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226話 主人公、未来を話し合うー3

 


「リオン!イヤって何?この世界から呪いを無くすために、姫と王をアースに移住させろってまだ言うつもり?」


「はぁ?シオン何言ってんの?それにも反対だよ。」


 どれもイヤって言うなんて…。リオンはどういうつもりなんだろう。


 そんなリオンにライルが苦言を呈する。

「リオン。他人の意見に良いか悪いかを言うだけなら、子供にも言えますよ。どういう理由で反対なのか、反対ならどうやって解決したらいいかを言わないと。」


「分かってるよ。人の意見に文句しか言わない日本の一部の大人と一緒にしないでよね。ちゃんと理由はあるよ。グール研究所に反対の理由は、呪いの秘密を公開するのはまだ早いと思うからだよ。呪いの秘密を公開するってことは、精霊王のことを話すってことだよね。そうなったら、異世界の穴を塞いでいるこの城と姫の存在も知られることになる。全世界の人が真実を知るのは必要だと思うよ。でもそれは、別の方法が見つかってからの方が良いと思う。」


「つまり、それまではこの城と姫の存在は秘密にしたいということですか?」


「そうだよ。もし、だよ。もし、この世界を壊そうと思ってる人がいて、姫ごとこの城を破壊したらどうすんの?それこそ、この世界の終わりだよ?」


 リオンの心配にタイジュも賛成する。


「そんなことを考えていたら、パートナー精霊を通じてすぐ分かるけどな。でも、リオンの言うことにも一理ある。この世界には、数は少ないが異世界から破壊衝動しかないモノがやってくる。そいつらに人の思考を読む能力があったとしたら、真っ先にこの城を破壊するだろうな。」


「うん。つまりさ。なんにでもバックアップは必要だよねってこと。異世界の穴を塞ぐ方法と紋章システムを稼働する方法。それぞれ開発できてからだと思うんだよね。」


「あぁ、さすがは僕のリオンです!素晴らしい考察です!」


 ライルの反応に、「はいはい、ありがと」と冷たい対応をしてからリオンは続ける。


「それにさ。なんでも公開することが良いことだとは思わない。今まで通りでいいと思うよ。」


「今まで通りって?」


「そっか、タクミは分かんないよね。王宮に仕える者しか知らないことっていっぱいあるんだよ。異世界に行けるってことも、グールと怪異の詳しいことも、普通の人は知らないの。でもそれに興味がある人は、紋章システムに自分の考えを公開するようになる。各国の王宮では、そういう人を勧誘してきたんだよ。セシリア王国の王代理のローグは、城が好きすぎるから勧誘したし、ユーリは国外に勝手に行きそうになってたから王宮に誘ったの。」


「たしかに異世界に行けるなんて分かったら、困るね。行きたいと思う人全員がアースに行ったら、アースは大混乱だよ。」


「うん。だから、しばらくはこのままグール研究をするよ。ただし、今まではシオンと二人で研究してたけど、他の研究者を誘って、合同研究する。知恵は多い方が良い、でしょ?」


 リオンの意見に全員が頷く。


「呪いのことは、リオンとシオンにお任せします。専門家なのですから。では、次にアースでの対応ですが。カシム、タイジュとセシル様からの提案は理解できましたか?」


「ハイ。ワタシはアースをこの世界みたいに平和にしたいと思ってマス。だからアースで紋章システムを開発したいと願っていまシタ。でも今のアースでは、それは不可能。今のアースで出来ることをするしかありません。だから、タイジュとセシル様の提案を受け入れたいと思いマス。ただし…。」


 ただし?

 何か不満に思っていることがあるのだろうか?


「ワタシにはスマホがよく分からないのデス。」


 そうか!カシムは小さい頃にこのエレメンテに来た。まだその頃はスマホは無かったんだ!


「だから、協力者を探しまシタ。それは陽子と月子デス。二人にお願いしたら、すぐに賛成してくれまシタ。二人もアースのために何か出来ることをしたいと思っていたようデス。」


 なるほど。陽子と月子ならスマホに詳しいし、いろいろなアイディアを出してくれるだろう。

 日本でも精霊の声を聞くことができる能力で、すごいものを開発してくれるに違いない。


 良かった。本当は僕が手伝いたいけど…。

 僕にはすべきことがある。


「カシムが納得したのであれば、アースのことはそのようにしましょう。では、一番の問題である紋章システムの継続について話しましょうか。タイジュ、ジル。開発の目処はたちましたか?」


 ライルの呼び掛けに、タイジュが答える。


「紋章システムの核となるのは、エンシャントエルフやドラゴンのようなカリスマのある存在だ。ソラに提供してもらった特別な石には、2つのチカラが込められている。しかも、長い間ソラが身に付けていたことで、ドラゴンの不思議なチカラが宿っている。代わりになると思うが…。」


 タイジュが言葉に詰まる。

 どうしたのだろう?


「タイジュ、ハッキリ言うしかないよ。それは仕方のないことなんだから。」


 タイジュの後ろから、ソラが現れた。ソラを見たみんながざわつく。


「やぁ、はじめましての人が多いかな?ボクがソラだよ。」 


 ざわつく理由は、見て分かる。

 ソラは数週間会わない間に、とても綺麗になっていた。本体のソラは分身体より魅力があるなと思っていたが、それとは比較にならないくらいだ。

 一体ソラになにが?





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