悪いところも多くありました。さっきの話で、たくさん集めたのに、貰えるお金は同じというは、変ですよね。また、同じような仕事をしているのに、貰えるお金が少ないなんてこともありました。


 では、このお金という仕組みがある時代に最も力があったのは、誰か。それは、お金をたくさん持っている人、お金持ちと呼ばれていましたが、その人達だったのです。お金持ちは、お金で仕事をしてくれる人を募集します。お金持ちによっては、たくさんお金をくれる人や少ししかくれない人など、様々でした。


 お金というのは、一見平等そうに見えますが、実はとても不平等なものだった。お金持ちだけが、得をするような仕組みだったのです。」


 ライルはここで話を止める。そして、「ここまでの話で、お金について興味が出た人は、別の指導者のラートルに参加してくださいね。僕は歴史家なので、これ以上は分かりませんから。僕もまだまだ勉強不足です。」と言って、参加者を笑わせた。


 ライルのラートルは人気があるってシオンは言ってたけど、こういうところが人気の秘訣なんだろうな。すごく聞きやすいし、参加者を巻き込んで話を進めている。参加してて、とても楽しいし、頭に入ってくる。


 ライルは続ける。


「ということで、経済では、世界統一はできませんでした。身体が弱くて働けない人、親を亡くした子供など、お金が無くて食べる物もない、なんて人も多くいたのです。そういう人達の多くは、心が弱り、グールに取り憑かれ、怪異へと変貌しました。結局、不平等なものでは世界統一はできないのです。そのことに気付いたのが、このセシリア王国の初代王でした。」



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