閑話 影の薄い人のお話
僕の名前は飯田 光男。冴えない根暗青年だ。
僕はイケメンと化した小鳥遊 久太くんと同じクラス。モテない集団と同じくらいにモテない。つまり、僕も非モテ集団に入ってもいいのだと思うけど。
如何せん僕はクラス内での影が薄い。
僕なんていない者扱いされてるし、だれも見向きしてもらえてない。
自己紹介の時には目立つようにギャグをぶち込んでみたけど、結果は滑った。クラス内では僕=つまらないという認識になり、「お前まじ飯田だわ」という流行語大賞に選ばれるようなものを残した。
まあ、その時絶望を味わったんだけど。
で、今回先生から呼び出しを受けた。
「もっと友達を作りなさい」
――今言いますか。もう終業式近いですよ。
先生からも友達を作れと言われる始末。僕は好きで一人でいるんじゃないし、僕を孤高にしているのはクラスの奴らで、どう考えたってクラスの奴らが……いや、積極的に話しかけない自分が悪いです。
はは。泣きたい。先生にまで心配されるとは。なんだろう。僕の青春、悲しすぎ?
このぐらいで泣いてちゃいけない。
めげるな。今は友達がいないだけで、高三になったらクラス替えがある。その時に友達を作ればいい。
――でも去年も同じこと思ってたような。
去年も同じならまた来年も……。
……死にたい。
なんで友達が必要なんだよ!! 友達なんて都合いい存在だろうが!(持ってないやつの妬み)
こほん。まあ、八つ当たりはいいとして、これはやばい。
何がやばいかって? そろそろ僕のお母さんが僕に友達がいないことを気づき始めてる。前まで「あんた友達と遊ばないの?」とかうざったく聞いてきたくせに、今となっては「ゴロゴロしてないで手伝いなさい」と。完全に遊ばないと考えてきてる。で、僕が友達と遊んでくると嘘を告げて出ていくと、驚いたような顔をする。
……もう、ばれてる。いないってことばれてる。
そろそろ本格的に作らないとやばい。
面接のときにあなたと友人関係とか聞かれたら困る。「友人はいませんでした」と告げると多分面接官の人は微妙な反応をすると思う。地雷踏んだとか思われそう。
「お友達ぽぴぃよぉ……」
「我に友達を捧げたまえ」
「今度は人体錬成に挑戦してみっか。賢者の石用意してと」
「母さん。ちょっと星がついた球七つ集めてくる」
「いやいや、友達とは二年後に落ちあう約束してるから」
だめだ。どんな手を尽くしてもできそうにない。絶望とはこのことか。
「――僕を助けてくれ」
その悲痛な叫びも誰の心にもこだましない。
ああ、中学の頃は、高校に入ったらきっとアニメみたいに恋愛できるんだと妄想していたけど。それはただの妄想でした。現実に起こればいいのにと思ったことはすべて小鳥遊君という人がやりました。
いいなあ。俺もイケメンになりたい!! こうなったら卍解するしかねえ。小鳥遊くんも卍解できるなら僕もできるはず!!
「なにしてんの? 光男」
と、鏡の前で黒いコートを羽織ってポーズを決めているところを母さんに見られた。
殺すならいっそ殺せ。




