32話 主人公、ホームを見学するー4
僕の不審そうな表情を見たセシルが説明してくれる。
「イリスはのぅ。若くみえるが、妖精種ドリアード族の血が濃いのでな。今はたしか、156歳じゃったかな。」
「やだぁ。セシルってば、女性の年齢は言っちゃダメよぉ。」
セシルに年齢をバラされて、イリスが怒っている。
見た目は20代半ばの綺麗なお姉さんだ。15番目の子供って言うから、計算があわないなと思ってたところだよ。エレメンテってホントに見た目と年齢が比例しないよな。
んっ?でも、156歳ってどこかで聞いたような…。
と、そこへ。
「セシル、トール。ちゃんとホームの仕事してる?」
「ちゃんと出来てるか、見にきたよ。」
リオンとシオンが現れる。
あっ、そうだ。この二人が156歳だって言ってた気が…。
「うわっ!なんでイリスがここに!」
「最悪…。ホントにイリスじゃん!」
双子が、共にイヤがっている。
「あらぁ、リオンとシオンじゃない。久しぶりねぇ。わたしはねぇ。また子供が産まれるから、ここに来たのよぉ。リオンは相変わらず、ペタンコ胸ね。そんなんじゃ、モテないわよぉ。シオンは相変わらず、可愛いわね。また私と遊びましょうね。」
イリスの言葉にリオンがブツブツと、ひとり言を言い始める。
「ペタンコ胸…。ペタンコ胸…。どーせ私はペタンコですよ…。でも、また産まれるって何?私はモテますっていう自慢?なにさ、自分が巨乳だからって、見せつけてくれちゃって…。もうホント、こいつには会いたくなかったのに…。」
リオンの愚痴は止まらない。
「やっヤバイ!ウサ吉!」
シオンが、自分の精霊のウサ吉を呼び出す。
「早くリオンを僕らの部屋に連れて帰って!アレが始まっちゃうよ!」
「了解したのです。さぁ、リオン。部屋に戻りましょうね。」
シオンの精霊のウサ吉が、リオンの手を引いて出て行く。
「ごめんね。僕らとイリスは幼なじみなんだよ。ホームは別だったけど、同じファミリアで育ったんだ。その頃から、仲が悪くてね。リオンが好きになった男を、イリスが片っ端から誘惑していくもんだから、リオンのトラウマになっちゃって。たぶん、愚痴がはじまるからね。後はウサ吉に任せておこう。」
そうなんだ!確かにイリス様は、とっても魅力的な女性だ。そんな女性と争っても勝ち目は無さそう。僕は少しリオンが可哀想に思えた。
「皆さんは何を言っているのですか?リオンほど、魅力的な女性はいないのに。リオンは、僕の理想そのものですよ。」と、ライルが発言する。
が、その発言にシオンが素早く反応する。
「ヤメろ!このド変態が!」
なに?なんでシオンは怒ってるんだ?リオンのこと、とっても褒めてくれてるのに。
「タクミ。お前、ライルのことをいい奴だって勘違いしてるだろ?」
「勘違い?」
「そうだよ!コイツは真性のロリコンなだけだ!しかも10歳から14歳までの子供にしか反応しないんだぞ!」
「あらぁ、すごいカミングアウトねぇ。私の魅力が伝わらないなんて、変だと思ってたのよぉ。ロリコンじゃ、仕方ないわねぇ。」
イリスがのんびりとした口調で話す。
「陽子、月子。コイツに変なことされてない?」
シオンが、陽子達に聞いている。
さっき、別れる前に気を付けろって言ってたのは、この事か!
でも、そんな人が子供しかいない場所にいるのって、色々問題になるんじゃないのか?
そんな僕の心配に答えてくれたのは、セシルだった。
「ライルは大丈夫じゃよ。そのために精霊がおる。エレメンテでは、成人前の子供に手を出すのは禁忌じゃからのぅ。もし、そういう行為をしようとした時点で精霊が強制捕縛することになっておる。」
エレメンテでは、って。日本でも18歳未満の子に手を出すのは、犯罪だよ!でも、精霊って、そんな役割もあるんだ。確かに精霊なら、いつも一緒にいるから、魔が差してって事があっても、必ず止めてくれるんだね。
「そうです。僕は長い間、自分のこの素晴らしい趣味に悩まされていました。」
ロリコンのこと、素晴らしい趣味って言ったよ、この人!ライルってダメな大人だ!そう言えば、セシルさまの王宮には変な子しかいないって、リオンとシオンが言ってたけど。元王宮勤めのライルにも当てはまるんだ!ヤバすぎる…。
「でも、そんな時にリオンに出会いました。リオンは永遠の14歳!僕の理想そのものです!リオンには、何度も交際を申し込んだのですが、断られてばかりで。」
「当たり前だよ!お前みたいな、ド変態!大切なリオンと交際させる訳ないよ!」
シオンが大激怒している。
「でも、ここで最初に会った時は、穏やかに話してたよね?」
はいはーい、了解です!っていい返事してたよ?
「コイツしつこいからさ。他の人がいる前では、そういうことするな!って約束させたんだよ。約束させる前は、ここに来るたびにウザイから、ホームに泊まったりしてたけど。それはそれで、怒られるし。」
あぁ、ホームには大人はいないって言ってたな。勝手に泊まっちゃダメだよね。
「まさかと思いますが、セシルさまの王宮を辞めたのって…。」
「えぇ。次のセシルさまが女の子だと分かり、僕は激しく苦悩しました。しかもかなりの美少女。道ならぬ恋に落ちる前に、僕は身を引いたのです。」
あー、ホントにダメな大人だ。好青年だと思ってたのに!残念すぎる!
ふとセシルを見ると、我関せずといった感じで、ライルを見ないようにしている。陽子はあまりの内容に、月子の耳を塞いでいる。
うん。月子の教育上、良くないよね。
と、そこにトールが声をかける。
「みなさん、そろそろいいですか?僕達は料理をするという仕事があるので、忙しいのです。みなさんは、そこに座ってていただけますか?しばらく大人しくしててくださいね!フフフッ。」
トールくんが静かに怒っている!かなりお怒りのようだ!
僕達はこれ以上トールに怒られる前に、素直にトールの言葉に従ったのだった。




