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29話 主人公、ホームを見学するー1

 


「では、ファミリアのホームに行きますよ。まずは一般的なホームから体験してもらおうかな。」


 ライルの案内で、ひとつの建物に入る。建物の真ん中に、広い空間があり、それを囲うようにいくつも扉がある。この大きな部屋がリビングで、あの扉は各自の部屋への入口ってことかな?それにしても、広い部屋だなぁ。広さに感心して、周りをキョロキョロと見回してしまう。


「ここがホームの中心となる部屋です。まぁ、部屋というより空間ですね。全員が揃って食事ができる大きなテーブルと、小さい子供達が遊べる場所が確保してあります。そちらの扉は、子供達の寝室です。子供達は普段はこの広い空間で過ごしています。」


 ライルが僕達を案内してくれる。すると、子供達が集まってきた。


「ライル!お客さん?」

「こんにちは!どこから来たの?」

「ねぇねぇ、名前なんて言うの?」


 おぉ、人懐(ひとなつ)こい子達ばかりだな。


「この人達はね。王宮から来たんだよ。タクミとヨーコとツキコって言うんだ。このファミリアに、しばらく滞在するからね。仲良くしてね。」


 ライルが子供達に説明してくれる。でも集まっているのは、小学生くらいの子供達だけ。15歳までの子供達が暮らしてるって言ってたよな?


「それにしても、ここには小さい子供しか居ないのね。私と同じ年の子達はどうしてるの?」

 陽子が、僕も気になっていた疑問をライルに聞く。


「12歳より上の子達は、将来の仕事選びのために、ファミリアから外出しています。学者になりたい子供は、マルクトールに行ってますし、討伐者になりたい子供はガンガルシアに行っています。実際に体験することが重要ですからね。だから、常時ホームにいるのは、40人くらいでしょうか。ここでは、12歳の子供が責任を持って、下の子供の世話をします。」


 ライルの言葉に月子が不安そうな表情になる。

「私と同い年くらいの子が、赤ちゃんの世話をしてる。私にできるかな?私はいつもお姉ちゃんの世話になってばかりだし。」

「月子もお手伝いしてくれてるじゃない。できることは、これから増やしていけばいいのよ。」

 陽子が月子を励ます。


「そうですね。ツキコもここで暮らすことになれば、やらなくてはいけないことが山のようにありますから、少しずつ覚えていきましょう。」


「そういえば、勉強とかはどうしてるの?」


「タクミ。いい質問ですね。ここファミリアでの勉強は、アースの勉強と大きく違います。ここでは、生活することが勉強なのです。正確には、生きていく方法を学ぶことが、ここでの勉強なのです。アースでは、学問を学ぶことが勉強ですよね。」


「生きていく方法を学ぶ?」


「そうです。ここで、子供達は自給自足の生活をしています。衣類の製作、食事の用意、建物の建築方法などなど、人が生きていく上で必要な事を全て学びます。これは、1+1=2を学ぶより重要なことです。」


「子供達はそんな不便な生活をしてるの?」


「不便ではありませんよ。人が生活するためには、必ず必要なことです。いまの便利な日本に慣れた君達には、分からないかな?そういえば、今の日本には結構いっぱいいるでしょ?勉強はできるけど、お米の研ぎ方も知らないっていう子供。成人してても、知らない、やった事ないっていう人いるんじゃない?いくら便利な世界だからって、米の研ぎ方も知らないのは、どうかと思うんだけど。」


「確かに、そういう人いますね。僕は祖母が厳しい人だったので、家事は一通り出来ますよ。たぶん、自分が居なくなった後のことを考えて、教えてくれていたんだと思います。」


「タクミさんのお祖母さまは、優しい方だったのね。私達の本当のお父さんとお母さんも、なんでも出来ないとダメよって言っては、家事を教えてくれていました。」


「うん。お父さんも料理とか上手だった。お父さんの作るハンバーグが一番美味しかったよね。」


 月子が嬉しそうに話す。お父さんの話も少しずつできるようになったみたいだ。エレメンテなら、精霊がたくさんいるから、大きな声も出せるしね。このまま、月子の心の傷が癒えるといいけど。


「でも、自給自足っていうのは、さすがに厳しくないですか?」

 僕は気になっていた疑問を聞いてみる。

「完全な自給自足ではありませんよ。生活に必要な水は十分に確保されていますし、排泄のための施設は整っています。」


「排泄?」

「おトイレのことだよ。」

 月子の疑問に陽子が答えている。


「ここの建物は完全循環システムになっています。」

 言葉の意味を理解できない僕達の顔を見て、ライルが補足説明してくれる。

「例えばね。アースでは山に降った雨が山の中を通る時にろ過されて、綺麗な水となってでてくるよね。それを動物達が使って、海まで流れていく。で、水蒸気となって、また雨になる。これが水の循環だね。循環システムは、これを建物の中で行なっているんだ。」


「建物の中って!そんな装置は日本にもありませんよ。日本だと、汚水は下水処理場で綺麗な水にしますけど、広い場所と時間が必要ですよ。」


「うん。そういう意味では、日本よりエレメンテの方が進んでいるね。ちなみに開発したのは、セシルさまだよ。」


 セシルさまは、こんなものの開発まで!


「正確にはセシルさまが開発したシステムを、後世の人が改良したものを使用しています。」


 すごいなぁ。エレメンテはもしかしたら、日本より文明が進んでいるのかもしれないな。


「まあ、そういうことで、便利なものはたくさんあるんだけど、人の基本は自給自足だからね。子供達は人の基礎として、それを学ぶんだよ。エレメンテでは、これが出来ない子供は成人できないからね。」


 なるほどなぁ!

 またひとつ、エレメンテのルールを知った僕だった。




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