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27話 主人公、ファミリアの説明を聞くー1

 



 僕達はライルの後をついて、歩く。

「じゃあ、まずは建物の説明をしようか。ここファミリアと呼ばれる施設は、5つのホームという建物からできています。1つのホームには0歳から15歳までの子供達が約50人生活しています。」

 建物の中に入る前に、歩きながら説明してくれるようだ。

「この世界の成人は何歳か知ってる?」


「はい。リオンとシオンに聞きました。16歳ですよね。」


「そうです。16歳の誕生日で成人です。その日までは、このファミリアで育ちます。1つのホーム、50人は家族です。お互いに助け合って生活することを学びます。」


「ここに大人はいないのですか?」


 僕の問いに、ライルが即答してくれる。


「いますよ。でもホームの中にはいません。」


「じゃあ、誰が小さい子供達の面倒を見てるんです?」

 小さい子供、特に0歳から3歳までは世話が大変だと聞いたことがある。僕には子供も付き合った女性もいないから、よくわからないけど。


「年が上の子供達が世話をしますよ。1歳までは母親達も一緒ですしね。」


「母親達?」


「そうです。子供を授かった母親達はここ、ファミリアの別棟に滞在して、そこで子供を産みます。その後は、個人差はありますが、だいたい子供が1歳になるまで、この施設に滞在します。その間は、母親は、全ての子供達の母親になります。」


「全ての子供達?」


「アースだと、一人の母親が自分の産んだ子供の世話をするよね。ここでは、産まれた子供は、ファミリアの子供として、全員で育てるんだよ。産後、母乳の出が悪い母親の子供には、別の母親が母乳をあげます。ここでは、全員が家族なのです。」


 いまライルさん、アースって言った?


「あの、ライルさんはアースに行ったことがあるのですか?」


「ええ。僕は前のセシルさまにお仕えしていましたから。」

 

 そうなんだ!セシルは以前、前の人達は辞めたって言ってたけど。



「王宮勤めは辞めましたけど、こうしてこのファミリアで、指導者をしています。」


 さっき、エルも指導者って言葉を使ってたな。


「指導者って?」


「指導者とは、このファミリアで子供達に様々なことを教える存在です。」


 ライルの言葉に陽子が口を開く。


「先生みたいな存在ですか?」


「アース、特に日本の先生とは、少し異なります。私達は、あくまでも指導する存在。自分の専門分野を子供達に伝えているだけです。」


「専門分野?」


「はい。僕の専門分野は、このエレメンテの歴史です。僕の仕事は歴史家ですから。歴史家とは様々な文献や遺跡からこの世界の成り立ちを考察する仕事です。新しい文献や遺跡が発見される度に歴史の解釈は変わります。古い文化を学ぶことで、より良い世界を作ることができる。僕はそういう信念で、歴史家をしています。」


 ライルさんって、すごいなぁ。


「そうそう。タクミ。僕のことはライルって呼んでくださいね。日本人の君には敬称を無くして話すのは、慣れないかもしれないけど。"郷に入っては郷に従え"、だよ。」


 僕の葛藤に気付いたライルが、そう言ってくれる。日本の風習が染み付いてるから、はじめて会った人には、ついつい"さん"付けで呼んでしまう。だが、ここでは逆に失礼になるのかも。


「わかりました。ライル。そうします。」

 僕は素直にそう答えたのだった。



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