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222話 主人公、未来を知るー2

 


「人が人である限り、呪いは無くならない。それがソラの結論ね。」


「うん。そうだよ。どの異世界にも、ヒト種が存在するところにはグールがいた。」


「そのグールに取り憑かれた成れの果てが、このエレメンテにすべて現れているってこと?それって、その世界に発生するはずだった化け物をこのエレメンテで退治してるってことだよね?良いことしてるってことじゃない?」


「そういう考え方もあるか…。タクミの思考は面白いね。」


「ソラに言われたくないよ。ソラは呪いのことなんか何とも思ってないよね?」


「攻撃してくるヤツはブッ倒す!それだけだよ。呪いがどうとか考えたこともない。」


 さすが異世界最強ドラゴン。

 この世界に現れた攻撃的なモノは、ソラがすべて倒していたらしいが…。


「とにかく、父さまでも解呪することができなかった呪いよ。私達にどうにか出来るわけないわ。」


「そうだね。でも解呪の方法を探すことはできるよ。王妃の一族のことがあるから、公表できなかったんだよね?この世界は混血だらけになった。もう公表してもいいんじゃないかな?この世界は、紋章システムのおかげで、全世界の人が研究者だ。きっと呪いを解く方法が見つかるよ。知恵は多い方がいい。そうでしょ?」


 僕の提案にタイジュが同意する。


「まぁ、そうだな。あの頃とは事情が違う。いまの世界の人々は、真実を見極める目を持っている。昔みたいに、根拠のない噂話を信じるヤツはいない。そのための紋章システムとパートナー精霊だ。」


「呪いの真実を公表して、全世界の人に解呪方法を探してもらう。これなら、リオンとシオンも納得するんじゃないかな?」


「どうかしら?シオンはそれで承知するかもしれないけど、リオンは無理ね。あの子は頑固だから…。何か、もっと説得力のあるものを提案しないと…。」


 交渉できない相手と話し合う時は、相手の価値観を理解することが重要だ。相手が何を重要だと思っているかを知ることで、それにそった案を出すことが出来る。相手は自分が尊重されたと体感することで、こちらの話を聞いてくれるようになる。


 話し合いとは、人と人の関わりだ。こちらの接し方次第で、良いようにも悪いようにも進んでしまう。


「リオンは大切な人を呪いのせいで亡くしているんだよね?助けられなかったことを悔いているのかな?」


「そうね。だから、冒険者からグール研究者になったのかも。あの子は自分を責めている。もっと早くグールの気配に気付いていたら助けられたのかもしれないって。」


 無力な自分を責めている。そういうことか…。


「リオンはきっと自分が解決したいんだよ。今のエレメンテには、グール研究所みたいなところはないんだよね?」


「あぁ、そうだ。呪いの事実を公表することはできなかったからな。個人で研究してるヤツばかりだ。それに、今のエレメンテでグールに遭遇することは滅多にない。この世界に住んでるヤツラはグールに興味がないんだよ。」


「じゃ、グール専門の研究機関を作って、リオンとシオンには、そこの責任者になってもらおうよ。」


「なるほどな。事実を公表することで、様々な意見が出る。それを統括する機関は必要かもな。」


「そうね。助けられなかったあの人の代わりに他の人を助けることで、リオンの心は救われるかも。」


 僕の意見にタイジュもセシルも同意してくれる。


「じゃ、リオンとシオンにはそれを提案してみよう。あとは、紋章システムを継続させる方法だけど…。」


 僕の言葉にソラが即答する。


「だから、ボクが核になるって言ってる。タクミには任せられないよ。」


「それなんだけど…。ソラ、君の耳の飾りって、もしかして長年身に付けているものじゃない?」


 僕は分身体ではない本物のソラが現れた時に気が付いた耳の飾りのことを聞いてみる。


「あぁ、これ?アイツから貰ったんだよ。身に付けてから、何千年も経ってるけど?」

 ソラはピアスのような飾りを外して見せてくれる。


「この石から強い波動を感じるよ。ドラゴンのチカラが宿ってる。いや、他のチカラも感じるな。ねぇ、ミライ。これって、代わりになるかな?」


「あい!タクミの言いたいことは分かるよ。紋章システムの核は、エンシャントエルフやドラゴンのようなカリスマのある存在でなければならない。これだけチカラのある石なら、代用になるかも!」


「まさか?タクミはこの石を核にした紋章システムを作ろうっていうの?」


「そうだよ。このミライは、僕のチカラを込めた特別な素材から誕生したんだよ。それと同じような要領で開発できないかな?」


「ミライは人工精霊だったね。でもボクには信じられないな。そんなものを開発できる者がいたとは…。」


「誰か一人の力じゃないんだよ。この世界はね。みんなの協力で開発するんだ。知識の統合、共有化ってそういうことだよ。」


「時代は進化してるってこのことか。やはり、タクミの存在がキーになっていた…。」


 ソラの唐突な言葉に、一瞬思考がとまる。

「それって、どういうこと?」


「ボクが見た未来の中に、タクミは居なかったんだよ。ボクは可能性の高い未来から見ていった。ボクが見ていないのは、最もそうなる可能性が少ない世界。」


 なんだって?

 僕が生きてこの世界にいる可能性は、限りなく少ないはずだったってこと?




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