細やかなお菓子パーティ
多分、今日のことだろうと思うが、俺らは四之宮家に向かった。
俺は空の家で慣れてるから豪邸は今更だけれど、隆たちははじめてなようで、門の前で家を見上げていた。俺は普通に家に入る。
「いらっしゃいませ。空様。そして友人様」
「うん。久しぶり。山田」
と、空が挨拶をすると、山田と呼ばれた人は一礼をした。
「お嬢様が待っておられるので部屋へと急ぎましょう」
「はーい」
と、急かしてくる。
何言われるのかはわからない。もしかしたら、褒められるかもしれないし、もしかしたら、叱責を受けるかもしれない。会長は何を言うのかは不安だが、俺らは案内されるがままに向かう。
そして、部屋についた。
「ここがお嬢様のお部屋になられます」
といって山田さんは去っていった。
空は躊躇いもなくノックする。
「佳子。来たよ」
『入りなさい』
会長の声が聞こえる。
俺らは中に入ると、何やら嬉しそうな顔をして待っていた。人数分座布団が敷かれており、お菓子の用意もしてある。
お菓子パーティでもするのだろうか。
そして、会長は俺らの顔を見るや否やに。
「今日は素晴らしかった。テンションが上がったよ」
と言ってきた。
俺らは空から会長の好きなものを聞いてやったのだが、本当に好きだとはな。こういうのって少年とかが見るもんだと思っていたが。
……たまに俺見てるけど。
「だからそのお礼がしたくてな。君たちを呼んだんだ。ぜひとも座りたまえ」
俺らは座布団に座る。
そして、会長の話が始まった。
「私は昔から戦隊ヒーローが大好きでな。よく空と見に行ったものだ。だが、私たちも大人になるにつれ、そういうことからは離れた。だけれど私は好きだったんだよ。今日、見させてもらってとても感動した。ありがとう」
「……別に。俺は頼まれたから協力しただけです」
「あ、あたしも頼まれたからだ」
そう。百瀬さんと竜太郎は俺が頼んだんだ。まあ、快く受けてくれたから感謝感激である。
「礼なら西園寺に行ってくださいよ。計画したのは彼女ですから」
と、ジュースを飲みながら言う竜太郎。やっぱイケメンは何をしても様になる。
「うむ。だけれど君たちも協力したのだろう。それには感謝せねばならん」
百瀬さんと竜太郎の協力なくしては出来なかっただろう。
隆たちって力はないから百瀬さんにドアを抑え込む役を頼んだんだし、答辞を行う竜太郎の協力は不可欠だったから。
どちらも大切なことだった。
「ワタシは当日何もしてマセン。準備はしましタ」
だからごめんって。
「ヴァレンタインもありがとな。空から話を聞いてるぞ。君がフランスからの転校生か」
「そうデス!!」
「おっと」
おお、ヴァレンタインのキスを躱すとは。
「小波たちもありがとう。空に協力してくれたんだろう」
「ふふ。むずがゆいでござるな」
「生徒会長に褒められるとな」
「ふふ。照れるっす」
「…………(ポリポリ)」
隆たちは照れて頭をかいているが、小寄はお菓子を黙々と食べていた。
「そして小鳥遊もありがとう。空を楽しませてくれてな」
「別に。俺はただ……」
俺は空を楽しませていないと思う。ただ単に俺が楽しんでいるだけだ。
だけれど、空が楽しくなければ俺も多分楽しくないだろうし、空の喜びが俺の喜びでもあるから。まあ、空が楽しんでいたからだろうな。
俺は空が好きだし、空の頼み事は断る気はない。たとえ死んでと頼まれても、死ぬ覚悟はある……。これって依存しているといえる?
「空も。今回はありがとう。すごく楽しかったよ。まだまだ付き合いはあるだろうけどな。節目としてお礼を言っておく」
「うん。ちょっと寂しくなるけど、うん。卒業おめでとう」
「おめでとうございます」
おめでとうのコールが続く。
会長が開いた細やかなお菓子パーティは、笑って過ごせたと思う。




