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31話 主人公、ホームを見学するー3

 


 ライルは、ハルのいたホームから出ると、別の建物へと歩いて行く。


「ホームはひとつの家族だからね。それぞれが、個別の空間なんだよ。次に行くのは、ホームノワール。ファミリアにあるホームには、それぞれ名前が付いているんだ。これはどこのファミリアも一緒だよ。」


「そういえば、ファミリアという施設はこのセシリア王国にどれくらいあるの?」

 僕はふと疑問に思い、聞いてみる。


「5万箇所くらいかな。その年に産まれてくる子供は、ひとつのファミリアで約20人。セシリア王国では、1年間に産まれてくる子供は約100万人だよ。ちょうど日本と同じくらいだね。エレメンテの総人口は1億人くらいなんだよ。それも日本と似てるよね。国土とかに関しては、僕より詳しい指導者がいるから、その人に聞いてね。」


 意外な共通点だな。日本は国土が狭いのに、1億人以上が住んでいる。ここエレメンテはどうなんだろう?広いの?狭いの?詳しい話を聞いてみたいな。


 ライルはひとつの建物の扉の前に立つと、「さあ、ここがホームノワールだよ。」と言い、扉を開ける。が、ホームの扉を開けた途端、何かがライルの顔面にぶつかった。


「あっ、ライル。ごめん。」

 ぶつかって来たのは、コウモリのような羽のある小さな男の子だった。スピードはそれ程ではないが、パタパタと飛んでいたところに急に扉が開き、そのままぶつかったようだ。


「ワトワト、何してるの?」

 ライルはイタタと鼻をさすりながら、男の子に聞く。


「ワトワト、悪くない。セシルねえが悪い。ワトワトは逃げただけ。」


「ワトワトは逃げてきたんだね。でも、周りをよく見て逃げるんだよ。誰かにぶつかったら、痛いだろう?」


そこへ、頭に一本の角が生えた女の子がワトワトの元に走ってくる。お尻には馬の尻尾のようなものがある。


「ライル、ごめんなさい。気をつけてたんだけど、ワトワトが飛んで逃げちゃって。」


「僕は大丈夫だよ。でもリーナ、ワトワトには飛ぶときの注意を教えた方がいいね。」


「わかったわ。グリフに相談してみる。」


「そうだね。それがいいね。グリフに空を飛ぶときの注意を教えてもらうといいよ。ワトワトはもっと飛ぶようになるからね。ワトワトも気をつけてね。」


「うん。わかった。ワトワト気をつける。」

 男の子は、素直に頷き、リーナと部屋の中央へと戻って行く。


「リーナは12歳。ワトワトの教育係なんだよ。」


ライルが僕達に教えてくれる。


「それにしても、何があったんだろう?」

 ライルの疑問の答えは、すぐに分かった。大きなテーブルの向こうにある部屋から煙が出ているのだ。


「あそこは調理室だよ。どうしたんだろう?」

 ライルとタクミ達は、急いでその部屋に入る。すると、その部屋ではセシルが割烹着を着て、料理をしている真っ最中だった。


 セシルさま!料理できたんだ!でも煙がスゴイですけど!


「セシル!火加減には気をつけてっていつも言ってるよね。危ないじゃないか!火事にでもなったら、どうするの?」


「おぉ、ライル。いいところに。(われ)には、料理は向いてないのじゃ。お前もよく知っておるだろう?」


「まぁ、確かに前のセシルさまも料理は苦手でしたけど。でも!ダメだよ、セシル。いま君は王様じゃないんだから。なんでも出来るようにならないと!」


 王様じゃない?どういうこと?


「ここホームノワールにいる間は、君はただの子供だよ。みんながしていることは、セシルもしなくちゃダメだよ。」


「わかっておるがのぅ。どうも料理だけは上手く出来ないのじゃよ。」


 とそこへ、トールが部屋に入ってくる。誰かと一緒だ。


「セシルねえさま。また火事ですか?一体いくつの鍋を台無しにしたら、気がすむのですか。」

 年下のトールに怒られて、セシルはシュンとなっている。こんなセシルは、見たことがない。


「セシル。あなた、まだ料理もできないの?困った子ねぇ。」と、セシルに声をかけたのは、すっごくセクシーな格好をした色っぽいお姉さんだった。


 あ、あ、あ、あのっ、胸の谷間とか、すっごく見えてますけど!


「にゃにゃ!イリス!お(ぬし)、ここで何をしておるのじゃ?」


「これはイリス様。お久しぶりです。」


「あらぁ、ライルったら、いつまでも他人行儀なんだからぁ。ここにいる間はイリスって呼んでよぉ。」


 イリスは、胸の辺りが大きく開いたワンピースのような服装だ。が、丈がものすごく短い。綺麗な足が見えてますけど!僕の視線に気付いたのか、お姉さんが僕に近付いてくる。


「あらぁ、もしかしてセシルのところのドラゴンちゃんかしら?はじめまして。可愛いわねぇ。」


 そう言いながら、僕をぎゅっと抱きしめる。あ、あ、あ、あ、あのっ!胸があたってます!


「顔が赤いわよぉ。さては、女性とお付き合いしたことないわねぇ。」


 見かねたセシルが間に入る。

「イリス!からかうでない!男と見ると、すぐに手を出したがるのだから。困ったものじゃのぅ。」


「あらぁ、いいじゃない。減るものでもないしぃ。」


 減ります!減ります!僕の何かが減っていく気がします!


「で、イリスは何故ここに?」

「ふふん、ファミリアに女性がいる理由は簡単でしょ?」

「まさか!お主…!」

「そうよぉ。15番目の子供ができたのよぉ。」


 はぁ、というセシルのため息が聞こえる。


 15番目って言いました?

 このエレメンテでは、出生率が下がってるってライルに聞いたばかりですけど!


「タクミ、陽子、月子。紹介がまだだったね。この方は、イリステラ王国の王、イリス様だよ。」

 トールが説明してくれる。


 なんと!王様でしたか!でも、こんなお姉さんが王様って…。セクシーでいいですけど!この国の国民の皆さんはどう思っているんだろう?僕は、顔が赤くなるのを誤魔化そうと、余計なお世話的な事を考えていたのだった。




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