卒業式のサプライズ
卒業式当日。
三年生が、一歩一歩踏み進めていく。会長がこの学校に通うのも最後になる日だ。
そして、俺らが盛大なサプライズを計画している日でもある。これは空の頼みだから、俺も協力したし、結構スケールがでかい。
多分、この学校の歴史に残るようなことをする自信がある。
「佳子……。寂しいな……」
空が卒業生入場のところでもはや涙ぐんでいた。
だが、この後サプライズがある。もちろん卒業生の親には許諾を得たし大丈夫だろう。
……先生の許可はもらってないが。
PTAの会長さんは笑って許してくれた。費用を全部自分らで持つのなら好きにしろと。
話が分かる人でよかった。これで心置きなくサプライズができる。
「会式の辞」
といって教頭がマイクのところに立つ。ご起立願いますという指示で俺らは立ち上がった。
そして、ピアノの音に合わせて礼をする。そのあと、校歌を歌うことになった。三年生にとってはもちろん最後の校歌である。
ピアノの伴奏が終わり、席に座る。
そして、早くも卒業証書授与がやってきた。
会長は「し」だし女子だからあとのほうだろう。
サプライズは送辞の時に行われる。つまり、もうそろそろ準備をしなければならない。
打ち合わせもあるからな。
俺は隆たちに視線を送る。隆は親指を立てて合図をしてきた。
おっけー。じゃあ、いくか。
俺は、ジェスチャーで指示を出した。
(ここから第三者視点)
卒業証書授与が終わり、記念品贈呈、校長の話、PTAの話等が終わる。
次は、在校生からの送辞だった。
「在校生代表、西園寺 空。絹瀬 竜太郎」
この学校では二人が送辞を読むことになっている。
学校で美少女と名高い空とイケメンと有名な竜太郎が読むことになっていた。
二人は立ち上がる。そして、お互いにアイコンタクトを交わした。
(わかってるね?)
(おう。練習はばっちりだ)
二人は壇上に登る。
「送辞」
「冬が終わり、春が近づいてきた今、私たちは、卒業生に向けて祝いの言葉を述べます」
その時だった。
「邪魔してやるぜええええ!!」
と、全身黒で覆われた悪者集団らしき人があらわれる。
そして、竜太郎と空を捕まえた。
「こいつらがどうなってもしらねえからなあ!!」
と、ナイフ(偽物)を突きつける。
先生方が止めに入ろうにも、人質のせいで近づけずにいた。
会場が悲鳴に包まれる。卒業生も体育館奥に避難していたが、一人だけ、逃げない人物がいた。もちろんそれは会長である。
会長は、目をキラキラさせていた。
「我々、卒業式とか大嫌いなんだもん!! だから邪魔するきー!」
と、一人がしゃべる。
「ば、バカなことをするな!! 警察を呼ぶぞ!!」
「警察? 人間如きが我々ホバック星人を止められるわけないきー!!」
「ほ、ほば?」
教師たちもたじろぐ。
「ぐうう! た、助けてくれ!!」
竜太郎の迫真の演技が、会場にこだまする。
それを真に受けた卒業生、在校生が体育館のドアを開けて逃げ出そうとするも、ドアが開かない。
ドアの外では。
「なあ、あたしなんか罪悪感があるんだけど」
「すまないな」
恭一郎と百瀬がドアを塞いでいた。
そして、体育館に音楽が流れる。
「こ、この音楽は!!」
その音楽がわかったのか、会長も思わず「おお!!」とこぼした。
そして、舞台袖から五色の人間が出てきた。
「あああああ!! やっぱりいいいいい!!!」
会長のテンションはマックスである。
「その子を離すんだホバック星人!!」
「その憎たらしい声はまさか……」
「そうそのまさかだ!! 俺様が情熱の赤」
「可愛い純情、ピンク様よ」
「朗らかな安らぎの緑~」
「クールで爽快なブルー」
「明るく元気なイエロー!!」
「「「「「五人そろってクロージャー!!」」」」」
そう。これは時間戦隊クロージャーの戦隊ショーなのである。
会長は意外にも戦隊ものが大好きなのだ。仲間とともに悪と立ち向かう姿がとても心に映るらしい。
「その子を離さないと痛い目を見るぞホバック星人!」
「うるさいきー!! こっちには人質がいるんだ! 渡すもんかきー!!」
「その人質はもう、こちらにいるぞ?」
「あ、あれ!?」
ホバック星人はうろたえる。
「やってしまえー! クロージャー!!」
会長は叫んだ。必死にクロージャーを応援していた。その声援は体育館内に響く。
「わ、悪かったきー。み、みのがしてくれき?」
「一般市民に手を出すのは許されたことではないぞ! くらえ!」
といって、クロージャーが必殺技を放ち、そして、戦隊ショーは終わる。