34話 主人公、ラートルに参加する
「では、今日はエレメンテの歴史について話すよ。分からないことがあったら、何でも聞いてね。」
次の日、僕はライルのラートルに参加していた。ラートルとは、日本語に直訳すると講義のような言葉になるらしい。指導者が参加者に自分の研究の成果や持論を教える時間のことを言うようだ。
学校の授業みたいなものだろうか?僕はワクワクしながら、ライルが話はじめるのを待っていた。
昨夜、シオンが連れて行ってくれた施設は、ホテルのような建物だった。各階に何部屋か泊まれる場所があり、好きな所を使っていいと言われる。僕はリオンとシオンと同じ階の部屋にしてもらった。
「タクミはまだ精霊がいないから、何かと不便だね。じゃあ、僕達の部屋の近くがいいよね。」と、シオンが気を使ってくれたのだ。
「部屋は自分でカスタマイズするんだけど、タクミは精霊がいないからね。僕がやっておくよ。っと、いまウサ吉いないんだった。ちょっと待ってて。」
シオンが自分の部屋に入って、すぐ出てきた。ウサ子を片手に抱えている。
「リオンはまだ愚痴ってるよ。イリスに会うと、すぐ心が折れるんだから。トラウマって怖いね。」
「リオンは大丈夫なの?」
「いつものことだから、気にしなくていいいよ。ウサ子も出てきてくれたし。」
「シオンが呼べは、いつでもすぐ出てくるのです!」
ウサ子が嬉しそうだ。
「リオンとシオンの精霊は、どうしてそれぞれ相手の世話をするの?」
僕は気になっていた疑問を聞いてみる。
「それが僕達の望みだからだよ。精霊はその人の願いを叶えるために存在する。僕の願いは、リオンがずっと幸せでいることなんだ。そして、リオンもそう願ってくれている。だから、ウサ子が出てきてくれるんだよ。普通は、所有者の呼びかけにしか反応しないはずなんだ。僕達はちょっと特殊なんだよ。」
「そうなんだ!」
「セシルさまの王宮に変な子しか居ないのは、それも関係してるんだよ。僕達は精霊が特殊だったから、セシルさまの研究のために王宮に呼ばれたんだ。セシルさまは精霊工学の第一人者だからね。」
セシルさまは、紋章システムや精霊の具現化の術を開発したって言ってたな。転生を繰り返して、ずっと研究してたってことなのかな?
「さぁ、部屋を作ろうか?この部屋は通常はただの空間なんだよ。大人は精霊がいるからね。自分で好きなようにカスタマイズするのが普通なんだ。タクミがアースで使っていた部屋と同じような部屋にしたから。これなら使いやすいでしょ?あっ、でも家電は無いからね。ここには電化製品なんてないから。」
「それは、大丈夫です。さっきのホームでご飯は食べたし。」
「トイレと浴室と洗面所は再現したから。服も用意してあるから、タンスの中みてね。」
やっぱり紋章システムってすごいよね。どういう仕組みなんだろう?
「紋章システムが気になる?でも今は、紋章システムに詳しい指導者はここには居ないからなぁ。それより、ライルのラートルに出るといいよ。あいつ、ド変態だけど、その道では有名だから。」
「ラートル?」
「そうか!ラートルに対応する日本語は無かったな。タクミに分かりやすく言うと、大学の講義みたいなヤツだよ。各指導者は、この日この時間に自分のラートルをやりますって案内を出してる。で、学びたい人は、そこに参加するんだよ。参加者は誰でも大丈夫だ。大人も子供もいるよ。確か明日は、エレメンテの歴史基礎のラートルをやるはずだよ。」
エレメンテの歴史か。移住するためには、歴史も知っておいた方がいいよな。ということで、ライルの歴史講座に参加することにした。
ライルのラートルには、かなりの人数が参加していた。シオンが、ライルはその道では有名って言ってたけど。有名な歴史学者ってことなんだろうか?
「今日の内容は、エレメンテの歴史基礎だよ。特に500年前、紋章システムが開発されることになった経緯について、話そうと思う。」
ライルはそう言って、エレメンテの歴史を話しはじめた。




