225話 主人公、未来を話し合うー2
「この世界の人々が幸せなのは、紋章システムという道具があるからだ。そして、最も重要なのはパートナー精霊という存在。僕は自分がドラゴンで寿命が人より長いと知った時、恐怖を感じた。でもそんな時に、ミライというパートナーを得た。ミライは最期まで僕と一緒にいてくれる。ミライがいるから、僕はこの世界でも生きていけると思えたんだ。紋章システムが無くなったら、みんなのパートナーに会えなくなる。それはダメだと思う。だから、僕はこのまま継続することを提案するよ。」
思ったことを、一気に話す。聞いている皆も頷いてくれている。紋章システムが必要だという認識で一致しているようだ。
「はい、タクミありがとう。紋章システムについては継続する、その意見に反対の人はいますか?」
ライルの確認に、リオンが口を出す。
「紋章システムの継続には賛成だよ。反対の人はいないと思う。でもさ。このままの状況は良くないと思うんだよね。今の幸せは、この城と姫の存在で成り立っているんでしょ?異世界の穴を塞いでいるのも、紋章システムを動かしているのも、この城と姫がいるからだよね。ひとつのものに頼りきるのは怖いことだよ。それが無くなった時にとても困るから。今回みたいにさ。」
「では、リオンはどうしたいと思っているのですか?」
「新しい技術の開発を提案するよ。タイジュは500年もあったのに、これに代わるものを見つけられなかった。それは一人で考えてたからだよ。開発チームを作って研究することが必要だと思う。」
このリオンの意見にジルが賛成する。
「リオンの言うことは最もだ。タイジュは悪用されないか心配していたが、この時代にはそんなヤツは居ない。というより、パートナーがそんなことさせないだろ?あれから、俺はタイジュと新しい紋章システムの開発に挑戦してる。まだ形にはなっていないが、ミライを生み出した時みたいに、いろんなヤツラの力を集結したら、きっと出来ると思うぞ。」
タイジュは、ソラが持っていた特別な石を使った紋章システムを、ジルと開発しようとしているようだ。
「そうですね。では紋章システムの継続方法については後回しにして、呪いについての考えを聞きたいと思います。これは当事者である各国の王の意見を聞きましょう。では、トール様から。」
「ふふっ。僕からですか?そうですね。呪われていると言われても実感がありませんからね。でも先ほど、トゥーラに『世界を救うお役目ご苦労様です』と涙ながらに言われた時は、それもいいかなと思えましたよ。僕の存在で誰かが幸せになっているのなら、呪われし者も悪くないですね。」
はぁ、トールくんは相変わらずだなぁ。8歳の意見じゃないよ。
「トールは良い子ちゃんよねぇ。私はそんなに出来た人間じゃないから、そんな風には考えられないわぁ。でもね。私は今の私が好きなのよ。私は自分が《色欲》のイリスであることに誇りを持ってるわ。それにイリスだったから、ティアや城のみんなとも会えたしね。そういう意味でいうなら、呪われし者も悪くないわねぇ。」
イリスは隣に座っているティアを見ながら発言する。ティアはイリステラ王国の王宮に長く仕えている。王でなかったら、会えなかっただろう。
「イリスもたまには良いこと言うじゃん!ボクも別に困ってないし!でも、ミライみたいなパートナーは欲しいかも!パートナーがいたら、自分でライブ映像公開できるし!」
エアは、パートナーが居ないことを不便に感じているようだ。
「エア様。タクミの提案で、王専用パートナーを生み出す研究もしてる。ミライっていう例もあるからな。期待しててくれ。」
ジルの言葉に、エアが喜んでいる。
「俺も特に困ってないからな。このままでもいいぜ。この呪いはヒト種にかけられた呪いなんだろ?人が人でいる限り、無くすことはできない。俺は王だったから、王宮にいるヤツラと会えたと思ってる。これから生まれる次の王も、そんな風に良い仲間が集まると思うぜ。」
ガルシアも呪われし者であることを受け入れている。一人ならその重圧に耐えられないだろう。でも王には仲間がいる。そして、それを支える仕組みがある。
「オラも今の生活に不満は無いだよ。オラにはパートナー精霊は居ないだども、仲間がいっぱいいるだ。それだけで十分だべよ。」
タムの父親であるベアルは、ニッコリ笑ってそう話す。
ベアル様の笑顔って、なんだかこっちが嬉しくなるなぁ。女性にモテるのも分かる気がする。
次に発言しようとしてるのはセシルだが、ベアルとは対照的に表情が暗い。
「私には何かを言う資格はないわ。精霊王のことをずっと秘密にしていて、ごめんなさい。」
事情を誰にも話していないことを気にしていたようだ。
セシルの謝罪にジルが意見する。
「セシルさまが謝ることはない。呪いが発動したのは、くだらない争いが原因だ。いまこの世界には、戦争はない。この世界に生きる者達は、賢くなったと思うぞ。俺はアルド様を救えなかった。呪いさえ無ければアルド様はあんな最期を迎えることはなかった。だから、俺はこのままで良いとは思えない。呪いを無くす方法を探すことを提案するぞ。」
ジルの意見に、シオンが賛成する。
「僕とリオンはグール研究者だ。グールに取り憑かれて怪異になる人がいなくなるまで、研究は続けるよ。だから、タイジュから提案されたグール研究所を作るってことには、僕は賛成。リオンも良いよね?」
シオンの言葉にリオンは即座に返事をする。
「えっ?イヤだよ!」




